コラム
2018年04月24日

「書き換え」から「改ざん」へ-正しい言葉の使い方

  土堤内 昭雄

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今年4月、一層の漢字文化の振興を図るため日本初の漢字に関する学会「日本漢字学会」が発足した。同学会は研究者のみならず一般の人も参加し、初代会長には阿辻哲次京都大学名誉教授が選ばれた。同氏は日本経済新聞の日曜版に「遊遊漢字学」という記事を連載し、毎回表意文字である漢字の魅力を綴っている。昨年大晦日の記事では、歳末恒例の「今年の漢字」に選ばれた「北」を取り上げていた。

「北」は二人の人が背を向けあった形で、もともと「背中」を意味していたそうだ。太陽をみて背中の方角が「きた」に当たり、もっぱら方角を意味するようになったという。記事の標題には『南に逃げても「敗北」』とあり、戦いに負けて敗走するときに敵に背中を向けることから「敗北」と言ったそうだ。このような解説を読むと、多くの人が漢字に対する興味をかきたてられるのではないだろうか。

文化庁の平成28年度「国語に関する世論調査」では、「話のさわり」を「話の要点」と答えた人は36.1%、「話の最初の部分」と答えた人が53.3%だった。後者を誤用と捉えるのか時代の変化とみるのかは議論があるだろう。昨年9月の遊遊漢字学にも、「豹変」は臨機応変に良い意味で変わることだが、いつしか『手のひらを返すようにゴロッと態度や方針を変えること』という誤用が広まったとある。

連日、多くのマスコミが学校法人「森友学園」への国有地売却に関するニュースを大きく報じている。財務省が決裁文書の書き換えを国会に報告した時点では、新聞各紙の見出しは「書き換え」と「改ざん」にわかれていた。しかし、安倍首相が国会で、『「改ざん」と指摘されてもやむなし』と答弁して以降、全国紙はそろって「改ざん」の見出しを掲げ、NHKニュースでも「改ざん」との表現に改められた。

一般の読者や視聴者にとっては、記事の見出しが「書き換え」と「改ざん」では印象が大きく異なる。「改ざん」とは『そこに書いてある文字を、自分に有利な字面に書き直すこと』(新明解国語辞典第7版)であり、不公正な意図が含まれるからだ。マスコミ報道もどのタイミングで「改ざん」と表現するかは、国民に対する印象操作になる恐れもあり、慎重を期することが必要だろう。

現代社会には財務省の決裁文書にとどまらず、自動車メーカーの燃費データ改ざん事件や学術分野でも研究論文の改ざん問題が後を絶たない。「改ざん」には「穴」と「鼠」を組み合わせた「竄」という漢字があてられる。「鼠がこっそり穴の中に隠れる」という意味なのか、「遊遊漢字学」の解説を期待したい。漢字や言葉の意味を正しく理解することは、正確なコミュニケーションを図る上で不可欠だ。文章を書くことを仕事にする者として、正しい言葉の使い方を心がけなくてはならないと、つくづく思う。
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(2018年04月24日「研究員の眼」)

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