2018年08月21日

増え行く単身世帯と消費市場への影響(2)-勤労者世帯は食や買い物先で利便性重視、外食志向が強いものの近年は中食へシフト

生活研究部 主任研究員   久我 尚子

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4単身世帯の教養娯楽生活~レジャーや旅行が多い、娯楽の多様化で選択肢増
「教養娯楽」の内訳を見ると、単身世帯でも二人以上勤労者世帯でも、「教養娯楽サービス」(宿泊料や月謝類、レジャー費など)が5~6割を占めて圧倒的に高く、次いで「教養娯楽用品」(文房具や運動用具類、玩具など)が2割前後で続く。なお、「教養娯楽サービス」の中では、いずれも「他の教養娯楽サービス」(レジャー費や放送受信料など)が最も高く、次いで単身世帯では「宿泊料」や「パック旅行費」などの旅費が、二人以上勤労者世帯(特に40代前後)では「月謝類」の占める割合が高い。二人以上勤労者世帯では子供の学習塾や習い事などの費用にあてているのだろう。「月謝類」は、単身世帯では男性は壮年で多く、女性は年齢が高いほど増える(支出割合、実額ともに)。また、同年代では男性より女性の方が多い。つまり、男性より女性の方が趣味やキャリアアップに向けた習い事に積極的なようだ。

なお、二人以上勤労者世帯と比べて単身世帯では「教養娯楽」全体の占める割合が高いが、その内訳では壮年男性や高齢男女で「書籍・他の印刷物」が、高齢女性を除く全てで「教養娯楽サービス」のうちレジャー費などの「他の教養娯楽サービス」の割合が高い傾向がある。一方、高齢男性で「教養娯楽用品」が、高齢女性で「教養娯楽サービス」が、高齢女性を除く全てで「教養娯楽サービス」のうち「月謝類」が低い傾向がある。

今後、単身世帯が増えると、レジャーや旅行ニーズが高まる期待もあるが、若い世代ほど、ネットやスマホ、ゲームの普及などにより娯楽の多様化が進み、子供時代から海外旅行経験することも多いために、旅行に対する相対的な興味関心が低下している可能性もある。レジャーや旅行市場を盛り上げるには、その土地ならではの体験、そこへ行くことによる楽しさなど、他の娯楽と比べた魅力という付加価値を訴求する必要がある。
5単身世帯の商品購入先~食品は若いほどスーパーよりコンビニ、衣料はディスカウントストア・量販店も
最後に商品購入先について述べる。特に、モノとしての支出金額の割合が比較的多い「食料」と「衣料」(「被服及び履物」)に注目する。分析に用いた統計データの違いから(ここでは総務省「全国消費実態調査」)、いずれも勤労者世帯と無職世帯を含み、男女を合わせた平均値である。

図表4より、二人以上世帯と比べて単身世帯では、「食料」については、若年や壮年で「コンビニ」の割合が高く、「スーパー」の割合が全体的に低い傾向がある。これは利便性重視志向が強いことに加え、量を必要としないことがあるのだろう。
図表4 世帯類型別および世帯主の年代別に見た商品購入先
「衣料」については、二人以上世帯でも単身世帯でも若年世帯で「一般小売店」や「ディスカウントストア・量販店」の割合が高い一方、「百貨店」は高年齢世帯で高い傾向がある。また、30代を中心に「通信販売(インターネット)」が高い。なお、「通信販売(インターネット)」の割合が高いのは、「食料」でも「衣料」でも30代前後である。これらの世帯では仕事や子育てによる忙しさから利便性重視志向が高いのだろう。

なお、小売業の売上高を見ると、全体では横ばいで推移する中、業態別には百貨店が減少傾向、コンビニやドラッグストアは増加傾向にある3。この背景には、高齢化の進行で、特に地方部では、遠くの大型スーパーより日常生活圏にある店舗を利用する消費者が増えていることがあるだろう 。また、近年、ドラッグストアはコンビニ化(食料品などの品揃えの増加、営業時間の延長など)が進み、利便性が増している上、商品の割安感もあり、消費者にとっての魅力が増している。さらに、コンビニやドラッグストアでは宅配サービスやネット注文に対応しているところも多いが、スーパーでも同様のサービスを提供しており、業態間の競争は激化している。
 
3 経済産業省「商業動態統計」や「セルフメディケーション推進に向けたドラッグストアのあり方に関する研究会」
 

4――おわりに~単身世帯の多くは高齢者という量的な感覚を押さえた上で、特徴に合う商品・サービスを

4――おわりに~単身世帯の多くは高齢者という量的な感覚を押さえた上で、特徴に合う商品・サービスを

「増え行く単身世帯と消費市場への影響」を二回に渡って見てきた。現在、全体の約3割を占める単身世帯は今後も増加していく。単身世帯が家計消費額に占める割合は2割弱だが、じわりと存在感を増している。単身世帯の消費の特徴は、食の面では全体的に外食志向が強いものの、節約意識や健康意識の高まりから、近年「中食」へ移っている様子がうかがえた。また、忙しく働く者も多い男性や壮年女性では外食や調理食品の利用が多く、利便性を重視した食生活を送っている様子も見えた。住居では、若いほど消費支出に占める住居費(家賃)の割合が高く、年齢とともに持家率が高まるが2000年以降で大きな変化はないこと、一方で30代前後の二人以上世帯では2000年以降で持家率は高まっており、税制改正等の影響がうかがえた。教養娯楽面では、二人以上世帯と比べて単身世帯では消費支出に占めるレジャーや旅行費の割合が高い傾向があった。買い物先については、食料では、単身世帯は二人以上世帯と比べてスーパーよりコンビニの利用が多く、量が必要でないために利便性を重視している様子がうかがえた。衣料では、二人以上世帯でも単身世帯でも、若年世帯で一般小売店やディスカウントストアなどが多い一方、高年齢世帯では百貨店が多い傾向があった。なお、食料でも衣料でも、二人以上世帯でも単身世帯でも、ネットの利用が多いのは30代前後であり、仕事や子育てで忙しいために利便性を重視している様子が見えた。

一昔前は、単身世帯というと若い男女の印象が強かっただろうが、未婚者の親元同居率は高まっている。少子高齢化も進むことで、現在では単身世帯の約6割が60歳以上だ。さらに、核家族化の進行で、現在は家族世帯でも、ライフステージが進むといずれ単身世帯となる者も増える。単身世帯の消費市場を考える際、まずは多くが高齢者であるという量的な感覚を押さえる必要がある。その上で、単身世帯共通の消費志向を捉え、さらに、性年代による違いに留意した商品・サービスの提供をすることで、効果的なマーケティング戦略が実行可能だ。消費者が真に欲する消費生活を送ることができれば、少子高齢化・人口減少が進む中でも活気ある社会につながるのではないだろうか。
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生活研究部   主任研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、保険・金融マーケティング

(2018年08月21日「基礎研レター」)

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