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- 人手不足下における物流コストの現状と今後の方向性
2018年05月09日
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1―はじめに
労働需給が極めて逼迫している中で、相対的に労働環境の厳しい物流の現場では、特に人手の確保が喫緊の課題となっている。
物流の現場における深刻な人手不足は、物流業務に関わるコスト(以下、「物流コスト」という)を押し上げている。物流コストの上昇に対し、企業は有効なコスト削減策を講じなければならない。その際には、物流施設の立地や役割等を見直すことも必要となる。
本稿では、物流施設開発および投資に大きな影響を及ぼす物流コストの現状と今後の方向性について考察する。
物流の現場における深刻な人手不足は、物流業務に関わるコスト(以下、「物流コスト」という)を押し上げている。物流コストの上昇に対し、企業は有効なコスト削減策を講じなければならない。その際には、物流施設の立地や役割等を見直すことも必要となる。
本稿では、物流施設開発および投資に大きな影響を及ぼす物流コストの現状と今後の方向性について考察する。
2―物流コストの動向
1|物流コストの内訳
物流コストは、大きく「輸送費」、「荷役費」(流通加工、ピッキング、仕分などを行う費用)、「保管費」、「包装費」等で構成される。
日本ロジスティクスシステム協会「物流コスト実態調査(2016年度)」によれば、物流コストに占める割合は、「輸送費」(56.0%)が最も大きく、次いで「保管費」(17.2%)、「荷役費」(15.7%)が大きい。
物流コストは、大きく「輸送費」、「荷役費」(流通加工、ピッキング、仕分などを行う費用)、「保管費」、「包装費」等で構成される。
日本ロジスティクスシステム協会「物流コスト実態調査(2016年度)」によれば、物流コストに占める割合は、「輸送費」(56.0%)が最も大きく、次いで「保管費」(17.2%)、「荷役費」(15.7%)が大きい。
3|人手不足に対する対策
(1) トラックの運転自動化
トラックドライバー不足の解消には、実車率等の効率化で対応できる企業もあるが、その取り組みには限界があり、運転自動化が本格的に検討されている。
国土交通省および経済産業省は、「未来投資戦略2017年」に基づき、高速道路でのトラック隊列走行(運転手が乗用する先頭トラックを無人の後続トラックが自動的に追走)を早ければ2022年までに商業化することを目指している。商業化の実現に向けて、2018年1月に新東名高速道路浜松SAから遠州森町PA間でトラック隊列走行の実証実験が行われた。
(2) トラックドライバーの労働環境改善
人手不足の解消策として、トラックドライバーの労働環境改善への取組みも進んでいる。これまで物流の現場では、慣行としてドライバーが荷物の積み下ろしや積み込みを行っており、労働時間の長期化を招いていた。また、物流施設に到着し入荷する際に、待機時間が長く発生していることも問題視されていた。本来、ドライバーに支払われる運賃は、運送の対価に限定するべきところ、これまでは積み下ろしや荷待ち等の運送以外の役務の対価の範囲が不明確になっているケースが多かったと言える。
このような事態を受けて、国土交通省は、2017年11月に標準貨物自動車運送約款(国土交通省が制定するトラック事業者と荷主の契約書のひな形)の改正を行った。約款の改定により、トラック運賃が運送の対価のみであることが明確化された。今後は、積込みや荷待ち時等を行った場合は対価が発生することになり、待遇および長時間労働の改善につながると期待されている。
(3) 物流施設の自動化・機械化
人手不足の状況を受けて、物流施設の自動化・機械化も進んでいる。2017年7月に閣議決定された「物流総合施策大綱」では、ロボット機器の導入を通じて、物流施設内作業の省力化や現場作業の負担軽減を進める方針が示された。
(1) トラックの運転自動化
トラックドライバー不足の解消には、実車率等の効率化で対応できる企業もあるが、その取り組みには限界があり、運転自動化が本格的に検討されている。
国土交通省および経済産業省は、「未来投資戦略2017年」に基づき、高速道路でのトラック隊列走行(運転手が乗用する先頭トラックを無人の後続トラックが自動的に追走)を早ければ2022年までに商業化することを目指している。商業化の実現に向けて、2018年1月に新東名高速道路浜松SAから遠州森町PA間でトラック隊列走行の実証実験が行われた。
(2) トラックドライバーの労働環境改善
人手不足の解消策として、トラックドライバーの労働環境改善への取組みも進んでいる。これまで物流の現場では、慣行としてドライバーが荷物の積み下ろしや積み込みを行っており、労働時間の長期化を招いていた。また、物流施設に到着し入荷する際に、待機時間が長く発生していることも問題視されていた。本来、ドライバーに支払われる運賃は、運送の対価に限定するべきところ、これまでは積み下ろしや荷待ち等の運送以外の役務の対価の範囲が不明確になっているケースが多かったと言える。
このような事態を受けて、国土交通省は、2017年11月に標準貨物自動車運送約款(国土交通省が制定するトラック事業者と荷主の契約書のひな形)の改正を行った。約款の改定により、トラック運賃が運送の対価のみであることが明確化された。今後は、積込みや荷待ち時等を行った場合は対価が発生することになり、待遇および長時間労働の改善につながると期待されている。
(3) 物流施設の自動化・機械化
人手不足の状況を受けて、物流施設の自動化・機械化も進んでいる。2017年7月に閣議決定された「物流総合施策大綱」では、ロボット機器の導入を通じて、物流施設内作業の省力化や現場作業の負担軽減を進める方針が示された。
3―物流コストの今後の方向性

また、物流施設内で作業するパートタイマーは、(1)60代男性(主に定年退職後の男性)や、(2)40代女性(主に主婦層)が多いことが特徴である。国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」によれば、(1)60代男性および(2)40代女性の人口は10年間で10%以上減少する見通しである。今後も物流施設内で働くパート従業員不足が継続する公算は高い。
最新技術等を活用し、物流の現場における人手不足を解消する取組みが進んでいるが、技術・安全面でクリアすべき課題が多い。2017年12月に日本ロジスティクスシステム協会が実施したアンケート調査においても、最新技術の導入により2020年までにドライバー不足および倉庫内作業員不足が解消できるとする回答はまだ少数である[図表6]。
運転自動化や、物流施設の自動化・機械化への取組みの効果は現れるまでには相応の時間を要すること、労働環境改善の取組み(標準貨物自動車運送約款の改正等)も物流コストの押し上げ要因となることから短期的には、物流コストが下がりにくい状況が続くと見込まれる。
(2018年05月09日「基礎研マンスリー」)
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経歴
- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
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