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今年4月29日、群馬県の関越自動車道で高速ツアーバスが防音壁に衝突し、東京ディズニーランドなどに向かう旅行客7人が亡くなるという重大事故が発生した。この事故により高速ツアーバスの安全管理上の問題点が浮かび上がったが、同時にこのような高速ツアーバスが多くの人々にさまざまな形で利用されていることがわかった。確かに東京駅や新宿駅など主要ターミナル駅周辺は、毎晩、高速ツアーバスとその利用者で溢れ返っている。
このような高速ツアーバスの根強い人気の背景には、利用者の需要によって運行を柔軟に対応させることなどによる格安料金の実現がある。また、さまざまな座席タイプや出発地が用意されており、利用者の多様なニーズに合った商品企画が揃っていることもある。しかし、一方で運転手の勤務条件や車両の運行条件など十分な安全対策が講じられず、今回の重大事故も低価格化の中で安全性がおろそかになっていたのではないかとの指摘もある。
「スキーバス」や「テーマパーク直行バス」などとして年間600万人以上が利用しているという高速ツアーバスは、旅行業法に基づくものであり、道路運送法に基づく高速路線バスとは異なる。利用者は乗客ではなく、ツアー参加者という位置づけになる。高速ツアーバスを使うと、週末の夜に地方都市を出発し、休日を首都圏のテーマパークやショッピングセンターで過ごしたり、逆に地方都市で野球やサッカーなどスポーツ観戦を気軽に楽しんだりすることもできる。最近では、商用の出張者や帰省客の利用、東日本大震災では被災地に向かう多くの災害ボランティアが利用している。
このように高速ツアーバスは高速道路網や高速バスといった交通インフラが整った上に、低価格料金が実現したことにより、われわれの暮らしに大きな影響を与えている。今日、インターネットが普及したのも情報インフラの整備とともに誰もが日常的に使える利用料金体系が実現したからだ。仮想の移動手段ともいえるインターネットが発達すればするほど、相対的にリアルな体験価値が高まり、ますます人々の現実の移動性(モビリティ)が求められるようになるのである。
情報通信ネットワークで重要なことはセキュリティ管理であり、高速ツアーバスでは安全運行管理だろう。インターネットの発達と相まって高速ツアーバスが日本人のライフスタイルを大きく変えるとすれば、それは変わるライフスタイルを先取りする魅力ある商品開発とともに、単なる規制強化ではない安全対策情報の開示など、一層きめ細かな安全管理の仕組みの構築でなければならない。
土堤内 昭雄
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