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- 2017・2018年度経済見通し(17年8月)
2017年08月15日
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2. 実質成長率は2017年度1.8%、2018年度1.1%を予想
(消費回復の持続性には不安)
2017年4-6月期は国内民間需要の柱である民間消費、設備投資がともに高い伸びとなったが、実質雇用者所得の伸びが鈍化するなど消費を取り巻く環境はむしろ厳しくなっており、消費回復の持続性には不安が残る。民間消費は2017年7-9月期以降、前期比でほぼ横ばいの動きが続く可能性が高い。名目賃金が伸び悩む中で物価の上昇ペースが加速した場合には、実質購買力の低下を通じて消費が下振れるリスクが高まるだろう。一方、設備投資は過去最高水準を更新する好調な企業収益を背景に、先行きも堅調に推移することが予想される。
2018年度は企業部門の改善が家計部門に波及することが期待される。具体的には2017年度の企業収益の改善や物価上昇を受けて春闘賃上げ率が3年ぶりに前年を上回ることから名目賃金の伸びが高まり、民間消費の回復は所得の増加を伴ったものとなろう。ただし、企業収益の改善ペース鈍化に伴い設備投資の伸びが頭打ちとなること、公的固定資本形成の伸びが大きく鈍化することなどから、2018年度の成長率は2017年度から低下することが予想される。
実質GDP成長率は2017年度が1.8%、2018年度が1.1%と予想する。
2017年4-6月期は国内民間需要の柱である民間消費、設備投資がともに高い伸びとなったが、実質雇用者所得の伸びが鈍化するなど消費を取り巻く環境はむしろ厳しくなっており、消費回復の持続性には不安が残る。民間消費は2017年7-9月期以降、前期比でほぼ横ばいの動きが続く可能性が高い。名目賃金が伸び悩む中で物価の上昇ペースが加速した場合には、実質購買力の低下を通じて消費が下振れるリスクが高まるだろう。一方、設備投資は過去最高水準を更新する好調な企業収益を背景に、先行きも堅調に推移することが予想される。
2018年度は企業部門の改善が家計部門に波及することが期待される。具体的には2017年度の企業収益の改善や物価上昇を受けて春闘賃上げ率が3年ぶりに前年を上回ることから名目賃金の伸びが高まり、民間消費の回復は所得の増加を伴ったものとなろう。ただし、企業収益の改善ペース鈍化に伴い設備投資の伸びが頭打ちとなること、公的固定資本形成の伸びが大きく鈍化することなどから、2018年度の成長率は2017年度から低下することが予想される。
実質GDP成長率は2017年度が1.8%、2018年度が1.1%と予想する。
(需要項目別の見通し)
実質GDP成長率の予想を需要項目別にみると、民間消費は2016年度の前年比0.7%の後、2017年度が同1.3%、2018年度が同0.8%と予想する。
厚生労働省が8/4に公表した「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」によれば、2017年の賃上げ率は2.11%となり、2016年を0.03ポイント下回った。賃金総額の約4分の3を占める所定内給与は春闘賃上げ率が前年を下回ったことを受けて、正社員を中心に低迷が続く公算が大きい。
実質GDP成長率の予想を需要項目別にみると、民間消費は2016年度の前年比0.7%の後、2017年度が同1.3%、2018年度が同0.8%と予想する。
厚生労働省が8/4に公表した「民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」によれば、2017年の賃上げ率は2.11%となり、2016年を0.03ポイント下回った。賃金総額の約4分の3を占める所定内給与は春闘賃上げ率が前年を下回ったことを受けて、正社員を中心に低迷が続く公算が大きい。
企業の人手不足感が引き続き強いことから雇用者数は増加を続けるものの、名目賃金が伸び悩む中で物価が上昇することから、2017年度の実質雇用者報酬は2016年度の前年比2.2%から同1.2%へと伸びが大きく低下するだろう。2018年度は物価上昇率がさらに高まるが、円安や海外経済の回復を追い風とした企業業績の改善、2017年度の物価上昇を受けて名目賃金は所定内給与、特別給与(ボーナス)ともに増加幅が拡大し、実質雇用者報酬は前年比1.5%へと伸びが高まると予想する。民間消費は実質雇用者報酬に連動する形で2017年度中は前期比で横ばい圏の動きを続けた後、2018年度に入ってから徐々に伸びを高めるだろう。
ただし、個人消費の動向を左右するのは雇用者報酬だけでなく、利子、配当などの財産所得、年金などの社会給付の受け取り、社会保障負担などの支払いを加味した可処分所得の動きである。近年、マクロ経済スライドや特例水準の解消によって年金給付額が抑制されてきたこと、年金保険料率の段階的引き上げなどから、家計の可処分所得は雇用者報酬の伸びを下回り続けている。
また、高齢化の進展に伴い消費全体に占める年金生活者の割合が上昇しているが、2016年の消費者物価が前年比▲0.1%となったことを受け、2017年度の年金額は前年度から▲0.1%引き下げられている。消費者物価は上昇に転じており、年金生活者にとっての実質的な手取り額はさらに目減りする。
また、高齢化の進展に伴い消費全体に占める年金生活者の割合が上昇しているが、2016年の消費者物価が前年比▲0.1%となったことを受け、2017年度の年金額は前年度から▲0.1%引き下げられている。消費者物価は上昇に転じており、年金生活者にとっての実質的な手取り額はさらに目減りする。
(2017年08月15日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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