2018年08月09日

東京オフィス市場は一段と改善。Jリート市場は好調維持。-不動産クォータリー・レビュー2018年第2四半期

金融研究部 主任研究員 吉田 資

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4. J -REIT(不動産投信)・不動産投資市場

(1) J -REIT(不動産投信)
2018年6月末の東証REIT指数(配当除き)は、3月末比4.5%上昇しTOPIX(0.9%上昇)を2四半期連続でアウトパフォームした。セクター別ではオフィスが5.7%、住宅が4.5%、商業・物流等が3.0%上昇した(図表-21)。需給面では、海外投資家による買越し基調が継続しており(図表-22)、年初からの東証REIT指数の上昇率は6.1%に拡大した。6月末時点のバリュエーションは、純資産9.2兆円に保有物件の含み益2.6兆円を加えた11.8兆円に対して時価総額は12.5兆円でNAV倍率は1.06倍、分配金利回りは4.0%(対10年国債利回りスプレッド4.0%)である。
図表-21 東証REIT指数(配当除き、2017年12月末=100)
図表-22 海外投資家のJ-REIT売買動向
J-REITによる第2四半期の物件取得額(引渡しベース)は3,189億円(前年同期比+26%)、上期累計で1兆239億円(+26%)となった(図表-23)。国内の不動産売買額が昨年比で減少するなか、J-REITによる新規取得は高い水準を維持している。アセットタイプ別の取得割合は、オフィス(37%)、物流(32%)、商業(10%)、住宅(9%)、ホテル(9%)、底地など(2%)の順となっている。
図表-23 J-REITによる物件取得額(四半期毎)
(2) 不動産投資市場
CBREによると、2018年第1四半期の東京のNOI利回りは、すべての物件タイプで過去最低水準まで低下した(図表-24)。海外投資家による投資額は減少した一方で、J-REITによる新規取得は高水準を維持している。活発な投資物件取引が継続しており、NOI利回りは低水準となっている。
図表-24 物件タイプ別NOI利回り(東京)
ニッセイ基礎研究所が行った不動産投資市場に関するアンケート調査では6、「不動産投資市場への影響が懸念されるリスク」との質問に対し、「金利」との回答は、2018年調査(58.4%)、2017年調査(52.8%)ともに、回答者の過半数を占めた(図表-25)。多くの不動産投資家が金利動向を注視している。
図表-25 不動産投資市場のリスク要因
日本銀行は2018年7月末に開催された金融政策決定会合で金融政策の修正を行った。具体的には、(1)「政策金利のフォワードガイダンスの導入」(当面、現状の極めて低い長短金利の水準を維持する方針を表明)、(2)「長期金利(10年国際利回り)のある程度の変動を容認(-0.2%~0.2%のレンジ)、ETF・J-REITの買入れ柔軟化」、(4)「日銀当座預金の政策金利残高の削減」、(4)「ETF買入れ内容の変更」である。この修正により、長期金利は上昇すると予測されるものの、金利急上昇の回避策((1)「政策金利のフォワードガイダンスの導入」)も盛り込まれていることから、0.2%を超える上昇は許容しないと見込まれている7

当面、金融政策の修正が、NOI利回り動向をはじめとする不動産投資市場に及ぼす影響を注視する必要がある。
 
6 吉田資『良好な環境が続くも、地政学リスクを注視~価格のピークは東京五輪前、インフラ施設に注目』(ニッセイ基礎研究所、不動産投資レポート、2018年1月30日)
7 上野剛志『日銀政策修正の評価と影響、そして残された課題』(ニッセイ基礎研究所、Weeklyエコノミスト・レター、2018年8月3日)
 
 

(ご注意)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

(2018年08月09日「不動産投資レポート」)

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