2018年03月30日

副業は日本社会に定着するだろうか - 副業の現状や今後の課題 -

生活研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任   金 明中

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1――はじめに

最近、日本では副業・兼業(以下、副業)という働き方が再び注目を集め始めている。既存の副業は、農林水産業者の兼業とアルバイトの兼職といった、所得を補填するための手段として多く行われていたものの、最近では所得補填の手段に加えて、自己実現及び一つの会社に依存するリスクを回避するために副業が実施される等、その目的が多様化している。政府も「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成する等、副業を普及させるための支援を行っている。今後、副業は日本社会に定着するだろうか。本稿では副業の現状や今後の課題について述べたい1
 
1 本稿は、金 明中(2018)「働き方改革シリーズ⑥:副業・兼業の現状と今後の課題」『福利厚生情報』2018 年度Ⅰを修正・加筆したものである。
 

2――政府が副業を奨励

2――政府が副業を奨励

安倍首相を議長とする働き方改革実現会議では、2017年3月28日に「働き方改革実行計画」が決定され、柔軟な働き方をしやすい環境整備の一つとして、労働者の健康確保に留意しつつ、原則副業を認める方向で、 副業の普及促進を図ると発表した。さらに、厚生労働省は副業の拡大を目指すガイドライン策定等を目的とした「柔軟な働き方に関する検討会」を立ち上げた。当検討会は2017年10月3日に初めて行われ、6回目になる2017年12月19日の検討会では、副業の促進の方向性と企業と労働者の対応等を含めた「副業・兼業の促進に関するガイドライン(案)」を取りまとめた。そして、今年の1月には、副業について、企業や働く方が現行の法令のもとでどういう事項に留意すべきかをまとめた「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が作成・公表された。ガイドラインでは、副業のメリットと留意点を労働者と企業に区分して説明している。

副業による労働者のメリットとしては、(1) 離職せずとも別の仕事に就くことが可能となり、スキルや経験を得ることで、 労働者が主体的にキャリアを形成することができること、(2) 本業の所得を活かして、自分がやりたいことに挑戦でき、自己実現を追求することができること、(3) 所得が増加すること、(4) 本業を続けつつ、よりリスクの小さい形で将来の起業・転職に向けた準備・試行ができることを挙げている。そして、留意点としては、(1) 就業時間が長くなる可能性があるため、労働者自身による就業時間や健康の管理も一定程度必要であること、(2) 職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務を意識することが必要であること、(3) 1週間の所定労働時間が短い業務を複数行う場合には、雇用保険等の適用がない場合があることに留意が必要であることが挙げられた。

一方、副業による企業のメリットとしては、(1) 労働者が社内では得られない知識・スキルを獲得することができること、(2) 労働者の自律性・自主性を促すことができること、(3) 優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上すること、(4) 労働者が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながることを挙げている。そして、留意点として、必要な就業時間の把握・管理や健康管理への対応、職務専念義務、秘密保持義務、競業避止義務をどう確保するかという懸念への対応が必要であると説明している。

現在、日本では副業が法律で禁止されてはいないものの、厚生労働省の「モデル就業規則」に基づいて多くの企業では会社の法律とも言える「就業規則」で副業を禁止している。今後、政府はモデル就業規則に「本業に影響を与えないこと」、「副業が労働者と副業をする会社に利益を発生させる一方、本業をする会社に損害を発生させないこと」等の条件を追加することで、副業と兼業禁止規定を変更し、副業を原則として許可していく方針である。今後政府はモデル就業規則改定などの環境整備を行い、2027年度には希望者全員が原則として副業を行うことができる社会を構築することを計画している(図表1)。
図表1 副業の推進に向けた計画表
政府がこのように副業を容認する政策を推進するに至った理由としては、急速な少子高齢化による労働力人口の減少(労働力不足)が経済成長にマイナスの影響を与えると考えたからである。2017年10月1日時点の日本の総人口は1億2,670万6千人で,前年同月に比べて22万7千人も減少した。ピークであった2008年の1億2,808万人と比べると、約138万人も減少した数値である。さらに、15~64歳の生産年齢人口は1995年に8,716万人でピークを迎え、その後減少に転じ、2017年には7,596万人2まで減少しており、2056年には5千万人を下回ると予想されている(図表2)。
図表2 日本における年齢階層別(3区分)人口の推移
 
2 総務省統計局(2018)「人口推計(平成29年(2017年)10月確定値,平成30年(2018年)3月概算値) (2018年3月20日公表)」
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生活研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
労働経済学、社会保障論、日・韓における社会政策や経済の比較分析

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