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- “Japanese Only”と“Women Only”-「区別」を「差別」にしないために
コラム
2014年04月14日
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今年3月、埼玉スタジアムで行われた浦和レッズ対サガン鳥栖の試合で、浦和レッズのホーム側のゴール裏入場ゲート上に“JAPANESE ONLY”という横断幕が掲げられた。それが試合終了まで撤去されることはなく、事態を重くみた日本サッカー協会は、浦和レッズに対して3月23日のホームゲームを無観客試合とする処分を下した。スポーツの世界において、人種差別的な発言や行為に対して厳しく臨む姿勢を示したものだ。
私は通勤時に地下鉄やJRなどの公共交通機関を使っているが、そのうち一車両は「女性専用車」になっており、窓には“WOMEN ONLY”と書いたステッカーが貼ってある。それを見る度に何かモヤモヤしたものを感じる。「女性専用車」は車内の痴漢行為を防止する目的で設けられたものだが、痴漢被害に苦しむ女性の恐怖や屈辱をなくすために、他に有効な方法はないものだろうか。
かつて車内には高齢者優先席「シルバーシート」があった。近年では妊娠中の人やケガをしている人、小さな子どもづれなど移動制約のある人の優先席「プライオリティシート」に変わった。「女性専用車」も体の不自由な人やその介助者の男性などは乗車できると書かれているのだが、“WOMEN ONLY”と表示されていては利用し辛いのは確かだ。また、最近では男性が痴漢被害にあうことも視野に入れ、全国すべての都道府県の「迷惑防止条例」でも、保護対象を男性まで拡げているのである。
このような状況の中、「女性専用車」や“WOMEN ONLY”について、今後どのように考えてゆけばいいのだろう。私は、多くの公衆の中を“WOMEN ONLY”と書いたステッカーをつけた電車が走ることは、国際社会において、とても恥ずかしいことだと思う。かつて台湾では、「女性専用車」が数ヶ月で廃止になったと聞く。日本は痴漢を防止するために、このような手段を講じないと問題解決できない社会なのか。“JAPANESE ONLY”という横断幕を不当だと思う人々が、なぜ“WOMEN ONLY”という車体ステッカーに違和感を覚えないのか。本当に「女性専用車」は、本質的な問題解決手段になるのだろうか。
高齢者も個人差が大きくなり、年齢でひと括りにすることはできない。同性婚を認める国も増えるなど「性」の多様化も進んでいる。人種はもちろん、年齢や性別による「区別」を「差別」にしないために、すべての人の「人権尊重」という観点から、社会制度づくりを再考することが必要ではないだろうか。私はこれまでも国や地方自治体の男女共同参画社会づくりに関わってきた。今後も男女が共に活きる共生社会を創るためにどうすればよいか、皆さんの忌憚のないご意見を聞かせていただきたいと思う。
私は通勤時に地下鉄やJRなどの公共交通機関を使っているが、そのうち一車両は「女性専用車」になっており、窓には“WOMEN ONLY”と書いたステッカーが貼ってある。それを見る度に何かモヤモヤしたものを感じる。「女性専用車」は車内の痴漢行為を防止する目的で設けられたものだが、痴漢被害に苦しむ女性の恐怖や屈辱をなくすために、他に有効な方法はないものだろうか。
かつて車内には高齢者優先席「シルバーシート」があった。近年では妊娠中の人やケガをしている人、小さな子どもづれなど移動制約のある人の優先席「プライオリティシート」に変わった。「女性専用車」も体の不自由な人やその介助者の男性などは乗車できると書かれているのだが、“WOMEN ONLY”と表示されていては利用し辛いのは確かだ。また、最近では男性が痴漢被害にあうことも視野に入れ、全国すべての都道府県の「迷惑防止条例」でも、保護対象を男性まで拡げているのである。
このような状況の中、「女性専用車」や“WOMEN ONLY”について、今後どのように考えてゆけばいいのだろう。私は、多くの公衆の中を“WOMEN ONLY”と書いたステッカーをつけた電車が走ることは、国際社会において、とても恥ずかしいことだと思う。かつて台湾では、「女性専用車」が数ヶ月で廃止になったと聞く。日本は痴漢を防止するために、このような手段を講じないと問題解決できない社会なのか。“JAPANESE ONLY”という横断幕を不当だと思う人々が、なぜ“WOMEN ONLY”という車体ステッカーに違和感を覚えないのか。本当に「女性専用車」は、本質的な問題解決手段になるのだろうか。
高齢者も個人差が大きくなり、年齢でひと括りにすることはできない。同性婚を認める国も増えるなど「性」の多様化も進んでいる。人種はもちろん、年齢や性別による「区別」を「差別」にしないために、すべての人の「人権尊重」という観点から、社会制度づくりを再考することが必要ではないだろうか。私はこれまでも国や地方自治体の男女共同参画社会づくりに関わってきた。今後も男女が共に活きる共生社会を創るためにどうすればよいか、皆さんの忌憚のないご意見を聞かせていただきたいと思う。
(2014年04月14日「研究員の眼」)
土堤内 昭雄
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