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190兆円の社会保障費をどのようにとらえるか-「2025年問題」の虚像と実像

上智大学 経済学部 中里 透
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2040年度に社会保障給付費が190兆円に達するとの政府試算(5月21日公表)は、大きな衝撃をもって受けとめられた。6月15日に閣議決定された「骨太の方針2018」では、2022年以降に「社会保障関係費の急増が見込まれる」との見通しも示されている。こうした中、財政や社会保障の先行きを懸念する声が広がっている。
このような状況を踏まえ、本レポートでは「190兆円」の社会保障費をどのように読み解くかについて、具体的なデータをもとに考えてみることとしたい。ここで、あらかじめ結論を要約すれば以下の通り。
(1)2040年度にかけて社会保障の負担増が生じることは確かだが、その変化は緩やかなものにとどまる。18年度から40年度にかけての負担増を1年当たりに引きなおしてみると、実質的な負担増は過去10年間に経験した増加のペースと同じかそれをやや下回るものとなる。
(2)「2022年以降に社会保障費が急増する」との見解は、この期間中の人口動態の変化(75歳以上人口の増加と65~74歳以上人口の減少の同時進行)を見落としたために生じた錯覚によるものである。
(3)「2025年問題」は財政負担の「急増」の問題というよりは医療・介護サービスの提供体制に生じる問題(人手不足などによるサービス水準低下の懸念)ととらえたうえで、それに応じた適切な対応策を講じていくことが必要となる。
■目次
1――「190兆円」の衝撃
2――今回の試算の概要
3――実質的な負担増はどのくらいか?:物価水準と経済規模による調整
1|物価水準の調整
2|経済規模による調整
4――社会保障費はなぜ「急増」しないのか?:人口動態の考慮
1|社会保障費における「2025年問題」
2|人口動態の考慮
3|「中長期試算」による確認
5――「190兆円」ははたして「実像」なのか?:推計誤差の問題
1|「成長実現ケース」における留意点
2|「ベースラインケース」における留意点
6――大増税は不可避なのか?:歳出と税収の推移
7――「2025年問題」の実像:医療・介護サービスの供給制約と現役世代の負担増
1|医療・介護サービスの供給制約
2|現役世代の負担増
(2018年06月25日「基礎研レポート」)
上智大学 経済学部
中里 透
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