- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- >
- 証券市場 >
- 株式市場の展望と投資戦略-日経平均は2万2000円を無理なく達成へ
2017年10月19日
文字サイズ
- 小
- 中
- 大
4――当面の重要なリスク要因と投資戦略
1|2大リスク要因は「北朝鮮」と「米国株の急落」
前述のように向こう半年程度を見通せば株価の先高感が強いものの、年度末まで一本調子で値上がりすることはないだろう。一時的に円高・株安となるリスク要因は少なくないからだ。
日本株にとっての2大リスク要因は「北朝鮮」と「米国株の急落」と考える。北朝鮮については、本当に軍事衝突になると考えている人は少ないだろう。だが、北朝鮮リスク自体が無くなったわけでもなければ、軽減されたわけでもない。ここ数週間は北朝鮮が具体的な挑発行動を取っていないため北朝鮮リスクに対する警戒感が和らいだだけで、いつ再燃するか予断を許さない状況が続く。むしろ、いずれ確実に再燃すると思っておいた方が良いだろう。
特に警戒されるのは12月17日の金正日(前総書記)の命日だ。というのも、前総書記は「朝鮮半島を核武装せよ」という遺言を残しているそうだ。その心は、核を保有していれば米軍などに空爆されずに済むうえ、外交上の交渉を有利に進められるという狙いがあるのだろう。息子(金正恩)は父の教えを忠実に実行していると考えれば、北朝鮮が核を放棄する可能性は低い。むしろ、今後も折に触れて核を保有していること、そして長距離ミサイルで米国をも攻撃できることを世界中にアピールすることになろう。その有力候補が12月17日というわけだ。
一方、上昇を続ける米国株は割高感が否めない。米国企業の業績改善が見込まれているとはいえ、将来1年間の予想利益に基づくPERは18.0倍だ(S&P500)。日本(TOPIX)の14.3倍、欧州(STOXX600)の15.1倍と比べても高すぎる水準といえよう。背景には言うまでもなく米国景気の好調さもあるが、米国の金融政策が株式市場に優しいことも挙げられる。米FRBは金融政策の正常化に向かっているものの、正常化のペースは株価に悪影響を及ぼさない程度のゆっくりとしたものになるだろうと期待されているからだ。
いわば米株式市場は「心地よい適温相場が続く」とタカをくくっている状態だが、次期FRB議長の人事を巡って転機が訪れるかもしれない。近いうちに決まるとされる次期議長が利上げに積極的なタカ派であれば、市場から資金を吸い上げるペースの拡大と米景気の腰折れを懸念して、米国株は急落する可能性がある。次期議長が実際は市場に優しい人物であっても、大事なのは「市場がどう受け止めるか」であるし、これまでの株価上昇で十分に利益が出ている投資家が絶好の“売り時”とみなすかもしれない。米国株が急落すれば、当然ながら日本株も煽りを受ける。いくら日本株の先高感が強いといっても、米国株急落の影響は避けられないだろう。
前述のように向こう半年程度を見通せば株価の先高感が強いものの、年度末まで一本調子で値上がりすることはないだろう。一時的に円高・株安となるリスク要因は少なくないからだ。
日本株にとっての2大リスク要因は「北朝鮮」と「米国株の急落」と考える。北朝鮮については、本当に軍事衝突になると考えている人は少ないだろう。だが、北朝鮮リスク自体が無くなったわけでもなければ、軽減されたわけでもない。ここ数週間は北朝鮮が具体的な挑発行動を取っていないため北朝鮮リスクに対する警戒感が和らいだだけで、いつ再燃するか予断を許さない状況が続く。むしろ、いずれ確実に再燃すると思っておいた方が良いだろう。
特に警戒されるのは12月17日の金正日(前総書記)の命日だ。というのも、前総書記は「朝鮮半島を核武装せよ」という遺言を残しているそうだ。その心は、核を保有していれば米軍などに空爆されずに済むうえ、外交上の交渉を有利に進められるという狙いがあるのだろう。息子(金正恩)は父の教えを忠実に実行していると考えれば、北朝鮮が核を放棄する可能性は低い。むしろ、今後も折に触れて核を保有していること、そして長距離ミサイルで米国をも攻撃できることを世界中にアピールすることになろう。その有力候補が12月17日というわけだ。
一方、上昇を続ける米国株は割高感が否めない。米国企業の業績改善が見込まれているとはいえ、将来1年間の予想利益に基づくPERは18.0倍だ(S&P500)。日本(TOPIX)の14.3倍、欧州(STOXX600)の15.1倍と比べても高すぎる水準といえよう。背景には言うまでもなく米国景気の好調さもあるが、米国の金融政策が株式市場に優しいことも挙げられる。米FRBは金融政策の正常化に向かっているものの、正常化のペースは株価に悪影響を及ぼさない程度のゆっくりとしたものになるだろうと期待されているからだ。
いわば米株式市場は「心地よい適温相場が続く」とタカをくくっている状態だが、次期FRB議長の人事を巡って転機が訪れるかもしれない。近いうちに決まるとされる次期議長が利上げに積極的なタカ派であれば、市場から資金を吸い上げるペースの拡大と米景気の腰折れを懸念して、米国株は急落する可能性がある。次期議長が実際は市場に優しい人物であっても、大事なのは「市場がどう受け止めるか」であるし、これまでの株価上昇で十分に利益が出ている投資家が絶好の“売り時”とみなすかもしれない。米国株が急落すれば、当然ながら日本株も煽りを受ける。いくら日本株の先高感が強いといっても、米国株急落の影響は避けられないだろう。
2|株価下落の要因を見極めて、基本は「下がったら買い」
問題は、北朝鮮リスクや米国株急落リスクが顕在化したときに、日本株の投資家がどう対応するべきかで、最も重要なポイントは1つと考える。
