2018年06月22日

中国経済:景気指標の総点検(2018年夏季号)~GDPではなく景気10指標でみた実態

三尾 幸吉郎

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3.その他の景気4指標

【電力消費量】
電力消費量の動きをみると、15年にゼロ成長へ落ち込んだあと、16年には前年比5.0%増、17年には同6.6%増、18年1-5月期は同9.8%増と加速してきた(図表-11)。なお、4月は前年比7.8%増、5月は11.4%増と、振れは大きいものの1-3月期の同9.8%増とほぼ同水準で推移している。

【道路貨物輸送量】
道路貨物輸送量の動きをみると、1-5月期は前年比8.0%増と1-3月期の同7.4%増を上回った。中国交通運輸部の公表データを元に4-5月期の伸びを推計すると同8.9%増となり加速したことが分かる(図表-12)。なお、鉄道貨物輸送量も5月は前年比11.8%増と高い伸びを示した。
(図表-11)電力消費量(業種別)/(図表-12)道路貨物輸送量の推移
【工業生産者出荷価格】
工業生産者出荷価格の動きをみると、3月の前年比3.1%上昇を底に、4月は同3.4%上昇、5月は同4.1%上昇と再び上昇率を高めた(図表-13)。原油の国際市況が上昇したのに加えて、鋼材価格も3月に底打ちし、生産財は上昇に転じている。なお、今のところ消費財は落ち着いている。

【通貨供給量(M2)】
金融面の代表指標である通貨供給量(M2)の動きを見ると、4月・5月ともに前年比8.3%増と低い伸びが継続、1-3月期の平均(同8.5%増)を下回った。また、社会融資総量の動きを見ると、人民元建て融資の伸びは緩やかな鈍化に留まったものの、シャドーバンキング(委託融資等)の伸びは急減速、マクロプルーデンス政策による引き締め効果がでてきた(図表-14)。
(図表-13)工業生産者出荷価格/(図表-14)社会融資総量の推移

4.総合指標

4.総合指標

(図表-15)景気評価点の推移 1|景気評価点
以上で概観した景気10指標を、それぞれ3ヵ月前と比べて上向きであれば“○”、下向きであれば“×”として一覧表にしたのが図表-16である。需要面をみると、小売売上高が3ヵ月ぶりに“×”、固定資産投資は3ヵ月連続で“×”、輸出金額は4ヵ月ぶり“×”に転じており、需要面の景気指標は悪化した。一方、供給面をみると、工業生産は“○”と“×”が交互に訪れる一進一退だが、製造業PMIが2ヵ月連続で“○”、非製造業PMIは4ヵ月ぶりに“○”に転じ、供給面の景気指標は概ね良好である。また、電力消費量は“×”、道路貨物輸送量は“○”、工業生産者出荷価格“○”、通貨供給量は“×”と、強弱が入り混じるまちまちな状況にある。
以上を“○=1点”、“×=0点”として集計したものを筆者はこれを景気評価点と呼んでいる。評価に用いた景気指標は全部で10種あるので、景気が上向きか下向きかの分岐点は5点となる。この5月は4点で「横ばい」と「やや減速」の境目にある。図表-15に示したように、景気評価点はここ1年「横ばい」と「減速」の間で推移しており、景気は一進一退を繰り返しながらも緩やかな減速過程にあると見られる。但し、米中貿易摩擦がさらに深刻化すれば、景気減速が「緩やか」でなくなる恐れもあるだけに、今後の動きを注視する必要がある。
(図表-16)景気評価総括表(○×表)
 
 

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三尾 幸吉郎

研究・専門分野

(2018年06月22日「Weekly エコノミスト・レター」)

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