2018年08月09日

東京オフィス市場は一段と改善。Jリート市場は好調維持。-不動産クォータリー・レビュー2018年第2四半期

金融研究部 主任研究員 吉田 資

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1.経済動向・住宅市場

2018年1-3月期の実質GDP成長率は、前期比年率▲0.6%と9四半期ぶりのマイナス成長となった(図表-1)。ただし、4-6期の経済指標は、景気が再び回復軌道に戻ってくることを示すものが多い。
図表-1 実質GDP成長率の推移(四半期)
4-6月期の鉱工業生産指数は、前期比1.2%と2四半期ぶりに上昇した(1-3月期は同▲1.3%)(図表-2)。大雪による工場の操業停止の影響を受けて、1-3月期に前期比▲2.9%と落ち込んだ「輸送機械」が前期比3.4%の高い伸びとなったほか、在庫の積み上がりが続く「電子部品・デバイス」が前期比0.4%と8四半期連続の増産となった1
図表-2  鉱工業生産指数
また、2018年6月の日銀短観では、大企業・製造業の業況判断DIは+21(前期比▲3)となり、2期連続で悪化したが、依然高水準を維持している(図表-3)。大企業・不動産業のDIも+37(前期比±0)と好調が続いている。

4-6月期の実質GDP成長率は、好調な企業収益を背景とする民間設備投資の増加や、雇用所得環境の改善に伴う民間消費の持ち直しが寄与し、プラス成長に転じる見通しである。
図表-3 日銀短観の動向
新規着工戸数(月次)は、2017年下期以降、前年を下回る月が多く、2018年6月も前年同月比▲7.1%の81,275戸となった。このうち、全体の4割超を占める貸家は、個人による貸家業向けの新規貸出の抑制等を受けて13ケ月連続で前年同月比マイナスとなっている(図表-4)。
図表-4 新設住宅着工戸数(全国)
2018年第2四半期(4~6月)のマンション新規発売戸数は、前年度とほぼ同水準で推移しており、長期的(2007年以降)にみると低い水準に留まっている(図表-5)。2018年6月の首都圏の分譲マンション価格は、戸あたり6,244万円、㎡単価92.8万円となり、2ヶ月連続で上昇した。価格の上昇等を受けて、6月の初月契約率は66.0%となり、好不調の分かれ目の70%を下回った。
図表-5 首都圏のマンション新規発売戸数
東日本不動産流通機構(レインズ)によると、首都圏中古マンションの成約件数(2018年上期)は、19,223件(前年同期比▲1.5%)となった(図表-6)。高水準の成約件数を維持しているものの、頭打ち感が見られる。また、日本不動産研究所「住宅価格指数(首都圏の中古マンション)」は、2013年下期以降、上昇傾向で推移しているが、2018年4月は前年同月比0.1%となり、上昇スピードがやや減速している(図表-7)。

今後の住宅市場については、2019年10月の消費税率引き上げを前にした駆け込み需要などが注目される。
図表-6 首都圏の中古マンション成約件数(後方12ヶ月合計値)
図表-7 不動研住宅価格指数(首都圏の中古マンション)
 
1 斎藤太郎『鉱工業生産18年6月-4-6月期は2四半期ぶりの増産も、IT関連の在庫積み上がりが続く』(ニッセイ基礎研究所、経済・金融フラッシュ、2018年7月31日)
 

2.地価動向

2.地価動向

国土交通省の「地価LOOKレポート(2018年第1四半期)」によると、全国100地区のうち上昇が「91」、横ばいが「9」、下落が「0」となった(図表-8)。下落する地区がない状況が、2014年第3四半期以降継続している。主要政令市の中心部における大規模開発事業の進捗や、金融緩和による国内外の投資マネーの流入等から、不動産需要は高水準であり、地価の上昇が続いている。
図表-8 全国の地価上昇・下落地区の推移
一方、野村不動産アーバンネットによると、首都圏住宅地価格の変動率(2018年7月1日時点)は前期比0.1%増加となった(図表-9)。「値上がり」を示した地点の割合は8.3%(前回6.3%)、「横ばい」は88.7%(前回91.1%)、「値下がり」は3.0%(前回2.5%)であった。首都圏の住宅地価格は、横ばいの傾向が継続している。
図表-9 首都圏の住宅地価(変動率、前期比)
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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

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