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- 米タイム誌が選ぶ「今年の人」-誰もが包摂される「共生社会」の実現へ
米タイム誌の「今年の人」が始まった1927年は、「Man of the Year」だったそうだが、女性も対象になることから1999年以降は「Person of the Year」に改称された。今年のように特定の個人ではなく、大きな社会的影響を与えた人々などが選ばれることもある。今回のタイム誌の表紙には、ハリウッドの有名女優など5人の女性とひとりの匿名女性の右腕が写っている。その匿名女性の右腕は、今後も社会変革をもたらすだろう人たちのさまざまな声が続くことを連想させるものだ。
セクハラやパワハラ、アカハラなどのハラスメントには、力のある者が弱者をいじめるという共通した権力社会の構図がある。女性が被害者、男性が加害者というケースが多数だが、女性の経営者や管理職が増え、女性の上司による女性や男性の部下に対するハラスメントが生じる可能性がないとは言えない。痴漢被害も女性に限らず、全国の都道府県の迷惑防止条例は保護対象を男性まで拡大しており、様々なハラスメントの加害者と被害者の性別を一概に特定することはできない。
近年、JRや私鉄の列車に設けられている「女性専用車両」の多くは、小学生以下の男の子、身体の不自由な男性や介助する男性も利用でき、「Women Only」という表示は適切だろうか。かつての車内の高齢者優先席「シルバーシート」は、妊婦、ケガ人、乳幼児連れなどの優先席「プライオリティシート」に変更された。最近では同性婚を認める国も増え、「性」の多様化が進み、LGBTなど性的少数者への理解も深まっている。高齢者も個人差が大きく、年齢でひと括りにすることはできない時代だ。
昔の中学の英語の授業で、「議長」は「chairman」と習ったが、今日の国際会議などでは「chair person」が使われている。2014年にサッカーJリーグの浦和レッズのサポーターが、「JAPANESE ONLY」の横断幕を掲げ、無観客試合のペナルティを課された事件があった。様々な社会のパラダイムシフトがあっても、人種、年齢、性別などによる「差別」や「排除」があってはならない。全ての人の人権が尊重され、少数派の声が真摯に受け止められ、誰もが包摂される「共生社会」の実現が求められている。
(参考) 研究員の眼『“Japanese Only”と“Women Only”~「区別」を「差別」にしないために』(2014年4月14日)
研究員の眼『LGBTと人権意識~「違い」を「差別」にしないために』(2014年12月15日)
土堤内 昭雄
研究・専門分野
(2017年12月19日「研究員の眼」)
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