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医療・ヘルスケア
2019年03月28日

ターミナルケア(終末期医療)ってなに?

保険研究部 研究員   岩﨑 敬子

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1――ターミナルケア(終末期医療)とは

1|「終末期」とは1
ターミナルケアは、終末期であると判断された方への治療やケアを指しますが、「終末期」とはいつのことを指すのでしょうか。従来は、特にがんにおいて、治癒を目的とした治療から苦痛を和らげることを中心とした緩和ケアへの切り替えを行った時点以降が、終末期であると捉えられてきました。そのため、ターミナルケアは、緩和ケアや末期患者への緩和ケアであるホスピスケアと同じものであると認識される傾向がありました。(緩和ケアやホスピスケアの詳しい説明は、次項以降をご覧ください)
図1. 従来の緩和ケア・ターミナルケア・ホスピスケアの認識
しかし、近年は、治癒を目的とした医療から緩和ケアを中心とした医療への移行は、図1のようにある時点で突然行われるのではなく、図2のように、徐々に移行していくものであると考えられるようになりました。こうした状況では、緩和ケア中心の治療方針への切り替え時点を終末期の始まりとしてとらえることは困難です。
図2. 近年の緩和ケア・ターミナルケア・ホスピスケアの認識
そこで、日本医師会では、終末期は「治療方針を決める際に、患者はそう遠くない時期に死に至るであろうことに配慮する」時期であり、ターミナルケアはその時期に行われる医療・ケアであると定義しました。ターミナルケアには国際的に認識された定義がないため、緩和ケアやホスピスケアと区別しないで使われている場面もよく見られます。これに対して、日本医師会によるターミナルケアの定義は、治療を目的とした医療から緩和ケアへの移行は徐々に行われるという近年の認識と矛盾せずに捉えられる点で、理解しやすい定義ではないでしょうか。
 
1 参考) 日本医師会 第Ⅸ次生命倫理懇談会 (2006) 『「ふたたび終末期医療について」の報告』
2|ターミナルケアの類似概念の整理2
ターミナルケアの類似概念である、緩和ケア、ホスピスケア、エンドオブライフケアは、それぞれ以下のような概念です。
 
2 参考) 宮下光令 編 (2013) 「ナーシング・グラフィカ 成人看護学⑥ 緩和ケア」
(1) 緩和ケア
WHOによって以下ように定義されています。ターミナルケアやホスピスケア、エンドオブライフケアといった概念が国際的に確立した定義がないのに対して、緩和ケアはこれらの中で唯一国際的な定義が確立している概念です。
 
WHO(2002)による緩和ケアの定義
緩和ケアとは、生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に同定し、適切な評価と治療によって、苦痛の予防と緩和を行うことで、クオリティ・オブ・ライフを改善するアプローチである。

言い換えると、緩和ケアでは、病気の進行度に関係なく、その人の身体的・社会的・精神的苦痛に加え、何か悪いことをした罪でがんになったのだろうか等考えてしまう、といったことも含めて全人的苦痛としてとらえ、その苦痛を緩和してクオリティ・オブ・ライフを向上させることを目的としています。

ターミナルケアが終末期に行われる医療であるのに対して、緩和ケアは診断時から行われるケアですので、ターミナルケアと緩和ケアは実施される時期の認識が異なります。また、実際にはターミナルケアにおいて緩和ケアが大きな割合を占めることが考えられますが、ターミナルケアは「遠くない未来に死に至ることを配慮する」時期に行われる治療すべてであるため、治癒を目的とした治療が含まれる可能性があります。
(2) ホスピスケア
ホスピスケアは、終末期を迎えた人への全人的なケアの必要性を主張するものです。日本では、ホスピスというと、緩和ケア病棟で行われるケアととらえられがちですが、実際には、療養する場所に関わらない概念です。終末期に行われる緩和ケアと考えることもできますが、ホスピスケアではほとんどの場合、疾患の治癒や延命を目的とした治療は行われません。そのため、ホスピスケアは終末期の中でも、治癒を目的とした治療の終了後に行われる緩和ケアであると捉えることができます。
(3) エンドオブライフケア
近年、ターミナルケアに代わって使われるようになっている言葉がエンドオブライフケアです。ターミナルケアとほとんど同義として使われる場合と、別の概念として使われる場合があります。柏木(2007)は、ターミナルケアとほとんど同義として、エンドオブライフケアの方が使われるようになっている理由として2点挙げています。まず1つ目は、ターミナルという言葉からはいかにも最期という意味が連想されるため、エンドオブライフの方が受け入れられやすいと考えられるという理由です。そして2つ目は、ターミナルケアには歴史的にがんを対象とするイメージがあるが、現在の終末期医療は、がん以外も対象とするので、新しい概念としてエンドオブライフを使用するようになったという理由です。

