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- 初の日米首脳会談:同盟強化で一致、経済対話を新設
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1――はじめに
日米同盟を強化することで一致し、日米の経済関係の強化に向けて、麻生副総理兼財務相とペンス副大統領の下に分野横断的な対話の枠組み「日米経済対話」を設置することで合意した。さらにトランプ大統領の年内訪日も固まった。
首脳会談前、トランプ大統領は、自動車などの貿易不均衡問題を中心とした経済問題や米軍駐留経費などで日本を強く批判していた。そのような発言が会談中に出るのではとの懸念があったが、日米間の具体的な懸案への言及はなかった。緊密な日米関係を維持、深化させる意思が示されたといえる。日本にとっては満額回答に近い会談だったといえるのではないだろうか。
【日米同盟】
・日米同盟はアジア太平洋地域における平和、繁栄及び自由の礎
・日米安全保障条約第5条は尖閣諸島に適用
・関係国に対し、南シナ海における緊張を高め得る行動を避け国際法に従って行動することを求める
・北朝鮮に対し、核や弾道ミサイル計画を放棄し、さらなる挑発行動を行わないよう強く求める
【日米経済関係】
・総理及び大統領は、相互補完的な財政、金融、構造政策という3本の矢のアプローチを用いていくとのコミットメントを再確認
・自由で公正な貿易のルールに基づき、日米間や地域の経済関係を強化する
・日米間の貿易・投資関係の深化と、アジア太平洋地域における貿易、経済成長、高い基準の促進に向けた両国の継続的努力の重要性を確認
・米国が環太平洋経済連携協定(TPP)から離脱した点に留意し、最善の方法を探求。日米で2国間の枠組みに関する議論を行うことや、日本が既存のイニシアチブを基礎として地域レベルの進展を引き続き推進することを含む
【訪日の招待】
・安倍首相はトランプ大統領の本年中の日本公式訪問に招待し、ペンス副大統領の早期の東京訪問を歓迎した。トランプ大統領はこれらの招待を受け入れた
2――日米同盟強化、新経済対話~蜜月を演出
外交面では、共同声明で尖閣諸島が米国の対日防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条の適用範囲であることを明記。「日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する」と盛り込んだ。名指しは避けたものの、中国を念頭に「南シナ海における緊張を高め得る行動を避け、国際法に従って行動することを求める」と明記。「核及び通常戦力の双方による米国の軍事力」との表現で米国が「核の傘」を含め抑止力を提供することも確認された。
(経済:日米経済対話を新設、FTA進展は今後の交渉)
日米の経済協力は、「貿易・投資関係の深化」と「アジア太平洋地域における貿易、経済成長及び高い基準の促進に向けた両国の継続的努力」が重要と確認した。安倍首相は共同記者会見で「日本の高い技術で大統領の成長戦略に貢献し、米国に新しい雇用を生み出せる」と述べた。アメリカ第一主義を掲げ、「一に雇用、二に雇用、三に雇用」と主張するトランプ大統領に呼応している。
今回新たに作られる経済対話では、(1)財政金融などのマクロ経済政策の連携、(2)インフラ、エネルギー、サイバー、宇宙などの協力、(3)2国間貿易の枠組み、の3テーマを取り上げる。ペンス副大統領が早期に東京を訪れ具体的な交渉をスタートする予定だ。
トランプ大統領がTPPの離脱を決めたことで、注目された日米FTAは、共同声明で「日米間で2国間の枠組みに関して議論を行う」と明記されたが、具体的提案が米国からなされなかった。共同声明は日米の貿易・投資関係の強化に向け「最善の方法を探求する。日米2国間の枠組みとともに日本が既存の枠組みを引き続き推進する」としている。
おそらく日米とも2国間FTAを意識はしているが、日本がTPP、RCEPなど既存の枠組みを維持していることに配慮した結果だろう。今後2国間FTAの是非は経済対話などで議論され、重要な焦点となってくるだろう。
(2017年02月13日「基礎研レポート」)
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03-3512-1837
- ・ 1992年 :日本生命保険相互会社
・ 1995年 :ニッセイ基礎研究所へ
・ 2021年から現職
・ 早稲田大学・政治経済学部(2004年度~2006年度・2008年度)、上智大学・経済学部(2006年度~2014年度)非常勤講師を兼務
・ 2015年 参議院予算委員会調査室 客員調査員
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