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- 天才数学者ラマヌジャン-「奇蹟がくれた数式」を観て-
コラム
2017年03月21日
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はじめに
「ラマヌジャン」という名前を聞いて、これがインドの有名な数学者であると知っている人は、数学通か相当な物知りである。数学が好きな人にとっては、何とも言えない響きを有しているその名前は、一般の人には何の興味も呼び起こさないものだと思われる。
ラマヌジャンは、「インドの魔術師」と言われ、32歳の若さでこの世を去った夭折の天才数学者である。このラマヌジャンの短い生涯を表した映画作品である「奇蹟がくれた数式」(原題:The Man Who Knew Infinity)が、2016年10月に公開された。この原作は、1991年にロバート・カニーゲル氏によって著された「無限の天才―夭逝の数学者・ラマヌジャン」(田中靖夫氏翻訳)である。
今回は、このラマヌジャンについて、紹介したい。なお、ラマヌジャンについては、藤原正彦氏がその著書「心は孤独な数学者」(新潮社)、「天才の栄光と挫折 数学者列伝」(新潮社)(文春文庫)等で紹介しているので、詳しい内容に興味がある方はこれらの著書を参照していただきたい。
ラマヌジャンは、「インドの魔術師」と言われ、32歳の若さでこの世を去った夭折の天才数学者である。このラマヌジャンの短い生涯を表した映画作品である「奇蹟がくれた数式」(原題:The Man Who Knew Infinity)が、2016年10月に公開された。この原作は、1991年にロバート・カニーゲル氏によって著された「無限の天才―夭逝の数学者・ラマヌジャン」(田中靖夫氏翻訳)である。
今回は、このラマヌジャンについて、紹介したい。なお、ラマヌジャンについては、藤原正彦氏がその著書「心は孤独な数学者」(新潮社)、「天才の栄光と挫折 数学者列伝」(新潮社)(文春文庫)等で紹介しているので、詳しい内容に興味がある方はこれらの著書を参照していただきたい。
ラマヌジャンとは
シュリニヴァーサ・ラマヌジャン(Srinivasa Aiyengar Ramanujan)(1887~1920)は、南インドのタミル・ナードゥ州タンジャーヴール県クンバコナム(Kumbakonam)で生まれ育った。私自身はこの地を訪れたことはないが、世にも稀有な天才を生み出した街として、何とも言えない雰囲気を感じさせてくれる地なのではないかと推察している。できれば一度は訪れたいと思っているが、おそらくかなわぬ夢であろう。
ラマヌジャンは、母親の教育のおかげで敬虔なヒンドゥー教徒であった。カースト制度の最上級のバラモン階級の家庭に生まれたが、豊かな生活を送っていたわけではなかった。
幼い頃から、学業は優秀で、数学に強い関心を有しており、大学に入学したが、数学に没頭するあまり、あまり授業に出席せず、試験に落第して、退学を余儀なくさせられた。その後港湾事務所の事務員の職に就きながら、独自で数学の研究を行い、いくつかの数式をノートに書き留めていった。
彼は、こうした得た自らの研究成果を英国の何人かの教授に送った。その研究がケンブリッジ大学のゴッドフレイ・ハロルド・ハーディ(Godfrey Harold Hardy)教授の目に留まり、英国に招聘されることになる。当時、海外渡航をするということは、バラモンの戒律を破ることになり、カーストから追放され、友人や親戚を失い、社会的に抹殺されることにもなることを意味していたが、周囲の支援もあり、神の特別な許しも得て、ケンブリッジ入りすることになる。
ただし、菜食主義で、バラモン以外の者が料理したものを不浄として口にしないという主義を貫いていたことから、英国では満足な食事をとることができなかった。周囲との付き合いも限られ、不規則な生活を行う中、第一次世界大戦の勃発で野菜等の入手も困難になったこともあり、ついには渡英後3年ほどして、病魔に襲われてしまう。その後インドに戻るが、嫁姑の諍い等の問題も抱える中で、1920年に32歳という若さでこの世を去ることになる。
藤原正彦氏の著書によれば、「ラマヌジャンは、『我々の百倍も頭がよい』という天才ではない。『なぜそんな公式を思い付いたのか見当がつかない』という天才なのである。」ということである。さらには、「数学や自然科学における発見のほとんどすべてには、ある種の論理的必然、歴史的必然がある。だから、『十年か二十年もすれば誰かが発見する』のである。」「アインシュタインの特殊相対性理論は、アインシュタインがいなくとも、二年以内に誰かが発見しただろうと言われる。」「ところがラマヌジャンの公式群に限ると、その大半において必然性が見えない。ということはとりもなおざす、ラマヌジャンがいなかったら、それらは百年近くたった今日でも発見されていない、ということである。」と記されている。
