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- 見えない英国のEU離脱の道筋-メイ政権の妥協案には強硬派も穏健派もEUも不満-
2018年07月24日
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■要旨
- 英国のEU離脱が8カ月後に迫り、協定なしの無秩序な離脱への懸念が増している。
- メイ政権が、膠着状態打開のためにまとめた白書には、財の自由貿易圏創設が盛り込まれ、これまでよりも戦略は「ソフト化」した。しかし、サービスとデジタル分野は規制の自由を重視、金融サービスでは同等性評価の強化を求め、人の自由移動も停止する。単一市場と関税同盟から離脱する方針に変わりはない。
- 経済面での要望について、EUは、EUの原則との非適合、行政手続きの煩雑化、EU企業の不利益を懸念する。秩序立った離脱の鍵となるアイルランド国境の厳格な管理回避策としても白書の内容は不十分で、独立した法的効力のあるバックストップが必要という立場だ。
- 離脱の道筋が未だ見えない理由は、EUがメイ政権の妥協案をそのまま受け入れることが難しいからというだけではない。メイ政権の存続自体も危ぶまれているし、EUとの交渉結果には強硬派、穏健派が共に不満を抱くだろう。協定なしの無秩序な離脱は、EUとの協議決裂だけでなく、協議の結果を英国議会が否決した場合にも起こりうる。メイ首相の合意か無秩序な離脱かEUの残留かの3つの選択肢による2度目の国民投票を求める意見もあるが、一段と対立を深め、問題が一層複雑になるおそれもある。
- 英国内の対立解消の切り札は見当たらない。強硬派はEUと穏健派を、穏健派は強硬派を非難し続け、このまま無秩序離脱に突き進むことになれば、最悪のシナリオだ。
(2018年07月24日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1987年 日本興業銀行入行
・ 2001年 ニッセイ基礎研究所入社
・ 2023年7月から現職
・ 2015~2024年度 早稲田大学商学学術院非常勤講師
・ 2017年度~ 日本EU学会理事
・ 2017~2024年度 日本経済団体連合会21世紀政策研究所研究委員
・ 2020~2022年度 日本国際フォーラム「米中覇権競争とインド太平洋地経学」、
「欧州政策パネル」メンバー
・ 2022~2024年度 Discuss Japan編集委員
・ 2022年5月~ ジェトロ情報媒体に対する外部評価委員会委員
・ 2023年11月~ 経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 委員
・ 2024年10月~ 雑誌『外交』編集委員
・ 2025年5月~ 経団連総合政策研究所特任研究主幹
伊藤 さゆりのレポート
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