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- インドネシアの生命保険市場-期待の生保新興市場インドネシアの状況-
2017年04月28日
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1――はじめに
2017年5月現在、インドネシアの生保市場には日本の生保4グループ、損保2グループが進出している。インドネシアの生保会社数は2015年末時点で55社だったので、インドネシアの生保会社の9社に1社は日本系という計算になるわけだ。
隣接するオーストラリアや欧米の生保会社はいち早くインドネシア生保市場への参入をすませており、いまやインドネシア最大の生保会社は英国プルデンシャルグループ、第二位会社はドイツアリアンツグループと、外資系生保会社がインドネシア生保市場におけるメジャープレーヤーとなっている。
世界の生保先進各国の有力保険会社が一堂に会している状況は、インドネシア生保市場の将来が明るいとの期待感が強いことを明確に示している。
赤道直下、南北1,800キロ、東西5,100キロの海上に展開する1万3,466の島々(総面積189万平方メートル)に2.55億(世界第4位)の人々が暮らすインドネシアは、面積、人口、総経済規模でアセアン(ASEAN=東南アジア諸国連合)最大の国である。
1人あたりGDPは2010年に3,000ドルを超えた。シンガポールやタイに後れを取ってきた生命保険の普及も、国民生活が豊かになるにつれ進展するはず。
こうした見方から、インドネシアの生保市場としてのポテンシャルを評価する声は高い。そしてあたかも成長が約束された市場であるかのように各国の有力保険会社が進出した。
本レポートでは、そのようなインドネシア生命保険市場のこれまでの成長と現状を概観する。
隣接するオーストラリアや欧米の生保会社はいち早くインドネシア生保市場への参入をすませており、いまやインドネシア最大の生保会社は英国プルデンシャルグループ、第二位会社はドイツアリアンツグループと、外資系生保会社がインドネシア生保市場におけるメジャープレーヤーとなっている。
世界の生保先進各国の有力保険会社が一堂に会している状況は、インドネシア生保市場の将来が明るいとの期待感が強いことを明確に示している。
赤道直下、南北1,800キロ、東西5,100キロの海上に展開する1万3,466の島々(総面積189万平方メートル)に2.55億(世界第4位)の人々が暮らすインドネシアは、面積、人口、総経済規模でアセアン(ASEAN=東南アジア諸国連合)最大の国である。
1人あたりGDPは2010年に3,000ドルを超えた。シンガポールやタイに後れを取ってきた生命保険の普及も、国民生活が豊かになるにつれ進展するはず。
こうした見方から、インドネシアの生保市場としてのポテンシャルを評価する声は高い。そしてあたかも成長が約束された市場であるかのように各国の有力保険会社が進出した。
本レポートでは、そのようなインドネシア生命保険市場のこれまでの成長と現状を概観する。
2――成長するインドネシア生保市場 -インドネシア生保市場の発展段階-
まずは、インドネシア生保市場の発展段階を見てみたい。
1|「人口1人あたり保険料」、「GDPに対する割合」で見たインドネシア生保市場の普及度合い
ここでは、スイス再保険が毎年発表してきた世界の生命保険料に関するデータを使用する。
各国の生命保険料をドル換算したベースでインドネシアの生命保険料が世界全体の生命保険料の何パーセントを占めるか(世界シェア)及びそのシェアが全世界第何位に位置するかを見ると、2000年のインドネシア生保市場の世界シェアは0.05%、世界順位は第38位であった。これが2015年には、世界シェア0.43%、世界順位第29位にまで上昇している。いまだシェアは小さいながら、インドネシアの生保市場は順調に世界での地位を上げてきた。
次のグラフ1は、1999年以降のインドネシアのドル換算ベースの「人口1人あたり生命保険料」と「総生命保険料の対GDP割合」をプロットしたものである。1999年には、「人口1人あたり生命保険料」が5.1ドル、「生命保険料の対GDP割合」が0.8%であったものが、2015年にはそれぞれ42.7ドル、1.3%にまで上昇した。
グラフには、インドネシアの1人当たりGDPが1,000ドル、2,000ドル、3,000ドルを超えた時点を示してある。「1人当たりGDPが○○ドルを超えると生命保険の成長が加速する」という言い方があるが、たしかに、これらは節目としての区切り点を示しているようにも見える。
1|「人口1人あたり保険料」、「GDPに対する割合」で見たインドネシア生保市場の普及度合い
ここでは、スイス再保険が毎年発表してきた世界の生命保険料に関するデータを使用する。
各国の生命保険料をドル換算したベースでインドネシアの生命保険料が世界全体の生命保険料の何パーセントを占めるか(世界シェア)及びそのシェアが全世界第何位に位置するかを見ると、2000年のインドネシア生保市場の世界シェアは0.05%、世界順位は第38位であった。これが2015年には、世界シェア0.43%、世界順位第29位にまで上昇している。いまだシェアは小さいながら、インドネシアの生保市場は順調に世界での地位を上げてきた。
