2018年07月20日

インターネット通販市場の成長と物流施設利用の方向性(1)~インターネット通販市場の成長可能性

金融研究部 主任研究員   吉田 資

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(2)人手不足対策
宅配便の取扱個数が急増する中、不在のために持ち帰る「再配達」が、宅配便事業者の更なる負担増を招いている。国土交通省は、「総合物流施策推進プログラム」(2018年1月)において、宅配便の再配達率を、16%程度(2017年度)から13%程度(2020年度)まで削減することを目標としている。また、国土交通省HP上では「再配達削減のために活用をお願いしたい3つの方法」が掲載されている。具体的には、(1)「時間帯指定の活用」、(2)「各事業者の提供しているコミュニケーション・ツール等(メール・アプリ等)の活用」、(3)「コンビニ受取や駅の宅配ロッカーなど、自宅以外での受取方法の活用」を掲げている。

大手宅配便事業者も再配達削減の取組みを開始している。ヤマト運輸は、宅配ロッカーサービスを展開するフランス企業のネオポストグループと、複数の事業者が共同で利用できるオープン型宅配ロッカーネットワークを構築し、運用するための合弁会社「Packcity Japan株式会社」を2016年5月に設立し、宅配ロッカー事業を開始している。

しかし、内閣府政府広報室が2017年12月に実施した「再配達に関する世論調査」によれば、回答者の7割弱が、宅配ボックスやコンビニでの受取等、いずれも利用したことがないと回答しており、インターネット通販利用者の認知度はまだ低い状況にある(図表16)。

国土交通省「宅配便再配達率」によれば、2018年4月期の宅配便再配達率は、前回調査(2017年10月期)からやや低下したものの、15%と高い水準にある。特に、単身世帯が多い都市部で高い傾向がみられる(図表17)。
図表-16 宅配便を受け取るために利用した方法/図表-17 宅配便再配達率
ラストワンマイルの人手不足を解消する新技術として、無人飛行機(ドローン)を使った宅配サービスが期待されている。千葉市では2016年1月にドローンの活用に進める国家戦略特区の指定を受け、幕張地区でドローンを使った宅配便配送の実証実験をスタートさせており、2019年度までに実用化したいとしている。具体的には、ドローンで東京湾岸部の物流施設から幕張新都心内の集積所へ輸送し、その上で高層マンションの各住戸へ宅配するサービスを想定している。

幕張新都心の立地優位性

(1) (比較的距離が近い)東京湾岸臨海部に物流施設が多く立地している。
(2) 配送ルートの大半が海上と一級河川(花見川)の上空である。
(3) 幕張ベイタウンと隣接する若葉住宅地区(今後開発予定)と合わせて、約3万6千人の居住人口。若葉住宅地区では、設計段階から、ドローン宅配を視野にいれた検討も可能。
(4) 電線が地中化されている

図表-18 ドローンの飛行ルート
実証実験が行われた幕張新都心は、上記のドローンによる配送ビジネスが成立しうる環境が整っている 。一方、「配送ルートの大半が海上と河川」や「電線が地中化している」地域は限られている。全国でドローンを使った宅配サービスを本格的に実用化するためには、まだ課題が多いと思われる。

このように、再配達削減の取組みやトラック輸送に代わる新技術の開発が行われているものの、ラストワンマイルにおける人手不足が早期に解決することは難しいと考えられる。
3シェアリングエコノミーの拡大
新たな経済活動の動きとして、シェアリングエコノミー7が注目されている。インターネット通販に関連するシェアリングエコノミーとして、ネットオークションとフリマアプリ8を挙げられる。ジャストシステム「Eコマース&アプリコマース月次定点調査」(2018年5月度)によれば、「個人間商取引(CtoCサービス)を利用したことがある」との回答が約3割を占めており、CtoCサービスの利用が一定程度進んでいる状況が窺える。(図表19)。また、現在利用しているCtoCサービスとしては、「メルカリ」(フリマアプリ)と「ヤフオク!」(ネットオークション)が上位となっている(図表20)。

経済産業省「電子商取引に関する市場調査」によれば、2017年のネットオークション(個人間取引)の推定市場規模は約3,569億円(前年比3.2%増)、フリマアプリの推定市場規模は約4,835億円(前年比58.4%増)と拡大が続いている。

シェアリングエコノミーが更に進展するためには、消費者の不安解消および法規制の再整備が必要との指摘がある9。これに対しては、「シェアリングエコノミー推進プログラム10」の開始や「シェアリングエコノミー促進室」の設置(2017年1月)等、シェアエコノミーの認知度向上等に寄与する取組みが始まっている。

上記の取組み等に後押しされ、今後もシェアリングエコノミー市場の拡大は継続すると見込まれる。

総務省「平成30年版 情報通信白書」では、「シェアリングエコノミーの進展による新市場の創出に伴い、既存市場への負の影響も生じる可能性がある。シェアリングエコノミーが拡大すると新品の購入が減る可能性がある」と指摘されている。インターネットショッピング等に与える影響を懸念される一方で、フリマアプリ等を通じた商品の二次流通が新品の購入意欲を刺激するとの見方もある。現時点では、シェアリングエコノミーの拡大が、インターネット通販市場成長の推進もしくは阻害要因とは断言できない。

ただし、個人から個人へ商品を送るシェアリングエコノミーでは、インターネット通販と同様に荷物の配送が重要となる。上記のメルカリは、ヤマト運輸と提携した出品した荷物の発送サービス「らくらくメルカリ便」を、2018年5月から全国のセブンイレブンの店舗での受付を開始している。シェアリングエコノミーの拡大が宅配便取扱個数をさらに押し上げ、前項に示したラストワンマイルにおける人手不足に拍車をかけることは懸念される。
図表-19 個人間商取引(CtoCサービス)の利用状況/図表-20 各種CtoCサービスの利用状況
 
場所・乗り物・モノ・人・お金等の遊休資産をインターネット上のプラットフォームを介して個人間で賃借や売買、交換することでシェアしていく新しい経済の動き。<
8 インターネット上の仮想のフリーマーケット内で個人同士が衣料品や雑貨等を自由に売買可能なスマートフォン専用のアプリ(もしくは、仮想のフリーマーケット取引市場の総称)
中美尋『シェアリングエコノミーが日本産業に与える影響』みずほ銀行産業調査部、Mizuho Industry Focus、2018年6月21日
10 (1)自主的ルールによる安全性・信頼性の確保、(2)グレーゾーン解消に向けた取組等、(3)シェアリングシティー構想の推進、(4)シェアリングエコノミーの普及・啓発を行う。
 

3――おわりに

3――おわりに

前述の通り、ネットショッピング利用率の上昇と、ネットショッピングでの支出の多いミドル・シニア層の拡大に支えられ、インターネット通販市場の成長は継続すると思われる。ただし、ラストワンマイルを支える宅配便における深刻な人手不足等が阻害要因となり、市場の成長スピードが鈍化することも懸念される。

そこで、次回のレポートでは、インターネット通販における成長分野に着目し、物流施設利用の方向性を考察したい。
 
 

(ご注意)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。 また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
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金融研究部   主任研究員

吉田 資 (よしだ たすく)

研究・専門分野
不動産市場、投資分析

(2018年07月20日「不動産投資レポート」)

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