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1――高騰するビットコイン
仮想通貨は高騰しているが、本来の目的である送金や支払への利用よりは、将来の値上がりを期待した投機の場として活発に利用されているというのが現状だ。日米欧が続けてきた超金融緩和政策が仮想通貨の価格高騰に拍車を掛けていることは間違いないだろう。米国が緩やかながら利上げを続け、ECB(欧州中央銀行)や英中銀が超金融緩和からの脱却姿勢を強めていけば、どこかで現在のようなバブル的な価格上昇が反転下落する恐れも大きい。
2――分裂・増殖する仮想通貨
ある取引所のWEBには、ビットコインが円や米ドルといった普通の通貨との違いとして、「ビットコインには、発行を司る組織や流通を管理する組織が存在しない」「どこの国も、企業も、ビットコインの発行・流通には関与していない」と書いてある。しかし、ビットコインが分裂を繰り返しているのは、取引量が拡大したことで送金に時間がかかるようになり、その対応方法についてビットコインのシステムを事実上牛耳っている人達の意見がまとまらなかったからだ。一連の分裂騒ぎを見れば分かるように、明らかにシステムの中心にはビットコインの技術的な規格を管理している人達がいる。政府の関与を嫌う人達は、政府や中央銀行が関与していないことを非常に重要視する。しかし、その行方に全く関与できない多くの人たちを考えれば、自分達が全く関与できないところで全てが決まっていくという仕組みが望ましいとは思えない。
1 coinmarketcap.com(https://coinmarketcap.com/)に、実際に取引されている仮想通貨としてリストアップされているものは、2017年11月28日現在で1326あり、その時価総額は3121億ドル(約34.7兆円)だった
3――既存市場を揺るがす恐れも
一つの国の中で複数の通貨が取引に活発に利用されるということはまずない。国連に加盟している国の数は193で、従来型の通貨とみなされているものの数は200に満たない。2009年から現在までの短期間に生まれた千種類を超える仮想通貨が全て生き残るとはとても考えられず、多くの仮想通貨はいずれ淘汰されて消えて無くなり、無価値になってしまうはずだ。競争の結果淘汰された仮想通貨を大量に保有していた投資家が大きな損害を被ることも起こるだろう。仮想通貨がもっと活発に支払や送金に利用されるようになって取引量が急速に拡大していくと、より新しい規格で高速で大量の取引ができる仮想通貨に利用がシフトしていく可能性もある。現在最も時価総額の大きなビットコインが、このまま生き残るという保証は無い。
ビットコインなどの仮想通貨を支えているブロックチェーンと呼ばれる技術が革新的で、通貨以外の多くの分野での利用が期待できる非常に有望なものであることは多くの人が認めている。しかし、国や中央銀行が関与しない仮想通貨というものがどこまで成長するのかは未知数だ。そもそも中央銀行が生まれた背景などから筆者が懐疑的であるということは既に(「注目集めるビットコイン」2014年2月http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=41363?site=nli)述べたとおりである。ブロックチェーン技術の発展にブレーキをかけることは避けるべきだが、仮想通貨の価格急落が既存金融市場を揺るがすという事態には十分な警戒が必要である。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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櫨(はじ) 浩一 (はじ こういち)
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(2017年11月30日「エコノミストの眼」)
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