2017年12月04日

2018年はどんな年? 金融市場のテーマと展望~金融市場の動き(12月号)

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
  1. 2017年のこれまでの市場の動きは「円高・大幅な株高」となった。ドル円では先々の米利上げが緩やかに留まるとの観測が浸透しドル買いが抑制された一方、株価には世界経済の回復が大きな追い風になった。ドル高抑制に働いた米利上げ観測の停滞も適温相場を演出し、米株価上昇を通じて日本株の上昇圧力となった。日銀の大規模なETF買入れも日本株の押し上げに働いた。ただし、地政学リスク等の緊迫化はたびたび市場の動揺を引き起こした。今年の市場を総括すると、「楽観ときどき警戒」という地合いであった。
     
  2. それでは、来年2018年は金融市場にとってどのような年になるのだろうか?来年のスケジュールを確認すると、国内材料では大きな政策変更や波乱が想定しづらいため、海外情勢に大きく左右される展開になりそうだ。米国については米景気・物価、税制改正の行方、中国については緩やかな景気減速に留まるか?欧州については政治の安定が維持できるか?地政学リスクについては北朝鮮と中東情勢がさらに緊迫化するか?がテーマとなる。国内材料では、春闘、自民党総裁選、日銀の政策変更に注目だ。
     
  3. メインシナリオとしては、円安ドル高・株価上昇に向かうと予想。米税制改正の最終形や成立時期は流動的ながら、米経済の追い風になると見ている。米経済の回復と物価持ち直しを受けて利上げ観測が高まり、円安ドル高・日本株上昇の圧力になるだろう。中国経済の大幅な減速は回避される可能性が高い。一方、地政学リスク、特に北朝鮮情勢は予断を許さず、トレンドに影響を与えるとまでは見ていないが、緊迫化する場面では円高・株安に振れるだろう。国内では今年よりは賃上げが進むものの、物価上昇もあって実質賃金の低迷が続きそうだ。景気はやや減速し、株価の上値を抑制するとみている。
     
  4. ただし、下振れリスクも枚挙に暇がないだけに、楽観はできない。
2018年の主なスケジュール(予定)
■目次

1.トピック:2018年はどんな年?金融市場のテーマと展望
  ・2017年の振り返り・・・世界経済回復+地政学リスク緊迫化
  ・2018年はどんな年?
2.日銀金融政策(11月):政策調整の可能性に注目が集まる
  ・(日銀)現状維持(開催なし)
3.金融市場(11月)の振り返りと当面の予想
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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