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「パワーカップル」世帯の動向(4)-パワーカップルの高額消費、「時間がない」を解決する消費に期待

生活研究部 上席研究員 久我 尚子
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1――はじめに
本稿では、前稿と同様に共働き世帯の妻の収入を三区分に分けて、日常生活における情報源やお金をかけたいものを見ることで、妻の収入による消費者としての違いを確認する。また、最後に、パワーカップルの増加で拡大する可能性のある消費領域を考察したい。
2――妻の年収区分別の日常生活における情報源の違い~年収によらずテレビやニュースサイト、新聞が多いが、パワーカップル妻では専門領域に特化した情報源が多い
1 データはいずれも前稿同様、弊社実施の調査データ。詳細は前稿参照。
3――妻の年収三区分別の日常生活の中で今後(も)お金をかけていきたい先~年収によらず最も多いのは国内旅行、パワーカップル妻では海外旅行や外食、自動車などの高額消費が多い
なお、共働き妻全体と比べてパワーカップル妻で多いものは、「海外旅行」や「外食(グルメ)」、「国内旅行」、「その他の自分の趣味」、「自己啓発」、「ローン返済」、「自動車・バイク」であり、比較的高額を要する消費領域が多い。
一方、全体と比べてパワーカップル妻で少ないものは、「子どもの教育」や「貯蓄」、「健康・リラックス」である。子どもの教育費や貯蓄が比較的少ない背景には、「パワーカップル世帯の動向(2)」で見た通り、パワーカップル妻はライフステージが第一子大学入学や末子独立、50歳代が多く、教育費がかかったり、将来への貯蓄に励む時期を過ぎている層も多いことが影響しているのだろう。
4――おわりに~パワーカップルには「高額消費」と共働きの「時間がない」を解決する消費の拡大が期待
共働き世帯では仕事と家事・育児で「時間がない」世帯が多い。共働き世帯が増える中では「時間がない」ことを解決する消費が活性化するだろう。「時間がない」ことを解決するには、時間を短縮し効率的に家事等を進めるか、家事や育児を代行(アウトソーシング)してもらうかということになる。
例えば、時短・効率系の商品・サービスとしては、洗濯乾燥機や食洗機、ロボット掃除機などの自動家電(代行とも言えるだろうが)やカット野菜、半調理済みの食材の入った料理キット、風呂や窓掃除など掃除目的ごとに適した素材で出来た使い捨ての紙シートなどの時短家事商品があげられ、これらのニーズの高まりが見込まれる。さらに、同じ時間内に二つ以上のことを平行してできるサービスのニーズもあるだろう(美容院+ネイルサロンなど)。そして、場所や時間を選ばないインターネット通販やオンライン系サービス(英会話、カウンセリング等)などの利用もますます増えるだろう。
また、アウトソーシング系には、家事代行やベビーシッターに加え、子どもの習い事関連のサービスがあげられる。働く親は平日に子どもの習い事の送迎をすることが難しいため、現在でも人気が高いようだが、保育園や学童保育クラブに習い事が併設された施設や習い事送迎タクシーなどのニーズが更に強まるだろう。
消費力のあるパワーカップル世帯の増加によっては、これら共働き世帯の「時間がない」を解決する消費の更なる拡大に加えて、海外旅行や外食、自動車の購入などの高額消費も見込まれる。
一方で、これまでにいくつかのレポートで述べてきた通り、年齢が若いほど経済不安が強く、貯蓄性向が高まる傾向もある。パワーカップルをはじめとした共働き世帯の消費を活性化するためには、ニーズにあう商品・サービスを充実させるとともに、社会保障制度の持続可能性を担保することや可処分所得の引き上げ等により、現役世代の経済不安を緩和させることが必要だ。
(2017年11月07日「基礎研レター」)

03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
久我 尚子のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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2025/06/06 | 家計消費の動向(単身世帯の比較:~2025年3月)-節約余地が小さく、二人以上世帯と比べて弱い消費抑制傾向 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
2025/06/06 | 家計消費の動向-物価高の中で模索される生活防衛と暮らしの充足 | 久我 尚子 | 基礎研マンスリー |
2025/05/28 | インバウンド消費の動向(2025年1-3月期)-四半期初の1千万人越え、2025年の消費額は10兆円が視野 | 久我 尚子 | 基礎研レポート |
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