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19年10月にどのようにたどり着くか~消費税をめぐる2つの論点

上智大学 経済学部 中里 透
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国と地方の長期債務残高が今年度末(見込み)で1,037兆円(対名目GDP比187%)、今年度の基礎的財政収支の赤字が18.4兆円(対名目GDP比3.3%)という現在の財政状況を踏まえると、消費税率の引き上げは避けて通ることのできない課題ということになるだろう。だが、政府には財政健全化と並んでデフレ脱却という、もうひとつの重要な政策課題があり、消費税率の2%引き上げと2%の物価安定目標の達成という2つの「2%」の実現を、どのような手順で進めていくかが、これから来年の秋にかけての大きな論点となりそうだ。
日本銀行が「2019年度頃」としている物価安定目標の達成時期については、さらに後ずれする可能性があるが、この見通しに沿って推移した場合には物価目標の達成時期と消費税率引き上げのタイミングが重なることになる。ここで留意が必要なのは、両者の間にトレードオフの関係があるということだ。8%への引き上げが実施された14年4月以降の経過を振り返ってみると、増税による実質所得の低下を受けて家計の節約志向が高まり、3年近くにわたって消費の停滞が続いてきた(図表1)。このような消費の落ち込みは、原油価格の下落に伴うガソリンなどエネルギー関連品目の価格低下と相まって、物価を下押しする要因となった。
普段はあまり意識しないが、現行の消費税率8%のうち1.7%は地方消費税という地方税になっている。地方消費税は地域間の偏在性の少ない税とされているが、各都道府県の地方消費税の税収を人口1人当たりでみると、東京都の税収が際立って多い(図表2)。このため、一部の地方団体からは、税収の偏在是正などの観点から地方消費税の配分のあり方を見直すべきとの意見が表明されている。また、地方消費税が社会保障財源化されたことを踏まえて、各都道府県の人口を税収の配分基準(清算基準)として重視すべきとの意見もある。
もちろん、このことは現行の配分基準(清算基準)の見直しを行う必要がないということを意味するものではなく、清算基準として用いられている指標(各都道府県における小売業販売額、サービス業対個人売上高(収入額)と人口、従業者数)の内容が実際の消費額をより正確に捉えることができるものとなるよう、点検と見直しを行っていくことには重要な意味がある。
消費税については、この他にもさまざまな課題が残されているが、落ち着いた環境のもとで冷静な議論が着実に積み重ねられていくことが望まれる。
(2017年09月05日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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