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- 貸出・マネタリー統計(18年1月)~アパート・カードローンの減速が鮮明に
2018年02月09日
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1.貸出動向: 伸び率は6ヵ月連続で低下
2月8日に発表された貸出・預金動向(速報)によると、1月の銀行貸出(平均残高)の伸び率は前年比2.32%と前月(同2.44%)から低下した(図表1)。76ヵ月連続でプラスを維持しているものの、伸び率は6ヵ月連続で低下し、15ヶ月ぶりの低水準となった。都銀等の伸び率が前年比1.1%(前月は1.2%)、地銀(第2地銀を含む)の伸び率は同3.4%(前月は3.5%)とそれぞれ低下。特に都銀等は6ヵ月連続の低下となっている(図表2)。
ここ数ヵ月の大幅な伸び率低下は、前年にあったM&A資金など大口貸出による押し上げ効果の一巡のほか、金融庁から問題視されたアパートローン・カードローンの鈍化、前年比で円高になったことに伴う外貨建て貸出の円換算額目減りなどが影響しているとみられる(図表3・4)。
ここ数ヵ月の大幅な伸び率低下は、前年にあったM&A資金など大口貸出による押し上げ効果の一巡のほか、金融庁から問題視されたアパートローン・カードローンの鈍化、前年比で円高になったことに伴う外貨建て貸出の円換算額目減りなどが影響しているとみられる(図表3・4)。
次に、為替変動等の影響を調整した実勢である「特殊要因調整後」の銀行貸出伸び率(図表1)1を見ると、直近判明分である12月の伸び率は前年比2.71%と11月の2.73%からほぼ横ばいに。見た目(特殊要因調整前)の銀行貸出の伸び率は11月(2.72%)から12月(2.44%)にかけて大きく低下していたが、理由はほぼ為替の影響とみられる(12月に前年比円安から円高に)。また、7月以降の見た目の伸び率は大きく低下しているが、10月以降に関しては、為替等の影響を除いた実勢の伸びはほぼ横ばいで推移している。
1月の「特殊要因調整後」伸び率は未判明だが、1月のドル円レートの前年比円高幅は12月と大差ないため(図表4)、特殊要因調整後の伸び率も見た目の伸び同様、前月から約0.1%低下したと推測される。
また、2月8日に公表された10-12月の貸出先貸出金によれば、12月末の貸出の伸び率は、多くの業種で前回(9月末時点)から縮小している(図表5)。ただし、全体の約15%を占め影響の大きい不動産向けは、前年比6.0%と、前回(5.8%)から上昇し、高い伸び率を維持。引き続き全体の牽引役になっている。
また、過熱感が注目されてきた個人向けの新規貸出額(10-12月)を見ると(図表6)、個人による貸家業向け設備資金(アパートローン)の伸びは前年比22.4%減と7-9月(同21.1%減)からマイナス幅を拡大したほか、カードローンを含むとみられる個人の消費財・サービス購入資金向けも前年比0.4%増と4四半期連続で伸びが鈍化している。金融庁から問題視されたことなどを受けて、銀行で自粛の動きが広がっているとみられる。
1月の「特殊要因調整後」伸び率は未判明だが、1月のドル円レートの前年比円高幅は12月と大差ないため(図表4)、特殊要因調整後の伸び率も見た目の伸び同様、前月から約0.1%低下したと推測される。
また、2月8日に公表された10-12月の貸出先貸出金によれば、12月末の貸出の伸び率は、多くの業種で前回(9月末時点)から縮小している(図表5)。ただし、全体の約15%を占め影響の大きい不動産向けは、前年比6.0%と、前回(5.8%)から上昇し、高い伸び率を維持。引き続き全体の牽引役になっている。
また、過熱感が注目されてきた個人向けの新規貸出額(10-12月)を見ると(図表6)、個人による貸家業向け設備資金(アパートローン)の伸びは前年比22.4%減と7-9月(同21.1%減)からマイナス幅を拡大したほか、カードローンを含むとみられる個人の消費財・サービス購入資金向けも前年比0.4%増と4四半期連続で伸びが鈍化している。金融庁から問題視されたことなどを受けて、銀行で自粛の動きが広がっているとみられる。
1 特殊要因調整後の残高は、1カ月遅れで公表されるため、現在判明しているのは12月分まで。
2.主要銀行貸出動向アンケート調査: 企業・個人向け資金需要は堅調
日銀が1月23日に発表した主要銀行貸出動向アンケート調査によれば、2017年10-12月期の(銀行から見た)企業の資金需要増減を示す企業向け資金需要判断D.I.は8と前回(7-9月期)の6から上昇した。上昇は2四半期連続。昨年半ば以降、銀行貸出の伸びは鈍化傾向にあるが、主力の企業向け資金需要は底堅いとの認識が続いている(図表7)。
企業規模別では、大企業向けが0(前回は2)と低下した一方、中小企業向けが9(前回は8)と小幅に上昇。D.I.の水準も中小企業が大企業を大きく上回っており、中小企業向け資金需要が全体を牽引している形となっている(図表8)。
資金需要が増加したとする先に、その要因を尋ねた問いでは、企業規模を問わず、「売上の増加」、「設備投資の拡大」を挙げる先が目立っており、景気回復が資金需要に繋がっている姿がうかがえる。
一方、個人向け資金需要判断D.I.は7と、前回の8からやや低下した(図表7)。低下は2四半期ぶりとなる。主力の住宅ローンは6(前回は5)とやや上昇したが、消費者ローンが低下(前回3→今回2)した。
今後3ヵ月の資金需要については、企業向けD.I.が5、個人向けが1となった。どちらも銀行全体では、引き続き緩やかに増加するとの見立てだが、今後増勢が強まることは見込まれていない(図表7)。
企業規模別では、大企業向けが0(前回は2)と低下した一方、中小企業向けが9(前回は8)と小幅に上昇。D.I.の水準も中小企業が大企業を大きく上回っており、中小企業向け資金需要が全体を牽引している形となっている(図表8)。
資金需要が増加したとする先に、その要因を尋ねた問いでは、企業規模を問わず、「売上の増加」、「設備投資の拡大」を挙げる先が目立っており、景気回復が資金需要に繋がっている姿がうかがえる。
一方、個人向け資金需要判断D.I.は7と、前回の8からやや低下した(図表7)。低下は2四半期ぶりとなる。主力の住宅ローンは6(前回は5)とやや上昇したが、消費者ローンが低下(前回3→今回2)した。
今後3ヵ月の資金需要については、企業向けD.I.が5、個人向けが1となった。どちらも銀行全体では、引き続き緩やかに増加するとの見立てだが、今後増勢が強まることは見込まれていない(図表7)。
(2018年02月09日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1870
経歴
- ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
・ 2007年 日本経済研究センター派遣
・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
・ 2009年 ニッセイ基礎研究所
・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)
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