2018年03月23日

消費者物価(全国18年2月)-コアCPI上昇率(消費税を除くベース)は3年6ヵ月ぶりの1%台に

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.コアCPI上昇率は1%台に

消費者物価指数の推移 総務省が3月23日に公表した消費者物価指数によると、18年2月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比1.0%(1月:同0.9%)となり、上昇率は前月から0.1ポイント拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:1.0%、当社予想も1.0%)通りの結果であった。

コアCPI上昇率が1%台となったのは、15年3月の前年比2.2%以来だが、消費税を除くベースでは14年8月の前年比1.1%(参考値の消費税調整済指数による)以来3年6ヵ月ぶりとなる。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合は前年比0.5%(1月:同0.4%)と上昇率が前月から0.1ポイント拡大、総合は前年比1.5%(1月:同1.4%)と上昇率が前月から0.1ポイント拡大した。総合指数がコアCPIの伸びを大きく上回っているのは、生鮮食品が1月の前年比12.5%に続き、2月も同12.4%と高止まりしているためである。
消費者物価指数(生鮮食品除く、全国)の要因分解 コアCPIの内訳をみると、電気代(1月:前年比6.4%→2月:同5.8%)、ガス代(1月:前年比3.8%→2月:同3.3%)の上昇幅は縮小したが、ガソリン(1月:前年比8.8%→2月:同10.9%)、灯油(1月:前年比9.6%→2月:同12.8%)の上昇幅が拡大したため、エネルギー価格の上昇率は前年比7.0%と1月の同6.7%から若干拡大した。

また、宿泊料(1月:前年比1.0%→2月:同5.2%)、外国パック旅行費(1月:前年比1.9%→2月:同8.8%)の上昇幅拡大から、教養娯楽が1月の前年比0.5%から同1.3%へと伸びを高めたこともコアCPIを押し上げた。

CPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.53%(1月:0.50%)、食料(生鮮食品を除く)が0.28%(1月:0.30%)、その他が0.20%(1月:0.10%)であった。

2.物価上昇品目数が減少

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象523品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、2月の上昇品目数301品目(1月は306品目)、下落品目数は169品目(1月は165品目)となり、上昇品目数が前月から減少した。上昇品目数の割合は57.6%(1月は58.5%)、下落品目数の割合は32.3%(1月は31.5%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は25.2%(1月は27.0%)であった。

上昇品目数の割合は60%近い水準を維持し、物価上昇に一定の裾野の広がりが出てきたことを示すものとなっているが、これは既往の円安、原油高による輸入物価上昇の影響が大きいと考えられる。足もとでは円高が進んでいるため、先行きは物価上昇品目数の減少傾向が続く可能性が高いだろう。

3.コアCPI上昇率は当面1%前後の推移が続く見込み

コアCPIに対するエネルギーの寄与度 コアCPI上昇率は消費税を除くベースでは3年6ヵ月ぶりの1%台となった。日銀が基調的な物価変動を把握するために重視している「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」も前年比0.5%まで上昇率が高まり、基調的な物価にも改善の兆しもみられる。また、景気回復に伴う需給バランスの改善は引き続き物価の押し上げ要因となることが見込まれる。

ただし、18年3月以降はエネルギー価格の上昇率鈍化が見込まれること、足もとの円高が輸入物価の下落を通じて先行きの物価下押し圧力となることから、コアCPI上昇率の1%台が定着するのはもう少し先となりそうだ。当面は1%前後の推移が続くことが予想される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2018年03月23日「経済・金融フラッシュ」)

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