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- 米国経済の見通し-米経済は消費主導の底堅い景気回復持続を予想も、無視できない国内政治リスク
2017年06月09日
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(貿易)6月に発表される不公正貿易に関する報告書に注目
1-3月期の純輸出は、前期の大幅な成長押し下げからほぼ中立に改善したが、輸出入の内訳をみると、輸入が前期比年率+3.8%(前期:+9.0%)と伸びが鈍化したほか、輸出が+5.8%(前期:▲4.5%)と伸びが加速しており、輸出入ともに純輸出の改善方向に働いたことが分かる。
1-3月期の純輸出は、前期の大幅な成長押し下げからほぼ中立に改善したが、輸出入の内訳をみると、輸入が前期比年率+3.8%(前期:+9.0%)と伸びが鈍化したほか、輸出が+5.8%(前期:▲4.5%)と伸びが加速しており、輸出入ともに純輸出の改善方向に働いたことが分かる。

先日発表された4月の貿易収支は、季節調整済みで▲476億ドル(前月:▲453億ドル)の赤字と、前月から赤字幅が拡大した(図表14)。輸出額が前月から▲5億ドル減少する一方、輸入額が+19億ドル増加しており、4-6月期の外需は再び成長率を押し下げるとみられる。
一方、今後の外需を占う上でトランプ政権の通商政策動向が注目される。トランプ大統領は、3月末に貿易赤字の原因となる貿易上の不正行為を特定するための大統領令に署名しており、90日以内の報告書提出を求めている。今月中に発表するとみられる報告書では、国、商品毎に不公正行為によって米国が受けた損害額が提示されるようだ。このため、報告書の内容次第では、特定の国や商品に対して対抗措置を採ってくる可能性があり、貿易収支への影響も含めて注目される。
3.物価・金融政策・長期金利の動向
(物価)エネルギー価格が物価を押し上げ
消費者物価の総合指数(前年同月比)は4月が+2.2%となり、2月につけた+2.7%からは2ヵ月連続で低下した(図表15)。消費者物価は、原油価格の反発に伴い16年7月の+0.8%を底に上昇してきたものの、足元で原油価格が頭打ちとなったことで、エネルギー価格の物価押し上げに陰りがみられる。
消費者物価の総合指数(前年同月比)は4月が+2.2%となり、2月につけた+2.7%からは2ヵ月連続で低下した(図表15)。消費者物価は、原油価格の反発に伴い16年7月の+0.8%を底に上昇してきたものの、足元で原油価格が頭打ちとなったことで、エネルギー価格の物価押し上げに陰りがみられる。

当研究所では、原油価格は、足元(6月7日時点)の45ドル台から17年末に53ドル、18年末に56ドルまで緩やかに上昇すると予想している。これらの原油想定を前提にすると、原油価格は18年末まで前年比での上昇基調が持続することから、当面エネルギー価格が物価を緩やかながら押し上げる状況が続こう。当研究所では消費者物価見通し(前年比)を17年、18年ともに+2.4%と予想している。
(金融政策)年内6月、9月の追加利上げ。12月のバランスシート縮小開始を予想。
6月13-14日に実施されるFOMC会合では、0.25%の追加利上げが確実だ。焦点は足元の雇用増加ベースの鈍化や、インフレ率低下にどのような判断を示すか。また、年後半から開始すると意欲を示しているバランスシート縮小の方針についてどのような議論がされるのか、FOMC会合後のイエレン議長の記者会見が注目される。
6月13-14日に実施されるFOMC会合では、0.25%の追加利上げが確実だ。焦点は足元の雇用増加ベースの鈍化や、インフレ率低下にどのような判断を示すか。また、年後半から開始すると意欲を示しているバランスシート縮小の方針についてどのような議論がされるのか、FOMC会合後のイエレン議長の記者会見が注目される。

一方、金融政策の意思決定において影響が大きいトランプ政権の経済政策については、依然として不透明な状況となっているものの、FOMC参加者の多くはその効果を見通しに含めていないとしており、今回の政策金利見通しに与える影響は限定的だろう。このため、FRBは6月を含めて年内2回の利上げ見通しを維持することが見込まれる。
一方、バランスシートの縮小については、6月FOMCで何らかの方針が示される可能性はあるものの、年後半とみられるバランスシート縮小時期の前倒しについて言及する可能性は低いだろう。FRBには、13年5月にバーナンキ前FRB議長が量的緩和政策の縮小に言及したことをきっかけに、世界的な資本市場の不安定化を招いた苦い経験がある。今回のバランスシートを縮小するための再投資方針の見直しを提示する際に、同様の事態を避けるため、資本市場とのコミュニケーションは慎重に行うだろう。当研究所では、FRBは6月と9月に政策金利を引上げたあと、12月にバランスシートの縮小を開始すると予想する。
(長期金利)18年末にかけて緩やかな上昇を予想
長期金利(10年国債金利)は、11月選挙前の1.8%台から12月には一時2.6%近辺まで上昇した後、足元は2.2%近辺まで低下している(図表17)。原油価格が頭打ちしているほか、選挙後の金利上昇が、トランプ政権の政策に対する期待先行で上げ過ぎていたこともあり、これまでの金利低下に違和感はない。
長期金利(10年国債金利)は、11月選挙前の1.8%台から12月には一時2.6%近辺まで上昇した後、足元は2.2%近辺まで低下している(図表17)。原油価格が頭打ちしているほか、選挙後の金利上昇が、トランプ政権の政策に対する期待先行で上げ過ぎていたこともあり、これまでの金利低下に違和感はない。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
(2017年06月09日「Weekly エコノミスト・レター」)
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経歴
- 【職歴】
1991年 日本生命保険相互会社入社
1999年 NLI International Inc.(米国)
2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
2014年10月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
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