コラム
2017年12月25日

「夫は仕事、妻は家庭」エリア支持率 47都道府県価値観ランキング(2)-未婚社会データ検証「ふたりの居場所はどこにある?」

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子

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はじめに

前回の繰り返しになるが、個人の恋愛・結婚行動において希望が叶わないケースにおける大きな原因のひとつは、
「目的と行動が一致していない」である。これは結婚後のすまいとして選択する居住地についても言えるだろう。
 
例えば、自然が大好きで海を愛しているという男性が、海に全く接していないエリアに住むことは、居住地選択行動から考えるならば、より癒される選択、とは言えないだろう。
 
前回の「夫は仕事、妻は家庭」が理想の男性比率47都道府県価値観ランキング(1)-未婚社会データ検証「理想の彼はどこにいる?」、と同様に本稿でも、結婚を希望する男女が「目的にあった行動をしないから出逢えない壁」をクリアしやすくなる情報の一つとなりうるものを提供してみたい。

専業主婦生活を狙うなら西日本へ?

結婚した後、「女性が家庭に入りたいかどうか」に関しては、パートナーとなる相手の希望だけでなく、その居住地のもつ社会的価値観も検討する余地があるだろう。

いくら相手の男性が「働いてほしい」と妻になる人にいっていたとしても、2人が暮らす住環境では「専業主婦が理想」という価値観が一般的であれば、働く妻へのエリアの評価は「あまり理想的な妻ではないかな」とうことになりがちであり、少なくとも妻の方はかなり暮らしにくく感じるだろう。
 
その一方で、専業主婦願望の強い女性であれば、女性が家庭に入るべきであるとする価値観が強いエリアで居住すれば「彼女の家庭は理想的」と評価されやすく、比較的ストレスフリーとなる可能性が高いともいえる。
 
そこで47都道府県について、前回用いた内閣府の大規模調査結果を利用して、「自分だけでなく一般的にも夫は仕事、妻は家庭であるべき」かどうか、という「社会的価値観」を問う設問に対して「そう思う」「ややそう思う」と肯定的に回答した男女合計の割合が多いエリア順にランキングを作成した(図表1)。
【図表1】自分だけでなく一般的にも「夫が外で働き、妻が家を守る」べきだ:そう思う男女計比率(多い順)
四捨五入して4割の男女が「夫は仕事、妻は家庭であるべき」と考えている「女性が家庭に入ることが理想(男性が1馬力で頑張る家庭が理想)」エリアは福岡県、山口県、宮城県、奈良県、長崎県が5ということになる。
 
データからわかるのは、上位5エリアのうち4エリアが西日本に集中している。この西日本優勢はこれを上位10エリアに拡大してみても、うち8エリアが西日本、と状況はかわらない。

特に九州は「妻は家庭」エリア支持の5強に2県がランクインしている。全国平均以上の値の上位20位まででみても、九州7県のうち宮崎県と鹿児島県を除く5県がランクインしているため、九州は特に「妻は家庭」エリア支持率が強いエリアとなっているといえるだろう。

データからは専業主婦希望の女性、専業主婦と家庭を持ちたい男性は西日本、特に九州がオススメといえるのかもしれない。

ちなみに図表データを下位から見ると、例えば43位の沖縄県1は「妻は家庭」支持が3割をきっており、「一家の経済的大黒柱でありたい」男性が選ぶにはあまりおすすめできなさそうなエリア、とみることができる。
 
1 沖縄県の合計特殊出生率は、2016年2.0で全国トップである。

夫は仕事、妻は家庭であるべき男女データからわかること:ストレスフリーな結婚生活には居住地選びも視野に

図表からは居住エリアによっても2人の新生活のストレスが異なってくることがうかがわれる。

自分1人の価値観を変えるだけでも大変だが、周囲の環境に漂う「機運」まで変えるとなるとこれは確率的にもっと難しくなってくる。環境をおりなす変数が多数存在しているからである。
 
ただし、図表からは「夫は仕事、妻は家庭」と思わない人が全エリアで割合的には優勢であることも読み取れる。

これがあるエリアでは6割、あるエリアでは3割、であるならば相当慎重に居住地を考えねばならないだろう。「この程度の差だから気にしない」か「自分の育ったところより専業主婦、あるいは、働く妻への理解がなさそうだから転居はやめておく」かは、個人(カップルそれぞれ)の選択である。
 
「一生に一度のことだから、慎重に決めたい」と思いつつ、「正確な情報を持たずに覚悟なく」行動をしてしまっていないか、「行動の根拠となり得るデータをもとに」考える。
 
人生において大切な目標を「ただの夢」に終わらせず、「こんなはずではなかった」をより減らしつつ好きな人と目標を達成していくために、とても大切なことである。
 
 
次号も「夫は仕事、妻は家庭」価値観に関するデータをご紹介する予定です。
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生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

経歴
  • プロフィール
    1995年:日本生命保険相互会社 入社
    1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向

    ・【総務省統計局】「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
    ・【こども家庭庁】令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員(2023年度)
    ※都道府県委員職は就任順
    ・【富山県】富山県「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
    ・【富山県】富山県「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
    ・【三重県】三重県「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年~)
    ・【石川県】石川県「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
    ・【高知県】高知県「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年~)
    ・【東京商工会議所】東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
    ・【主催研究会】地方女性活性化研究会(2020年~)
    ・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府男女共同参画局】「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府委託事業】「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
    ・【内閣府】「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~)
    ・【内閣府】地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)
    ・【内閣府特命担当大臣主宰】「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
    ・【富山県】富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員(2022年~)
    ・【長野県】伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般(2020年~2021年)
    ・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー(2021年~)
    ・【愛媛県松山市「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会】結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)
    ・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータアドバイザー会議委員(2020年度~)
    ・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータ活用研究会委員(2016年度~2019年度)
    ・【中外製薬株式会社】ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会 委員(2020年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)

    日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
    日本労務学会 会員
    日本性差医学・医療学会 会員
    日本保険学会 会員
    性差医療情報ネットワーク 会員
    JADPメンタル心理カウンセラー
    JADP上級心理カウンセラー

(2017年12月25日「研究員の眼」)

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