仮に北朝鮮のミサイルが日本の上空を通過(日本の東側の公海上に落下)したり、北朝鮮国内で核実験を実施して日経平均が下落した場合は「買い」で対応すれば良いだろう。なぜなら、ミサイル通過や自国内での核実験が原因で日本企業の業績が悪化するとは考えられない。つまり日経平均の適正水準(EPS=1株利益)は変わらないので、市場心理の悪化(PERの低下)で株価が下がったことになる。この場合はPERの低下は一時的と考えられるので、下がったところで買えば“株価の戻り”で利益を狙うことができるはずだ。
米国株の急落が原因の場合も同様に考えれば良いだろう。すなわち、米国株が急落すると、グローバルな投資家が保有する日本株を早めに売却したり、ニュースを知って「とりあえず売ろう」という投資家が増えることが予想される。しかし、これも単なる市場心理の悪化(PERの低下)に過ぎないので、やはり「下がったら買い」と考える。
ただし、本質的な理由で日本株が下落した場合は別の話だ。考えたくないが、たとえば北朝鮮が自暴自棄を起こして(1)グアム方面にミサイル発射、(2)米国や国連軍と軍事衝突、(3)日本の領土を攻撃するなどのケースだ。(2)や(3)のような直接的な軍事行動が無くても、グアム方面に発射したらステージが変わるかもしれない。米国の出方が分からなくなるので、完全に下げ止まるまでは手を出さない方が無難だろう。
米国株についても、急落の原因が単に「金融政策スタンスが変わるかもしれない」という心理的な市場の反応でなく「米景気の腰折れ」の場合は日本企業の業績にマイナスの影響が及ぶ可能性が高まるので注意が必要だ。
問題は、北朝鮮リスクや米国株急落リスクが顕在化したときに、日本株の投資家がどう対応するべきかで、最も重要なポイントは1つと考える。
仮に北朝鮮のミサイルが日本の上空を通過(日本の東側の公海上に落下)したり、北朝鮮国内で核実験を実施して日経平均が下落した場合は「買い」で対応すれば良いだろう。なぜなら、ミサイル通過や自国内での核実験が原因で日本企業の業績が悪化するとは考えられない。つまり日経平均の適正水準(EPS=1株利益)は変わらないので、市場心理の悪化(PERの低下)で株価が下がったことになる。この場合はPERの低下は一時的と考えられるので、下がったところで買えば“株価の戻り”で利益を狙うことができるはずだ。
米国株の急落が原因の場合も同様に考えれば良いだろう。すなわち、米国株が急落すると、グローバルな投資家が保有する日本株を早めに売却したり、ニュースを知って「とりあえず売ろう」という投資家が増えることが予想される。しかし、これも単なる市場心理の悪化(PERの低下)に過ぎないので、やはり「下がったら買い」と考える。
ただし、本質的な理由で日本株が下落した場合は別の話だ。考えたくないが、たとえば北朝鮮が自暴自棄を起こして(1)グアム方面にミサイル発射、(2)米国や国連軍と軍事衝突、(3)日本の領土を攻撃するなどのケースだ。(2)や(3)のような直接的な軍事行動が無くても、グアム方面に発射したらステージが変わるかもしれない。米国の出方が分からなくなるので、完全に下げ止まるまでは手を出さない方が無難だろう。
米国株についても、急落の原因が単に「金融政策スタンスが変わるかもしれない」という心理的な市場の反応でなく「米景気の腰折れ」の場合は日本企業の業績にマイナスの影響が及ぶ可能性が高まるので注意が必要だ。
(2017年10月19日「基礎研レポート」)
このレポートの関連カテゴリ

03-3512-1852
経歴
- 【職歴】
1993年 日本生命保険相互会社入社
1999年 (株)ニッセイ基礎研究所へ
2023年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会認定アナリスト
井出 真吾のレポート
日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
---|---|---|---|
2025/01/09 | 日経平均4万円回復は? | 井出 真吾 | 基礎研マンスリー |
2024/12/23 | 日経平均4万円回復は? | 井出 真吾 | 研究員の眼 |
2024/11/06 | 「選挙は買い」は本当か | 井出 真吾 | ニッセイ年金ストラテジー |
2024/08/07 | 新NISAスタートから半年 理想を追ったら資産が半分に!?-長期投資で大失敗しないために | 井出 真吾 | 基礎研マンスリー |
新着記事
-
2025年05月02日
金利がある世界での資本コスト -
2025年05月02日
保険型投資商品等の利回りは、良好だったが(~2023 欧州)-4年通算ではインフレ率より低い。(EIOPAの報告書の紹介) -
2025年05月02日
曲線にはどんな種類があって、どう社会に役立っているのか(その11)-螺旋と渦巻の実例- -
2025年05月02日
ネットでの誹謗中傷-ネット上における許されない発言とは? -
2025年05月02日
雇用関連統計25年3月-失業率、有効求人倍率ともに横ばい圏内の動きが続く
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2025年04月02日
News Release
-
2024年11月27日
News Release
-
2024年07月01日
News Release
【株式市場の展望と投資戦略-日経平均は2万2000円を無理なく達成へ】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
株式市場の展望と投資戦略-日経平均は2万2000円を無理なく達成へのレポート Topへ