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東京都心部Aクラスビルのオフィス市況見通し(2017年)-2017年~2023年のオフィス賃料・空室率

竹内 一雅
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4. 今後のAクラスビル新規供給、都区部オフィスワーカー数の見通しと経済見通し
東京都によると、東京都区部および都心5区のオフィスワーカー数は2015年をピークに減少がはじまると予測されている(図表-8)。ただし、東京都や東京圏への人口の転入超過が高水準で続いていることもあり(図表-9)6、当面はオフィスワーカー数の急激な減少はないと考えられる。
5. 東京都心部Aクラスビル市況見通し
東京都心部Aクラスビルの賃料は、今後、賃料の下落局面に入り、2020年Q3期まで下落した後、上昇が始まると予測された(図表-10)。また、Aクラスビルの空室率は、2017年Q4期までほぼ現在と同程度の水準で推移するが、その後、上昇(市況悪化)がはじまり、2020年Q2期をピークに再び下落(改善)に転じる。
今後の賃料の底は2020年Q3期で2016年Q4期と比べ▲18.1%の下落となるが、その後の上昇で2023年Q4期までに同▲5.2%まで回復すると予測された(標準シナリオ)。楽観シナリオでは、2017年Q2期に同+4.7%の上昇となった後に、2020年Q2期には同▲9.3%まで下落し、2023年Q4期に同+4.2%へ上昇、悲観シナリオでは、2020年Q3期に同▲29.3%減まで下落した後に、2023年Q4期には同▲21.3%に回復するという予測結果だった。
標準シナリオにおける2016年Q4期以降の一年ごとの変化率は、2017年から2023年までに、▲3.7%、▲7.5%、▲6.9%、▲0.3%、+2.3%、+5.5%、+6.1%だった。
7 経済見通しは、ニッセイ基礎研究所経済研究部「中期経済見通し(2016~2026年度)」2016.10.14、斎藤太郎「2016~2018年度経済見通し~16年7-9月期GDP2次速報後改定」2016.12.8などを基に今後の実質GDP成長率見通しを設定。
6. おわりに
テナントの移転理由としても「賃料の安いビルに移りたい」が2010年以降、初めて増加するなどオフィスを取り巻く環境が変化しはじめているようだ9(図表-11)。こうした変化は、不動産投資市場における、景況感の見通しにおける楽観的な見方の減少にも反映されているかもしれない(図表-12)。
本稿の推計では、近年と同様のオフィス需給構造が続けば、2018~2020年のオフィスの大量供給期にも、東京オリンピック開催に向けての公共事業や、インバウンド客などの増加もあり、オフィス市況はさほど大きな調整にはならないという結果となった。2021年以降、市況は着実に回復する見通しだが、東京都区部でも2015年をピークにしだいにオフィスワーカー数の減少が予測されているため、中期的にはオフィス需要も減少に直面する可能性が高い。中長期的なオフィス市場の成長のためには、起業支援や成長企業の育成、海外企業の誘致、さらなる高齢者や女性の活用によるオフィスワーカー数の増加、東京における低出生率の改善、外国人を含め多くの人が集まる魅力的な街づくりなどがこれまで以上に重要になると思われる。
8 ここで議論しているのは新規賃料であり、継続賃料は今後も上昇傾向が続くと考えられる。
9 東日本大震災以来、賃料の安さよりも、耐震性などBCPの重視とオフィス集約による業務効率の改善などを目的に、都心の大規模ビルに移転する動きが続いてきた。しかし、すでに多くの大企業は対応を済ませており、BCP等を理由とする移転は一巡しつつある。高い賃料負担力を持つ企業のうち、未移転の企業が少なくなっていることも、今後の大量供給に伴う需給緩和期には賃料引き下げ圧力になる可能性が高い。
(2017年02月08日「不動産投資レポート」)
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