医療・ヘルスケア
2018年04月09日

ジェネリック(後発薬)とは、どういうものなの?

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也

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3――医薬品メーカーの動き

近年、ジェネリックの普及を受けて、医薬品メーカーでは、関連した動きが出ています。オーソライズド・ジェネリック、医薬品メーカーのM&Aや事業売却、産学共同研究やオープン・イノベーションです。
1|オーソライズド・ジェネリックにより、新薬メーカーは対抗策を進めています
新薬メーカーにとって、後発薬への置き換えは、長期収載品の販売減を意味し、収益減につながることを意味します。そこで、新薬メーカーは、オーソライズド・ジェネリック(AG)という対抗策を打ち出しています。これは、新薬の特許期間中に、新薬メーカーが関連会社を通じて新薬と有効成分が同じ医薬品を、新薬よりも安い価格で発売し、市場に浸透させるものです。

AGの製造会社は、先発薬の特許期間中、新薬メーカーにロイヤリティーを支払います。もし後発薬メーカーが新薬の特許期間中にAGを発売しようとしても、ロイヤリティーの支払いにより利益が出せません。従って後発薬メーカーは新薬の特許切れを待つしかありません。しかし、新薬の特許期間後に、後発薬を発売しても、AGと価格面で大きな差が無いため、市場への浸透は見込みにくいこととなります。AGは、新薬メーカーが先手を打って後発薬市場を自社グループで囲い込む戦略なのです。

なお、AGは新薬の特許を引き継ぐため、医療機関側の心配が少なく、採用されやすいという特徴もあります。
2|医薬品メーカーのM&Aや事業売却が進んでいます
医薬品メーカーにとって、創薬を巡る環境は、厳しくなっています。各国で、高齢化が進み、社会保険の負担軽減に向けて、医療費抑制政策がとられています。また、新薬候補の化合物が枯渇するなか、新たな創薬技術へのキャッチアップが求められるなど、研究の難度が高まっています。一方で、副作用等に関する、薬剤の安全性基準は厳格化され、臨床試験の負荷は増大しています。こうしたことを受けて、海外では、医薬品メーカーのM&Aによる合従連衡が進んでいます。

一方、国内では、後発薬に関連して、新薬メーカーが収益力を維持するために、長期収載品を他社に移管する動きが出ています。これは、「オフ・パテント・ドラッグ(特許期間を満了した医薬品製品群)」の販売戦略と呼ばれています。長期収載品を買い取る側には、製品ポートフォリオを充実させることで、医療機関からの信頼が高まるというメリットがあります。このように、医薬品業界では、M&Aによる合従連衡や、後発薬に伴う事業売却の動きが加速しています。
3|産学共同研究やオープン・イノベーションの動きも進んでいます
医薬品メーカーと、大学や研究所等のアカデミアの産学の共同研究をする動きも活発化しています。共同研究に要する費用を確保するために、医薬品メーカーが、ベンチャーファンドを創立して、金融ファンド等から、資金を集めることも一般的となっています。

また、創薬に活かすことを目指して、医薬品メーカーが研究公募制度を設けて、研究者個人の知見を募ることも行われています。

こうした動きに対して、国は、法人税の研究開発税制7で、自社の試験研究費控除とは別に、大学、国の研究機関、その他の民間企業等との共同研究や委託研究などの費用(特別試験研究費)について、一定割合を法人税から控除できる制度8を設けるなど、オープン・イノベーションの動きを後押ししています。
 
ジェネリック医薬品とともに、引き続き、医薬品メーカーの動向にも注目していくことが求められます。
 
7 所得の計算上損金の額に算入される試験研究費の額がある場合、その事業年度の法人税額から、試験研究費の額に税額控除割合を乗じて計算した金額を控除できる制度です。
8 「オープンイノベーション型」とされ、相手方が大学・国の研究機関(特別研究機関)等の場合は特別試験研究費の30%、その他の民間企業等の場合は特別試験研究費の20%が、法人税額の5% 相当額を上限に控除できます。
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保険研究部   主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員

篠原 拓也 (しのはら たくや)

研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務

経歴
  • 【職歴】
     1992年 日本生命保険相互会社入社
     2014年 ニッセイ基礎研究所へ

    【加入団体等】
     ・日本アクチュアリー会 正会員

(2018年04月09日「基礎研レター」)

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【ジェネリック(後発薬)とは、どういうものなの?】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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