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- 世界の見え方が一変するガラクタたち-札幌国際芸術祭2017
テーマは「芸術祭ってなんだ?」。全国で乱立気味の芸術祭に対して、ゲストディレクターの大友良英が大きな疑問を投げかけた格好だ。彼はNHKの朝ドラ「あまちゃん」(2013年放送)のテーマソングで一躍有名になったが、ノイズミュージックの先駆者、第一人者として国際的に活躍しているアーティストだ。「参加する前と後で世界の見え方が一変するくらいの、そんな強烈な場を自分たちの手で作り出すこと」が彼の考える「祭り」である。
またサブテーマには「がらくたの星座たち」が掲げられ、「自分たちが捨ててきたものに向き合いつつ未来を発見する」ような作品が選ばれている。これは、メイン会場のひとつとなっている「モエレ沼公園」がゴミ処理場だったことと関連している。この公園をデザインしたのは世界的な彫刻家イサム・ノグチだ。彼は公園のデザインに際して「人間が傷つけた土地をアートで再生する。それは僕の仕事です」という言葉を残しており、それが今回の芸術祭の発想の原点となっている。
テーマを象徴する作品のひとつがモエレ沼公園のガラスのピラミッドに設置された大友と青山泰知、伊藤隆之による《without records》である。今は使われなくなった「ガラクタ」のポータブル・レコードプレーヤーを100台以上使った作品だ。作品タイトルのとおりレコードはないが、コンピュータ制御によって不規則にターンテーブルが回転して「音」を発し、全体でノイズミュージックを演奏する、という作品である。
その作品と対話するように、3層の吹き抜け空間に設置されているのは、松井紫朗の不定形のバルーン状の彫刻作品《climbing time / falling time》である。その黄色い巨大な物体は中に入ることが可能で、観客はそこでも《without records》に出会うことになる。
札幌は、1990年に故バーンスタイの提唱で始まった「パシフィック・ミュージック・フェスティバル」、2007年スタートの「サッポロ・シティ・ジャズフェスティバル」、26回を数える「YOSAKOIソーラン祭り」、2000本のショートフィルムが集まる「札幌国際短編映画祭」、劇場文化を札幌に根付かせようという「札幌演劇シーズン」などなど、文化的なイベントは目白押しだが、そこに札幌国際芸術祭が加わることで、札幌の文化的魅力はさらに奥行きを増したことは間違いないだろう。
残された会期はわずかだが、「現代アートは難解だ」と思われる方も「世界の見え方が一変するぐらいのガラクタ」に出会える札幌に出かけてみてはどうだろうか。
札幌国際芸術祭2017
http://siaf.jp/
吉本 光宏 (よしもと みつひろ)
研究・専門分野
(2017年09月20日「研究員の眼」)
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