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- 豪ドルとNZドル、2つのオセアニア通貨に違いはあるのか?~それぞれの強みと弱み
2018年08月01日
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1―豪ドルとNZドルの関係性
1 シドニー(豪州)とオークランド(NZ)間の飛行時間
2 NZの面積は日本の約7割、人口は約4%で、ほぼ福岡県の人口に相当。
2|両国通貨の連動性の背景
1)経済の連動性
それでは、なぜ両国通貨には高い連動性があるのだろうか。結論から言えば、経済の連動性が高いためだ。
NZ経済は豪州経済との繋がりが強い。同国の財・サービス輸出に占める豪州の割合は全体の2割弱を占め、国別では第2位の輸出先となっている(一方、豪州の対NZ輸出割合は全体の4%弱に過ぎない)。また、豪州、NZともに中国が最大の輸出先である点も共通しており、両国ともに輸出を通じて中国経済の影響を受けやすい構造になっている(図表4)。つまり、「中国経済→豪州経済・NZ経済」、「豪州経済→NZ経済」という2つの太い貿易ルートによる影響が豪州とNZ経済の連動性を高めている。
さらに、経済の基礎であり、潜在成長率にも関わる人口動態が似ていることも両国経済の強い連動性の背景にある。豪州とNZの人口増加率は先進国としては高く、2000年代に入ってからも年間1%強のペースで増加している(図表5)。ともに移民国家であり、活発な移民の受け入れを続けてきたためだが、両国の人口増加率は同じ移民国家である米国をも上回る。
1)経済の連動性
それでは、なぜ両国通貨には高い連動性があるのだろうか。結論から言えば、経済の連動性が高いためだ。
NZ経済は豪州経済との繋がりが強い。同国の財・サービス輸出に占める豪州の割合は全体の2割弱を占め、国別では第2位の輸出先となっている(一方、豪州の対NZ輸出割合は全体の4%弱に過ぎない)。また、豪州、NZともに中国が最大の輸出先である点も共通しており、両国ともに輸出を通じて中国経済の影響を受けやすい構造になっている(図表4)。つまり、「中国経済→豪州経済・NZ経済」、「豪州経済→NZ経済」という2つの太い貿易ルートによる影響が豪州とNZ経済の連動性を高めている。
さらに、経済の基礎であり、潜在成長率にも関わる人口動態が似ていることも両国経済の強い連動性の背景にある。豪州とNZの人口増加率は先進国としては高く、2000年代に入ってからも年間1%強のペースで増加している(図表5)。ともに移民国家であり、活発な移民の受け入れを続けてきたためだが、両国の人口増加率は同じ移民国家である米国をも上回る。
2)金融政策・市場金利の連動性
このように、両国は経済・物価の連動性が高いため、自ずと金融政策にも連動性が生まれる。豪州とNZの政策金利の推移を振り返ると(図表10)、完全に一致こそしないものの、ある程度の連動性が確認できる。
そこで、豪政策金利(前月差)とNZ政策金利(同)について時差相関を計算すると、NZ政策金利と比較した豪政策金利の先行月数が-2ヵ月~2ヵ月の場合に高い相関を示しており、なかでも豪政策金利をNZ政策金利に対して1~2ヵ月先行させた場合の相関係数が最も高くなっている(図表11)。つまり、両国の政策金利は概ね同じタイミングで動くことが多いが、NZ政策金利が豪政策金利にやや遅れて追随する傾向がみられるということだ。既述の通り、NZ経済には豪州経済の動向が波及しやすいことが、NZの金融政策運営に影響していると考えられる。
そして、金融政策の連動性が高いことは、市場金利の連動性の高さにも繋がっている。豪州とNZの国債利回りは、短期・長期を問わず、その水準や方向性が似通っている(図表12・13)。
このように、両国は経済・物価の連動性が高いため、自ずと金融政策にも連動性が生まれる。豪州とNZの政策金利の推移を振り返ると(図表10)、完全に一致こそしないものの、ある程度の連動性が確認できる。
そこで、豪政策金利(前月差)とNZ政策金利(同)について時差相関を計算すると、NZ政策金利と比較した豪政策金利の先行月数が-2ヵ月~2ヵ月の場合に高い相関を示しており、なかでも豪政策金利をNZ政策金利に対して1~2ヵ月先行させた場合の相関係数が最も高くなっている(図表11)。つまり、両国の政策金利は概ね同じタイミングで動くことが多いが、NZ政策金利が豪政策金利にやや遅れて追随する傾向がみられるということだ。既述の通り、NZ経済には豪州経済の動向が波及しやすいことが、NZの金融政策運営に影響していると考えられる。
そして、金融政策の連動性が高いことは、市場金利の連動性の高さにも繋がっている。豪州とNZの国債利回りは、短期・長期を問わず、その水準や方向性が似通っている(図表12・13)。
このように、単に「資源国で高金利のオセアニア通貨」というイメージだけでなく、経済・物価・金融政策において連動性があることが豪ドルとNZドルの連動性の高さの背景にある。
(2018年08月01日「基礎研レポート」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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