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EIOPAがソルベンシーIIレビューに関する第1の助言セットについてのCPを公表(1)-欧州委員会に対する助言内容-
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(1) 欧州委員会からの助言要求内容
ソルベンシーIIはリスクベースの枠組みであり、特に一定のリスク軽減技術の効果を考慮している。
EIOPAは以下のことを求められる。
・リスク軽減技術、特に組込デリバティブ及び長寿リスク移転、に関する最近の市場動向についての情報を提供する。
・リスク軽減技術の認識の枠組みが、これらの最近の市場動向を適切にカバーしているかどうかを評価する。
・必要に応じて、この枠組みの更新を提案する。
(2)EIOPAの助言
EIOPAは、保険会社が新たなリスク軽減契約を締結し、その契約を(完全又は部分的に)解消するか、又はヘッジポジションの変動を反映するために相殺契約を締結する「エクスポージャー調整」について、例えば、以下の考え方を明確化している。
・リスク軽減技術の週1回のエクスポージャー調整は、SCR標準式におけるリスク軽減技術の認識を妨げてはならない。
・あらかじめ定義された例外的なエクスポージャー調整を補完する可能性があるべきである。
・SCR標準式計算で認識される取引所で取引される先物及びその他の金融商品に対しては、少なくとも月次契約を使用しなければならない。
・取引所で取引されていない金融商品については、契約開始時の満期は少なくとも1ヶ月でなければならない。
・再保険契約又は特別目的ビークルの開始時の満期は、少なくとも3ヶ月でなければならない。
さらには、SCRに違反している再保険会社との再保険の認識に関する取扱いの考え方を示している。
ローリングヘッジ
317.以下、「エクスポージャー調整」という用語は、保険会社が新たなリスク軽減契約を締結し、その契約を(完全又は部分的に)解消するか、又はヘッジポジションの変動を反映するために相殺契約を締結する状況を意味する(例えば、より多くの株式Xが購入されたため、株式Xに対する追加の短期の先物契約を結ぶこと)。
318.委任規則第211条及び第212条に規定されているリスク軽減技術の週1回のエクスポージャー調整は、SCR標準式におけるリスク軽減技術の認識を妨げてはならない。
319.また、あらかじめ定義された例外的なエクスポージャー調整を補完する可能性があるべきである(例えば、為替レートの5%を超える日々の変化の場合)。
320. SCR標準式計算で認識される取引所で取引される先物及びその他の金融商品に対しては、少なくとも月次契約を使用しなければならない。
321.取引所で取引されていない金融商品については、契約開始時の満期は少なくとも1ヶ月でなければならない。
322.再保険契約又は特別目的ビークルの開始時の満期は、少なくとも3ヶ月でなければならない。
323.委任規則第211条及び第212条に含まれるリスク軽減手法については、異なる満期の契約に変更しても、第320項から第322項に記載されている満期に関する要件が満たされている限り、SCR標準式における認識を妨げてはならない。 委任規則第2条第2項(3)(現実的な再建計画)
324.会社は、SCR標準式の計算において、以下に規定されている期間に対するさらなる条件なしに、委任規則第211条第3項に規定された減額要因を用いてSCRに違反している再保険会社との再保険を認識することが認められるべきである。MCRに違反した場合には、何らの認識も認められない。
325.第326項及び第327項に規定されているさらなる制限に従うことを条件に、認識はSCR違反が開示されてから最長で6ヶ月間認められるべきである。
326.再保険会社がSCRを再び遵守していることが第325項で述べられている期間の終了前に明らかな場合、当該規定はもはや適用されず、再保険は完全に再認識される。
327. 第325項で言及された期間が終了する前に、再保険会社が現実的な再建計画を提出しなかったか、又はSCR違反発生後6ヶ月以内に遵守を回復できないことが明らかになった場合、再保険は認識されるべきでない。
328.遵守不履行の開示後の遅くとも6ヶ月で、SCR違反が発生した後6ヶ月以内に遵守が回復したのかどうかが明確になる。SCRへの遵守が回復した場合、特別な規則は必要ない。それ以外の場合は、再保険は認識されない。
329.再保険会社がSCR違反の日付を開示し、この日付が開示日前にある場合には、第325項で定義されている部分認識の期間が短縮されるべきかどうかはさらに検討される。
(1) 欧州委員会からの助言要求内容
ルックスルー・アプローチは現在、関連会社への投資には適用されていない。
EIOPAは以下のことを求められる。
・保険会社及び再保険会社が投資ビークルとして使用する関連事業に関する情報を提供する。
・どのような条件の下で、そのような会社にルックスルー・アプローチを拡張するのが適切なのかを評価する。
(2)EIOPAの助言
「投資ビークル」への投資については、「形式よりも実質」の原則が適用されるべきとの考え方に基づき、ルックスルー・アプローチの適用は、一定の条件を満たす「投資関連会社」にまで拡大すべきであり、これは、より低いSCRを決定する可能性があるかどうかにかかわらず、必須であるべきである、としている。
374.実質的に「投資ファンド」である「関連会社」(すなわち「投資ビークル」)への投資については、「形式よりも実質」の原則が適用されるべきである。ルックスルー・アプローチはリスクをより適切に把握すべきである。
375.したがって、ルックスルー・アプローチの適用は、「投資関連会社」にまで拡大すべきである。「投資関連会社」は、(ソルベンシーII指令第212条(1)(b)に定義されているように)以下の条件を満たす関連会社として定義されるべきである。
・その目的は、(親)保険会社に代わって資産を保有していること。
・定義された(正確な)投資命令に従い、投資活動に関連する保険会社の運営を支援する。
・親会社のために投資する以外の事業を営むことはない(純粋な投資事業体)。
376.「投資関連会社」へのルックスルー・アプローチの適用は、より低いSCRを決定する可能性があるかどうかにかかわらず、必須であるべきである。これは、原資産に起因するSCRが株式リスクチャージを適用して得られるSCRよりも低い場合に発生する可能性がある。そのような場合、企業はよりリスクに敏感なルックスルー・アプローチを適用すべきである。
例:ルックスルー・アプローチは、契約上のファンド又は変動資本を有する投資会社(SICAV) の形で、オープンエンドな集団投資スキームに適用されるべきである。
(2017年08月21日「基礎研レポート」)
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