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中国経済見通し~成長率は18年6.5%、19年6.2%と鈍化するものの心配は御無用!

三尾 幸吉郎
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4.輸出の動向

18年以降の輸出動向を予想すると、世界経済の持続的回復や「一帯一路」の沿線地域への影響力拡大がプラス要因となるものの、国内生産の製造コストが上昇した中で、製造拠点を後発新興国へ移転する動きは外資系企業ばかりでなく中国国内の企業でも盛んなため、引き続き輸出を抑制するだろう。従って、輸出の伸びは小幅に留まり、欧米経済の勢いが落ちる19年にはマイナス寄与に転じると予想している。
5.金融の動向
15年に入っても不動産開発投資の減速には歯止めが掛からず、加えて過剰生産設備を抱えた製造業の投資も1桁台まで減速、景気下ぶれ懸念が高まった。そして、15年6月には株価が急落するとともに、中国人民銀行が基準金利の引き下げを追加実施したことで米中金利差が縮小、15年8月には人民元が切り下げられて“人民元ショック”に繋がっていった。16年に入ると年明け早々に再び株価が急落、この時期には不動産開発投資が上向きつつあったものの、過剰生産設備を抱えた製造業の投資が1桁台前半まで減速、依然として景気下ぶれ懸念が高かったため、中国人民銀行は金融緩和環境を維持した。これを追い風に住宅価格は上昇の勢いを増し16年7月には前回高値を超えた。そして、景気の持ち直し傾向が鮮明となった16年秋には深圳市や上海市など多くの地方政府が住宅購入規制を強化、中国人民銀行は商業銀行17行の幹部および融資担当者などを招集して住宅ローンの管理強化を要請、中国銀行業監督管理委員会(銀監会)も不動産融資を巡るリスク管理を強化した。16年12月に開催された中央経済工作会議では「住宅は住むためのものであって、投機のためのものではない」として不動産市場の平穏で健全な発展を促進する方針を打ち出した。
17年3月に開催された全国人民代表大会(全人代、国会に相当)では「穏健・中立」な金融政策を実施するとし、16年の「穏健」よりも引き締め方向に軸足を移した。そして、17年1月下旬以降、中国人民銀行はリバースレポ(7日物)や常設流動性ファシリティなどの短期金利を2回に渡り引き上げた。全人代閉幕後も「四限(購入制限、融資制限、価格制限、販売制限)」と呼ばれる住宅規制の導入・強化に動く地方政府が増えた。また、17年7月に開催された17年下期の経済運営方針を討議する中国共産党の中央政治局会議では、「安定を維持」としつつも「三去一降一補(過剰な生産能力・住宅在庫・債務の解消、企業コストの低減、脆弱部分の補強)」や「ゾンビ企業の処理」に取り組む方針を示すとともに、金融面では金融監督管理の強化や不動産市場の安定に取り組むことが強調された。そして17年10月に開催された共産党大会でも、この経緯に沿った報告がなされた。以上を踏まえると、中国政府(含む中国人民銀行)の金融政策は、景気重視からその副作用(住宅バブルやレバレッジ拡大など)抑制へ重点が移行したと考えられる。従って、近い将来想定される米利上げに際しては、中国も金融を引き締め方向に調整する可能性がある。
6.中国経済の見通し
中国経済の最大のリスクは“住宅バブル”にあると考えている。住宅バブルが崩壊すれば、金融システムが不安定化する恐れがあるからである。そもそも中国では、過剰設備・過剰債務問題を解消すべくゾンビ企業の淘汰を進めており、不良債権は増加傾向にある2。それに加えて、16年に急増した個人の住宅ローンまで返済が滞るようだと、銀行が抱える不良債権は急増する恐れがある。
中国の住宅価格は、巨大都市(北京や上海など)では急騰してバブル懸念が高まったものの、過剰在庫を抱えた地方都市では低迷していた。そこで、中国政府(含む中国人民銀行)は巨大都市では前述の「四限」で急騰に歯止めを掛ける一方、地方都市に配慮し全国一律で引き締め効果がでる利上げは見送ってきた。しかし、ここもと巨大都市の住宅価格上昇が地方都市に波及、地方都市の住宅価格は概ね底打ちした。従って、基準金利を引き上げる環境は整ったと考えられる。このまま「四限」と基準金利の引き上げで、住宅バブルのソフトランディングに成功するというのがメインシナリオである。但し、行き過ぎた金融引き締めでオーバーキルとなる可能性も否定しきれない。

2 不良債権の現状に関しては「図表でみる中国経済(不良債権編)」基礎研レター2016-07-15を参照
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2017年11月24日「Weekly エコノミスト・レター」)
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