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教育格差を考える-親心と格差の悩ましい関係
基礎研REPORT(冊子版)11月号

櫨(はじ) 浩一
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1―息子も出世する
日本について姓を使った調査もされており、旧士族や旧華族の珍しい姓が、医学研究者や法律家、学者などで異常に高い頻度で見つかることを発見した。明治維新や第二次世界大戦後の改革で、日本は比較的社会階層間の移動は活発だとされてきたが、従来考えられていたよりも移動は少ないという1。
1 Gregory Clark (2014) Princeton University Press, “The Son Also Rises : the surnames andt he history of social mobility” (有名なヘミングウェイの小説「陽はまた昇る」The Sun Also Risesのもじりである)
2―教育を通じた格差の拡大
米国の大学入学者の選抜では高校での学校生活全体が評価されるので、日本の大学入試よりも公平・公正だと言われることもあるが、実態は家庭環境が大きく影響しているようだ。
米国の有名大学の多くは私立であるためもあって、入学者の選抜では、両親や親族がその大学の同窓生だったり、多額の寄付をしたりすることが合否を決める大きな要素になっているという指摘もある。願書に記載する特別な経験ができるように親が努力することや、客観的なテストであるSAT(大学進学適性試験)でも試験の準備を手伝うなど、親の経済力や家庭環境の差が合否に大きく影響するという。
3―結果の平等と機会の平等
しかし、大学の入学試験のように全員が同じ問題を解くことにすれば、誰にも機会が平等に与えられているように見えるが、真の機会の平等を実現することは見かけほど簡単なことではない。家庭環境の差によって大学入学試験に対してどれくらいの準備ができるかには大きな差があるからだ。大学入試に有利な高校・中学、さらに進んで競争は小学校や幼稚園のお受験にまで及んでいる。
4―親心と格差の悩ましい関係
子供の幸福を願うのは誰しも同じだが、どの程度教育を重要と考えるかは人それぞれだ。子供に学校以外での教育を施すことが成績の差に繋がるといった問題を解決するために、社会が全ての子供に同じようなレベルの教育を提供することは無理だろう。ありきたりの方策ではあるが、学校の先生が教育に力を注げる環境を改善するなど、まずは誰もが必要と認めてきた義務教育の充実にもう少しお金を使うというところからはじめるのが妥当ではないか。
(2017年11月08日「基礎研マンスリー」)
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