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- 人手不足に起因する物流コスト上昇が喚起する物流施設への需要(2)~コスト削減の取組みが喚起する需要とその方向性
2018年03月09日
(2) 人手不足が3PLおよびEC市場成長の重石となる中、拠点再編需要の存在感が増す
首都圏における大規模賃貸施設市場の需給は、旺盛な需要に支えられ、2010年以降安定してきた(図表-9)。その旺盛な需要を支えたのは、3PL4市場とEC市場の成長であった。
物流の現場では、物流業務の高度化や業務効率化の要請等に伴い、3PL事業者などの物流事業者への外部委託が進んでいる。ライノス・パブリケーションが実施した3PL市場に関する調査によれば、3PLの市場規模は、上記の物流業務のアウトソース化に後押しされ、順調に拡大してきた(図表-10)。ただし、市場の成長スピードは減速しつつあり、直近(2016年度)の年間成長率は4.5%に留まった。同調査では、「設備は準備できるがドライバー、庫内作業員の不足により新規業務を受けることが難しい」との回答もあり、今後、人手不足の深刻化が市場成長の重石になる可能性がある。
首都圏における大規模賃貸施設市場の需給は、旺盛な需要に支えられ、2010年以降安定してきた(図表-9)。その旺盛な需要を支えたのは、3PL4市場とEC市場の成長であった。
物流の現場では、物流業務の高度化や業務効率化の要請等に伴い、3PL事業者などの物流事業者への外部委託が進んでいる。ライノス・パブリケーションが実施した3PL市場に関する調査によれば、3PLの市場規模は、上記の物流業務のアウトソース化に後押しされ、順調に拡大してきた(図表-10)。ただし、市場の成長スピードは減速しつつあり、直近(2016年度)の年間成長率は4.5%に留まった。同調査では、「設備は準備できるがドライバー、庫内作業員の不足により新規業務を受けることが難しい」との回答もあり、今後、人手不足の深刻化が市場成長の重石になる可能性がある。
経済産業省「電子商取引に関する市場調査」によれば、物販系ECの市場規模は、堅調に拡大しており、直近の2016年は8兆円に達した(図表-11)。今後も、ITリテラシーが高い世代に占める割合が増えることで、物販系EC市場の拡大は継続すると思われる。しかし、ドライバー不足および取扱個数の増加に伴い、ラストワンマイルを担う宅配事業者の負担は増大しており、宅配料の値上げに踏み切った企業も見られる。宅配料の値上げ分を消費者へ価格転嫁する動きも一部で起こっており、このことが市場成長の阻害要因になりえる。
今後も、3PL企業とインターネット通販企業は、大規模賃貸施設のテナント先として高いプレゼンスを維持するだろう。しかし、人手不足がより深刻化し、3PL市場およびEC市場の成長が鈍化した場合、テナント先として、物流拠点再編を志向する「卸売業」の存在感は増すと思われる。
今後も、3PL企業とインターネット通販企業は、大規模賃貸施設のテナント先として高いプレゼンスを維持するだろう。しかし、人手不足がより深刻化し、3PL市場およびEC市場の成長が鈍化した場合、テナント先として、物流拠点再編を志向する「卸売業」の存在感は増すと思われる。
4 Third Party Logistics:荷主に対して物流改革を提案し、包括して物流業務を受託し遂行すること。
(3) 人手不足は、大量供給局面においてエリア格差拡大の一因に
今後、首都圏では、2018年と2019年に年間250万m2を超える大規模賃貸施設の大量供給が予定されている。図表-12は、2018年以降に供給予定の大規模賃貸物流施設(2018年2月時点)を対象に、供給予定面積をエリア別に示したものである。「千葉西北部」や「川崎市」、「埼玉北部」では100万m2を超える新規供給が予定されている。一方、(前章に示した)「卸売業」の拠点再編可能性が高い「東京区部内陸」と「横浜市」での新規供給は比較的少ない。「東京区部内陸」と「横浜市」は、人口集積の観点からパート従業員の確保が比較的容易で、かつ輸送費削減の観点から消費地への近接性を優れており、「卸売業」以外の業種の物流拠点再編先としても有望なエリアである。それ故、現在、予定されている新規供給量では、旺盛な需要に追いつかず、エリアの需給は逼迫する公算が高い。
一方、大量供給が予定されている「千葉西北部」や「埼玉北部」等のエリアは、圏央道の開通による交通利便性の向上や、首都圏の中では賃料水準が比較的廉価、等の要因から3PL企業等を中心に物流施設への需要は堅調であった。しかし、大消費地である東京中心地まで距離があり輸送費の増加が懸念されることや、鉄道駅まで距離がある地域も多く通勤利便性にやや劣ること、等から、人手不足に伴い3PL企業を中心した需要は弱含む可能性がある。大量供給も相まって需給が緩和する懸念がある。
今後も人手不足が継続することで、エリア・立地による需給格差が拡大する可能性があり、注視が必要であると思われる。
今後、首都圏では、2018年と2019年に年間250万m2を超える大規模賃貸施設の大量供給が予定されている。図表-12は、2018年以降に供給予定の大規模賃貸物流施設(2018年2月時点)を対象に、供給予定面積をエリア別に示したものである。「千葉西北部」や「川崎市」、「埼玉北部」では100万m2を超える新規供給が予定されている。一方、(前章に示した)「卸売業」の拠点再編可能性が高い「東京区部内陸」と「横浜市」での新規供給は比較的少ない。「東京区部内陸」と「横浜市」は、人口集積の観点からパート従業員の確保が比較的容易で、かつ輸送費削減の観点から消費地への近接性を優れており、「卸売業」以外の業種の物流拠点再編先としても有望なエリアである。それ故、現在、予定されている新規供給量では、旺盛な需要に追いつかず、エリアの需給は逼迫する公算が高い。
一方、大量供給が予定されている「千葉西北部」や「埼玉北部」等のエリアは、圏央道の開通による交通利便性の向上や、首都圏の中では賃料水準が比較的廉価、等の要因から3PL企業等を中心に物流施設への需要は堅調であった。しかし、大消費地である東京中心地まで距離があり輸送費の増加が懸念されることや、鉄道駅まで距離がある地域も多く通勤利便性にやや劣ること、等から、人手不足に伴い3PL企業を中心した需要は弱含む可能性がある。大量供給も相まって需給が緩和する懸念がある。
今後も人手不足が継続することで、エリア・立地による需給格差が拡大する可能性があり、注視が必要であると思われる。
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(2018年03月09日「不動産投資レポート」)
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03-3512-1861
経歴
- 【職歴】
2007年 住信基礎研究所(現 三井住友トラスト基礎研究所)
2018年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
一般社団法人不動産証券化協会資格教育小委員会分科会委員(2020年度~)
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