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コラム
2017年04月11日

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格安旅行会社「てるみくらぶ」(東京・渋谷)が3月27日に経営破綻、東京地裁に自己破産を申請した。3月23日に国際航空運送協会(IATA)への支払が滞り、25日に航空券の発券トラブルが顕在化、26日に観光庁の立ち入り調査が行われた。同社は観光庁に登録された第1種旅行業者で、平成26年9月期から営業損益が大幅な赤字に陥り、昨年9月期には約75億円の債務超過だったとされる。
3月26日時点で海外に滞在する「てるみくらぶ」関連の旅行者は約2,500名、国土交通省は速やかな帰国を呼びかけたが、現地で多大な宿泊費を請求された人もいたようだ。同社の負債額は約151億円、代金支払済みの旅行者は8万人から9万人、旅行代金の負債は約99億円にのぼる。日本旅行業協会の「弁済業務保証金制度」では、最大でも総額1億2千万円程度しか還付されないという。
私は今年1月、「てるみくらぶ」の9月出発分の東欧ツアーを申し込んだ。格安というだけでなく、訪問地や旅程、フライト時間や経由地、滞在ホテルのグレードなど、大手旅行会社の企画と比べても優位性が高かったからだ。また、自由観光をする上で公共交通へのアクセスがよいホテルの選択や、フライトに世界最大の航空機・エアバスA380を使用する予定など、魅力的な内容だった。
今回のツアーは、決して『安かろう、悪かろう』ではなかった。この内容であれば、競合他社より価格が少し高くても参加したい人はかなりいただろう。今や、価格競争だけで勝負する「薄利多売」のビジネスモデルの持続可能性は低い。もし、「てるみくらぶ」が付加価値の高い旅行企画を適正価格で販売する事業戦略に転換していれば、経営破綻しなかったかもしれない。
同社の経営破綻の理由のひとつが過大な広告費だ。多くの主要全国紙に興味を引く全面広告が頻繁に掲載されていた。財務状況を粉飾する一方、ホームページでは申込金の早期振込や現金一括振込の特典をうたい、破産寸前まで新規募集を続けていたことが被害を拡大させた。ツアー申込者の中には、「振り込め詐欺」にだまされたような悔しい思いをしている人も多くいるだろう。
この春、旅行業界を希望して同社に就職予定だった学生も50名以上いたそうだ。「海外旅行」という多くの人に「夢と希望」を与えるはずの企業が、多くの人の「夢と希望」を奪ってしまった。経営環境の把握が甘く、事業の方向性を見誤り、経営資源を有効に活用できず、経営情報の開示を怠った経営者の責任は重い。企業が社会の「公器」として社会的責任を果たすためには、健全に事業を継続することが不可欠だ。旅行業という「夢と希望」を売る企業経営者の「責務」が、厳しく問われなければならない。
3月26日時点で海外に滞在する「てるみくらぶ」関連の旅行者は約2,500名、国土交通省は速やかな帰国を呼びかけたが、現地で多大な宿泊費を請求された人もいたようだ。同社の負債額は約151億円、代金支払済みの旅行者は8万人から9万人、旅行代金の負債は約99億円にのぼる。日本旅行業協会の「弁済業務保証金制度」では、最大でも総額1億2千万円程度しか還付されないという。
私は今年1月、「てるみくらぶ」の9月出発分の東欧ツアーを申し込んだ。格安というだけでなく、訪問地や旅程、フライト時間や経由地、滞在ホテルのグレードなど、大手旅行会社の企画と比べても優位性が高かったからだ。また、自由観光をする上で公共交通へのアクセスがよいホテルの選択や、フライトに世界最大の航空機・エアバスA380を使用する予定など、魅力的な内容だった。
今回のツアーは、決して『安かろう、悪かろう』ではなかった。この内容であれば、競合他社より価格が少し高くても参加したい人はかなりいただろう。今や、価格競争だけで勝負する「薄利多売」のビジネスモデルの持続可能性は低い。もし、「てるみくらぶ」が付加価値の高い旅行企画を適正価格で販売する事業戦略に転換していれば、経営破綻しなかったかもしれない。
同社の経営破綻の理由のひとつが過大な広告費だ。多くの主要全国紙に興味を引く全面広告が頻繁に掲載されていた。財務状況を粉飾する一方、ホームページでは申込金の早期振込や現金一括振込の特典をうたい、破産寸前まで新規募集を続けていたことが被害を拡大させた。ツアー申込者の中には、「振り込め詐欺」にだまされたような悔しい思いをしている人も多くいるだろう。
この春、旅行業界を希望して同社に就職予定だった学生も50名以上いたそうだ。「海外旅行」という多くの人に「夢と希望」を与えるはずの企業が、多くの人の「夢と希望」を奪ってしまった。経営環境の把握が甘く、事業の方向性を見誤り、経営資源を有効に活用できず、経営情報の開示を怠った経営者の責任は重い。企業が社会の「公器」として社会的責任を果たすためには、健全に事業を継続することが不可欠だ。旅行業という「夢と希望」を売る企業経営者の「責務」が、厳しく問われなければならない。
(2017年04月11日「研究員の眼」)
土堤内 昭雄
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