また、エンドオブライフケアをターミナルケアとは異なる概念としてとらえた定義としては、千葉大学大学院看護学研究科エンド・オブ・ライフケア看護学のものがあります。
 
千葉大学大学院看護学研究科によるエンドオブライフケアの定義3
診断名、健康状態、年齢に関わらず、差し迫った死、あるいはいつかは来る死について考える人が、生が終わる時まで最善の生を生きることができるように支援すること

千葉大学大学院看護学研究科によるエンドオブライフケアの定義では、エンドオブライフケアは、健康状態や年齢にかかわらず死について考える人すべてを対象としているという特徴があります。
 
3 千葉大学大学院看護学研究科エンド・オブ・ライフケア看護学HP
 https://www.n.chiba-u.jp/eolc/opinion/index.html (2018.3.27アクセス)

2――ターミナルケアにおける意思決定

ターミナルケアにおけるもっとも重要な側面の一つが治療方針の決定です。厚生労働省は、2007年に「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」を発表しています。その後、改訂が行われ、現時点での最新版は2018年3月に改訂版として発表された「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」です。

このガイドラインでは、以下のように人生の最終段階における医療・ケア方針の決定手続きが示されています。
 
「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の概要
(1) 本人の意思の確認ができる場合 - 本人による意思決定を基本とする。
(2) 本人の意思の確認ができない場合
 1) 家族等が本人の意思を推定できる場合にはその推定意思を尊重し、本人にとっての最善の方針をとることを基本とする。
 2) 家族等が本人の意思を推定できない場合には、本人にとって何が最善であるかについて、本人に代わる者として家族等と十分に話し合い、本人にとっての最善の方針をとることを基本とする。
 3) 家族等がいない場合及び家族等が判断を医療・ケアチームに委ねる場合には、 本人にとっての最善の方針をとることを基本とする。
参照)厚生労働省 (2018) 「人生の最終段階における医療・ケアの 決定プロセスに関するガイドライン」

ある日、突然命に関わる大きな病気やケガをする可能性は、誰にでもあります。命の危険が迫った状態では、約70%の人は医療・ケアなどを自分で決めたり、自分の希望を人に伝えたりすることが出来なくなると言われています4。いざという時に、自分が希望する医療・ケアを受けることができるようにするためには、どういった医療・ケアをどこでうけたいのか、また、医療・ケアを決定するにあたって自分にとって大切な価値観は何なのかを、前もって考えて、信頼する人々と共有しておくことが大切でしょう。
 
4 厚生労働省HP「自らが望む人生の最終段階における医療・ケア」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/saisyu_iryou/index.html (2019.3.27アクセス)
参考文献

WHO Expert Committee on Cancer Pain Relief and Active Supportive Care & World Health Organization, ‎1990‎. Cancer pain relief and palliative care: report of a WHO expert committee [‎meeting held in Geneva from 3 to 10 July 1989]‎. Geneva : World Health Organization
柏木哲夫,2007.「生と死の医学 連載 終末期医療をめぐる様々な言葉」『総合臨床』56(9): 2744–2748
里見絵理子, 2017. 「最新がん緩和ケア ~緩和ケアって、終末期医療だと誤解していませんか?~」『「がんサバイバーシップ オープンセミナー」 「公民館カフェ」「ご当地カフェ」 平成 28 年度 活動報告』9-28
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保険研究部   研究員

岩﨑 敬子 (いわさき けいこ)

研究・専門分野
災害復興、金融・健康行動、メンタルヘルス、ソーシャル・キャピタル

(2019年03月28日「基礎研レター」)

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