2017年11月02日

不動の日銀、次の見どころは?~金融市場の動き(11月号)

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
  1. 昨年9月以降、日銀金融政策は現状維持が続いており、市場で大きく材料視されることも無くなった。ただし、今後1年程度を見据えた場合、注目点は数多く存在する。
     
  2. 政策面で特に注目されるのは「長期金利目標の引き上げ、ETF買入れ減額はあるか?」という点だ。長期金利誘導目標は、「ゼロ%程度」で据え置かれているが、今後は米利上げ継続に伴う金利上昇圧力が高まることが予想される。さらに、超低金利に伴う副作用への警戒も高まりつつある。物価上昇率もプラスを維持するとみられることから、来年には誘導目標が引き上げられるとの観測もある。筆者の予想としては、よほど急速な円安が進むか、銀行収益等への副作用が増大しない限り、明確な目標の引き上げは実施されないと見ている。ただし、誘導目標の許容レンジ引き上げは十分有り得る。「ゼロ%程度」という目標は、範囲が明示されているわけではない。金利上昇局面で指値オペを見送るなどして、市場に許容範囲の上限拡大を織り込ませる方法を採ると予想している。
     
  3. ETF買入れの動向も注目される。現在のETF保有額は日銀の自己資本の2倍に達している。株価が順調に上昇しているなかでその必要性も薄れていると考えられ、近い将来、買入れペース減額に向かう可能性は十分ある。減額の有無に加えて、減額の際の方法も注目されるが、単純な減額は株価への悪影響が危惧されるため、メドに格下げしたうえで「未達でも問題ない」とのスタンスに変更する可能性が高いと見ている。
     
  4. 体制面では、日銀正副総裁人事が注目される。来年2月にかけて人事が本格化する見通しだ。金融緩和に前向きな人物が選ばれることは規定路線だが、緩和スタンスの強弱や緩和策の理想形は人によって多少差がある。大方の予想に反して、現執行部メンバー以外から総裁に選ばれた場合は、現行政策の継続性に不透明感が発生することになる。
展望レポート物価上昇率見通しの変遷
■目次

1.トピック:不動の日銀、次の見どころは?
  ・物価上昇率は2%に向かうか?
  ・政策目標の変更はあるか?
  ・金融緩和の強化はあるか?
  ・長期金利目標の引き上げ、ETF買入れ減額はあるか?
  ・日銀正副総裁人事はどうなるか?
2.日銀金融政策(10月):来年度にかけての物価見通しを下方修正
  ・(日銀)現状維持
3.金融市場(10月)の振り返りと当面の予想
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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