コラム
2018年01月09日

「老衰」という「逝き方」-長寿時代の幸せな「最期」とは

  土堤内 昭雄

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日本人の2016年の平均寿命は、男性80.98歳、女性87.14歳、65歳以上の高齢者人口が全人口に占める割合である高齢化率は27.3%である。日本はまぎれもなく世界トップレベルの長寿国であり、高齢先進国だ。また、昨年末に厚生労働省が公表した『平成29年人口動態統計の年間推計』によると、昨年の出生数は94万人、死亡数は134万人となり、人口の自然減少数は遂に40万人を突破し、日本は少産多死の本格的な人口減少時代を迎えているのだ。

では、多くの高齢者はどのような人生の「最期」を迎えているのだろうか。2015年の日本人の死因は、第1位が悪性新生物(がん)、第2位が心疾患、第3位が肺炎、第4位が脳血管疾患、第5位が老衰で、75歳以上の後期高齢者に限れば、老衰は男性死因の第4位、女性死因の第3位である。老衰死亡率は、戦後の医療や検査技術の進歩により減少傾向にあったが、近年では上昇に転じている。長寿化の結果、自然死とも言える超高齢者の老衰による死亡数が増加しているためだろう。

厚生労働省死亡診断書記入マニュアルには、『死因としての「老衰」は、高齢者で他に記載すべき死亡の原因がない、いわゆる自然死の場合のみ用いる』とあるが、医学的定義は明確ではない。近年では本人や家族が延命治療を望まないケースや、長寿化により加齢に関連する疾患を伴う高齢者も多く、医学的に「老衰死」を定義することは難しい。老衰死が増えることで、死亡場所も病院だけではなく、自宅や福祉施設での死亡数が増加し、「病院死」から「在宅死」へ移行する傾向もみられる。

高齢者が在宅における老衰死を迎えるには、訪問医療や看護・介護の連携が重要だ。それは長寿時代の「死の質(QOD)」の向上と共に医療費の削減にもつながる。昨年の日本経済新聞社の調査結果では、『老衰と診断されて亡くなった人が多い自治体ほど高齢者一人当たりの医療費が低くなる傾向がある』という。理由として、『最期まで在宅などで過ごせる高齢者は積極的治療を抑えつつ、穏やかな最期を迎え、結果として医療費が低くなっている可能性がある』と分析している(2017年12月25日朝刊)。

高齢者医療費の削減は、膨らみ続ける社会保障費抑制のためには避けて通れない課題だが、それが高齢者の「死の質」の低下をもたらしたり人生の「逝き方」の選択肢を狭めたりしてはならない。一方、終末期医療には、臓器の異変を除去・修復するだけではなく、高齢者自身や家族の幸せな「最期」を支援するという視点が欠かせない。だれにも訪れる「死」のひとつの形である「老衰」という「逝き方」を選択するためには、医学的概念と共に社会学的な死生観の熟成が必要なのかもしれない。
 
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土堤内 昭雄

研究・専門分野

(2018年01月09日「研究員の眼」)

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