その意味で、ラマヌジャンは、アインシュタインをも超える大天才だったということになる。
ラマヌジャンは、母親の教育のおかげで敬虔なヒンドゥー教徒であった。カースト制度の最上級のバラモン階級の家庭に生まれたが、豊かな生活を送っていたわけではなかった。
幼い頃から、学業は優秀で、数学に強い関心を有しており、大学に入学したが、数学に没頭するあまり、あまり授業に出席せず、試験に落第して、退学を余儀なくさせられた。その後港湾事務所の事務員の職に就きながら、独自で数学の研究を行い、いくつかの数式をノートに書き留めていった。
彼は、こうした得た自らの研究成果を英国の何人かの教授に送った。その研究がケンブリッジ大学のゴッドフレイ・ハロルド・ハーディ(Godfrey Harold Hardy)教授の目に留まり、英国に招聘されることになる。当時、海外渡航をするということは、バラモンの戒律を破ることになり、カーストから追放され、友人や親戚を失い、社会的に抹殺されることにもなることを意味していたが、周囲の支援もあり、神の特別な許しも得て、ケンブリッジ入りすることになる。
ただし、菜食主義で、バラモン以外の者が料理したものを不浄として口にしないという主義を貫いていたことから、英国では満足な食事をとることができなかった。周囲との付き合いも限られ、不規則な生活を行う中、第一次世界大戦の勃発で野菜等の入手も困難になったこともあり、ついには渡英後3年ほどして、病魔に襲われてしまう。その後インドに戻るが、嫁姑の諍い等の問題も抱える中で、1920年に32歳という若さでこの世を去ることになる。
藤原正彦氏の著書によれば、「ラマヌジャンは、『我々の百倍も頭がよい』という天才ではない。『なぜそんな公式を思い付いたのか見当がつかない』という天才なのである。」ということである。さらには、「数学や自然科学における発見のほとんどすべてには、ある種の論理的必然、歴史的必然がある。だから、『十年か二十年もすれば誰かが発見する』のである。」「アインシュタインの特殊相対性理論は、アインシュタインがいなくとも、二年以内に誰かが発見しただろうと言われる。」「ところがラマヌジャンの公式群に限ると、その大半において必然性が見えない。ということはとりもなおざす、ラマヌジャンがいなかったら、それらは百年近くたった今日でも発見されていない、ということである。」と記されている。
その意味で、ラマヌジャンは、アインシュタインをも超える大天才だったということになる。
ラマヌジャンの逸話-タクシー数-
ラマヌジャンにはいくつかの逸話(エピソード)があるが、その中でも最も有名なものは、映画「奇蹟がくれた数式」の中でも取り上げられている「タクシーのナンバープレート」に関するものである。
1918年2月頃、ラマヌジャンは療養所に入っていたが、そこにハーディが見舞いにやってくる。
ハーディが、自分が乗ってきたタクシーのナンバープレート「1729」について、「何の特徴も無いつまらない番号だ。」と述べたのに対して、ラマヌジャンは「とても面白い番号です。1729は2通りの立法数の和として表される最小の数です。」と反論したとのことである。
即ち、1729は、以下のように表現できる。
1729=123(12×12×12)+13(1×1×1)=103(10×10×10)+93(9×9×9)
1から1728までの数字は、このような形で表すことはできない。このエピソードは、ラマヌジャンがいかに数に対する探究心が強かったかを示している。
(注)なお、自然数だけでなく、負の数を含む整数の立法和ということで考えれば、91が最小(絶対値が最小)ということになる。
91=63+(-5)3 =43+33
1918年2月頃、ラマヌジャンは療養所に入っていたが、そこにハーディが見舞いにやってくる。
ハーディが、自分が乗ってきたタクシーのナンバープレート「1729」について、「何の特徴も無いつまらない番号だ。」と述べたのに対して、ラマヌジャンは「とても面白い番号です。1729は2通りの立法数の和として表される最小の数です。」と反論したとのことである。
即ち、1729は、以下のように表現できる。
1729=123(12×12×12)+13(1×1×1)=103(10×10×10)+93(9×9×9)
1から1728までの数字は、このような形で表すことはできない。このエピソードは、ラマヌジャンがいかに数に対する探究心が強かったかを示している。
(注)なお、自然数だけでなく、負の数を含む整数の立法和ということで考えれば、91が最小(絶対値が最小)ということになる。
91=63+(-5)3 =43+33
(2017年03月21日「研究員の眼」)
中村 亮一のレポート
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