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- 法人企業統計17年7-9月期-増益率鈍化は特殊要因の剥落が主因、企業収益は絶好調を維持
2017年12月01日
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1.増益率大幅鈍化も、実態は二桁増益が継続
製造業は世界経済の回復や円安基調に伴う輸出の増加などから売上高が前年比3.9%(4-6月期:同4.8%)と3四半期連続で増加したことに加え、売上高経常利益率が16年7-9月期の5.0%から7.0%へと大きく改善したことが大幅増益につながった。売上高経常利益率を要因分解すると、人件費要因、変動費要因、人件費要因、金融費用要因のいずれも利益率の押し上げに寄与した。人件費は前年比1.9%の増加となったが、売上高の伸びを大きく下回っているため、売上高人件費率が低下し利益率改善の一因となった。
一方、非製造業は個人消費を中心とした国内需要がやや低調だったため、売上高が前年比5.2%(4-6月期:7.4%)と前期から伸びが鈍化し、売上高経常利益率が16年7-9月期の5.3%から4.6%へと悪化した。ただし、利益率の悪化は金融費用の特殊要因の剥落によって利益率が前年差▲1.0ポイント押し下げられたことによるもので、金融費用要因を除いた利益率は改善を続けている。
一方、非製造業は個人消費を中心とした国内需要がやや低調だったため、売上高が前年比5.2%(4-6月期:7.4%)と前期から伸びが鈍化し、売上高経常利益率が16年7-9月期の5.3%から4.6%へと悪化した。ただし、利益率の悪化は金融費用の特殊要因の剥落によって利益率が前年差▲1.0ポイント押し下げられたことによるもので、金融費用要因を除いた利益率は改善を続けている。
2.製造業の経常利益(季節調整値)は過去最高を更新
経常利益の内訳を業種別に見ると、製造業は、鉄鋼(前年比135.5%)、生産用機械(同141.1%)が前年同期から倍増するなど、ほとんどの業種が前年比二桁以上の大幅増益となった。一方、非製造業は、卸売・小売業は前年比36.8%と4四半期連続の二桁増益となったが、サービス業が前年比▲51.2%の大幅減益となったことが非製造業の経常利益を大きく押し下げた。
ただし、サービス業の大幅減益は前述したとおり、純粋持株会社の経常利益が特殊要因により16年7-9月期に前年比109.9%の急増となった裏が出たもので、実態として収益が大きく悪化しているわけではない。サービス業の本業の利益を表す営業利益は前年比10.4%(4-6月期:同0.5%)と前期から伸びを大きく高めている。
なお、サービス業のうち純粋持株会社の経常利益は子会社からの受取配当の急増を主因として16年7-9月期に前年比858.9%となったが、17年7-9月期はその反動により同▲83.1%となった。
ただし、サービス業の大幅減益は前述したとおり、純粋持株会社の経常利益が特殊要因により16年7-9月期に前年比109.9%の急増となった裏が出たもので、実態として収益が大きく悪化しているわけではない。サービス業の本業の利益を表す営業利益は前年比10.4%(4-6月期:同0.5%)と前期から伸びを大きく高めている。
なお、サービス業のうち純粋持株会社の経常利益は子会社からの受取配当の急増を主因として16年7-9月期に前年比858.9%となったが、17年7-9月期はその反動により同▲83.1%となった。
3.設備投資は伸びを高めるが、投資スタンスは依然慎重
設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比4.2%と4四半期連続で増加し、4-6月期の同1.5%から伸びを高めた。非製造業は前年比5.9%(4-6月期:同6.9%)と伸びが鈍化したが、製造業が前年比1.4%(4-6月期:同▲7.6%)と2四半期ぶりの増加となった。
季節調整済の設備投資(ソフトウェアを除く)は前期比1.0%(4-6月期:同▲2.0%)と2四半期ぶりに増加した。製造業(4-6月期:前期比▲3.7%→7-9月期:同0.5%)、非製造業(4-6月期:前期比▲1.2%→7-9月期:同1.3%)ともに増加に転じた。
設備投資は前期から伸びを高めたが、企業収益の好調さに比べれば低調で、企業の投資スタンスは慎重なままだ。企業の設備投資意欲を反映する「設備投資/キャッシュフロー比率」は低水準の推移が続いているが、企業収益が大幅に増加する中で設備投資の伸びが限定的にとどまっていることから、16年度入り後はさらに水準を切り下げている。
企業の期待成長率が低水準にとどまる中では、企業の設備投資意欲が大きく高まり、キャッシュフローに対する設備投資の水準を大きく引き上げることは考えにくい。先行きについても、企業収益に比べ設備投資の回復ペースは緩やかにとどまる可能性が高いだろう。
季節調整済の設備投資(ソフトウェアを除く)は前期比1.0%(4-6月期:同▲2.0%)と2四半期ぶりに増加した。製造業(4-6月期:前期比▲3.7%→7-9月期:同0.5%)、非製造業(4-6月期:前期比▲1.2%→7-9月期:同1.3%)ともに増加に転じた。
設備投資は前期から伸びを高めたが、企業収益の好調さに比べれば低調で、企業の投資スタンスは慎重なままだ。企業の設備投資意欲を反映する「設備投資/キャッシュフロー比率」は低水準の推移が続いているが、企業収益が大幅に増加する中で設備投資の伸びが限定的にとどまっていることから、16年度入り後はさらに水準を切り下げている。
企業の期待成長率が低水準にとどまる中では、企業の設備投資意欲が大きく高まり、キャッシュフローに対する設備投資の水準を大きく引き上げることは考えにくい。先行きについても、企業収益に比べ設備投資の回復ペースは緩やかにとどまる可能性が高いだろう。
4.7-9月期・GDP2次速報は小幅上方修正を予想
本日の法人企業統計の結果等を受けて、12/8公表予定の17年7-9月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.4%(前期比年率1.5%)となり、1次速報の前期比0.3%(前期比年率1.4%)から若干上方修正されると予測する。

また、民間在庫変動は1次速報で仮置きとなっていた原材料在庫、仕掛品在庫に法人企業統計の結果が反映され、1次速報の前期比・寄与度0.2%から同0.3%へと若干上方修正されると予想する。その他の需要項目では、公的固定資本形成は9月の建設総合統計の結果が反映され、1次速報の前期比▲2.5%から同▲2.9%へと下方修正されるだろう。
なお、12/8の17年7-9月期GDP2次速報では、16年度の年次推計値が合わせて公表され、四半期の計数は17年1-3月期までが速報値から年次推計値に改定される。また、民間消費、設備投資については、速報推計における需要側推計値と供給側推計値の加重平均のウェイトの見直しが行われる。17年7-9月期の成長率は、法人企業統計を中心とした基礎統計の追加に加え、16年度の年次推計に伴う遡及改定、推計方法変更の影響を受けるため、不確定要素が多いことを念頭に置いておく必要がある。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2017年12月01日「経済・金融フラッシュ」)
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03-3512-1836
経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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