次のグラフ1は、1999年以降のインドネシアのドル換算ベースの「人口1人あたり生命保険料」と「総生命保険料の対GDP割合」をプロットしたものである。1999年には、「人口1人あたり生命保険料」が5.1ドル、「生命保険料の対GDP割合」が0.8%であったものが、2015年にはそれぞれ42.7ドル、1.3%にまで上昇した。
グラフには、インドネシアの1人当たりGDPが1,000ドル、2,000ドル、3,000ドルを超えた時点を示してある。「1人当たりGDPが○○ドルを超えると生命保険の成長が加速する」という言い方があるが、たしかに、これらは節目としての区切り点を示しているようにも見える。
2|アセアン内でのインドネシア生命保険市場のポジション
次の表1は、グラフ1と同じスイス再保険のデータを使って、アセアンの主要国、シンガポール、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナムと、インドネシアの生保市場に関する諸指標を書き出したものである。
これら6ヵ国中、人口が最大のインドネシアは、全体ボリュームとしての総生命保険料でこそシンガポール、タイに次いでアセアン第3位であるが、生命保険普及度合いの尺度である「人口1人あたり生命保険料」では第4位、「生命保険料の対GDP割合」では第5位に沈む。しかも両指標では、シンガポール、マレーシア、タイとの差は大きく、フィリピンと接戦を演じている段階にある。
次の表1は、グラフ1と同じスイス再保険のデータを使って、アセアンの主要国、シンガポール、タイ、マレーシア、フィリピン、ベトナムと、インドネシアの生保市場に関する諸指標を書き出したものである。
これら6ヵ国中、人口が最大のインドネシアは、全体ボリュームとしての総生命保険料でこそシンガポール、タイに次いでアセアン第3位であるが、生命保険普及度合いの尺度である「人口1人あたり生命保険料」では第4位、「生命保険料の対GDP割合」では第5位に沈む。しかも両指標では、シンガポール、マレーシア、タイとの差は大きく、フィリピンと接戦を演じている段階にある。
3――インドネシア生保市場の現状
スイス再保険のデータは、各国比較をするためドル換算して作成されているので為替変動による影響を避けられない。
そこでここからは、インドネシアの通貨であるルピアベースで作成されたデータとして、インドネシアの保険監督当局であるOJK (Otoritas Jasa Keuangan=金融サービス機構)が発表しているデータを使って動きを見ていくこととしたい。
なおOJKは、2013年1月1日に発足した、保険会社を含む全ての金融機関の監督を担当する機構である。
また2017年4月24日現在のルピアの日本円換算は、1兆ルピア=82億6,300万円、1億ルピア=82万6,300円である。
インドネシア生保市場は90年代以降、アジア通貨危機、世界金融危機という2度の大きな危機に見舞われたが、その都度後退しては再び成長軌道に戻り、総じて順調な成長を遂げてきた。
1|生命保険料の増加
次のグラフ2は、2006年から2015年まで10年間のインドネシアの生命保険料につき、金額を棒グラフ、その対前年の伸び率を折れ線グラフで表したものである。
インドネシア生保市場は2006年から2012年まで対前年比2桁の高い伸びを達成し、2006年に27.5兆ルピアであった生命保険料は2012年には4倍弱の107.94兆ルピアにまで拡大した。
しかし2013年に対前年4.9%増と急ブレーキがかかり、2014年には対前年マイナスに落ち込んだ。それが2015年には対前年19.7%増と再び勢いをとりもどし、2013年、2014年の低成長を挽回するとともに、一気に過去最高の水準135兆1300億ルピアとなった。
そこでここからは、インドネシアの通貨であるルピアベースで作成されたデータとして、インドネシアの保険監督当局であるOJK (Otoritas Jasa Keuangan=金融サービス機構)が発表しているデータを使って動きを見ていくこととしたい。
なおOJKは、2013年1月1日に発足した、保険会社を含む全ての金融機関の監督を担当する機構である。
また2017年4月24日現在のルピアの日本円換算は、1兆ルピア=82億6,300万円、1億ルピア=82万6,300円である。
インドネシア生保市場は90年代以降、アジア通貨危機、世界金融危機という2度の大きな危機に見舞われたが、その都度後退しては再び成長軌道に戻り、総じて順調な成長を遂げてきた。
1|生命保険料の増加
次のグラフ2は、2006年から2015年まで10年間のインドネシアの生命保険料につき、金額を棒グラフ、その対前年の伸び率を折れ線グラフで表したものである。
インドネシア生保市場は2006年から2012年まで対前年比2桁の高い伸びを達成し、2006年に27.5兆ルピアであった生命保険料は2012年には4倍弱の107.94兆ルピアにまで拡大した。
しかし2013年に対前年4.9%増と急ブレーキがかかり、2014年には対前年マイナスに落ち込んだ。それが2015年には対前年19.7%増と再び勢いをとりもどし、2013年、2014年の低成長を挽回するとともに、一気に過去最高の水準135兆1300億ルピアとなった。
(2017年04月28日「保険・年金フォーカス」)
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