2017年02月02日

【2月米FOMC】予想通り据え置き。次回利上げのヒントはなし

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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1.金融政策の概要:予想通り、政策金利を据え置き、ガイダンス部分の変更なし

米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が1月31-2月1日(現地時間)に開催された。市場の予想通り、FRBは政策金利を据え置いた。

今回発表された声明文では、景気の現状認識について、消費者や企業のセンチメントが改善していることが示されたほか、景気見通しに関する記述と併せて、物価下落要因として前回まで挙げられていたエネルギー価格や輸入物価の下落に関する記述が削除され、物価の評価が上方修正された。一方、ガイダンス部分は、前回から表現の変更はなく、今後の政策金利引き上げ条件や時期に関する言及は無かった。なお、今回会合から投票権をもつ地区連銀総裁が3人入れ替わった。今回の金融政策決定は、新メンバーの全会一致で決定された。

2.金融政策の評価:物価見通しは上方修正されたものの、慎重な金融政策スタンスは維持

政策金利の据え置きは予想通り、声明文のガイダンス部分で次回利上げ時期に関する表現変更がされなかったことも予想通りの結果である。市場の一部には、ガイダンス部分で次回利上げ時期に関する表現が盛り込まれるとの見方もあったようだ。しかしながら、今後の金融政策がトランプ大統領の経済政策運営に大きな影響を受けるとみられる中で、トランプ氏の経済政策の具体的な内容や実施時期について現段階では明確でないため、FRB内で金融政策運営についてのコンセンサスが出来ているとは思えない。このため、市場に対して利上げ時期を示唆するメッセージを出すのは時期尚早だろう。

一方、足元の米経済は、昨年11月の選挙以降の株高や減税などの経済政策への期待から消費者、企業センチメントが改善しており消費や設備投資などに追い風となっている。さらに、原油価格が下げ止まる中で、エネルギー価格が押下げる形での物価下落圧力は相当程度解消されており、物価も緩やかな上昇が見込める状況となってきた。このため、足元の経済状況は追加利上げをサポートしていると判断できる。今後は、トランプ氏の経済政策について、春先の予算編成作業などを通じて徐々に不透明感が払拭されるとみられることから、その進捗状況を見極めた上でFRBは慎重に追加利上げを判断するとみられる。当研究所は、次回利上時期は6月とのこれまでの見方を維持している。

3.声明の概要

(金融政策の方針)
  • FF金利の誘導目標を0.50-0.75%に維持(変更なし)
  • 政府機関債、MBSの償還分はMBSへ再投資(変更なし)
  • 米国債の償還分は米国債へ再投資(変更なし)
  • FF金利の正常化が十分に進展するまでこの方針を続けることを見込む(変更なし)
  • 長期債を高水準で保有し続けることで緩和的な金融環境を維持する(変更なし)
 
(フォワードガイダンス、今後の金融政策見通し)
  • 既に実現した労働市場環境や物価、およびこれらの今後の見通しを考慮して、委員会はFF金利の目標レンジを0.5-0.75%に維持することを決定した(「引き上げ」から「維持」に変更)
  • 金融政策スタンスは依然として緩和的であるため、労働市場環境の幾分かの改善や、物価の2%への上昇を下支えする(変更なし)
  • FF金利の目標レンジに対する将来の調整時期や水準の決定に際して、委員会は経済の現状と見通しを雇用の最大化と2%物価目標に照らして判断する(変更なし)
  • これらの判断に際しては、雇用情勢、インフレ圧力、期待インフレ、金融、海外情勢など幅広い情報を勘案する(変更なし)
  • 現状でインフレ率が2%を下回っている状況に照らして、委員会は実績と物価目標に向けた見通しを注意深くモニターする(変更なし)
  • 委員会は、FF金利の緩やかな上昇のみを正当化するような経済状況の進展を予想しており、暫くの間、中長期的に有効となる水準を下回るとみられる(変更なし)
  • しかしながら、実際のFF金利の経路は、今後入手可能なデータに基づく経済見通しによる(変更なし)
 
(景気判断)
  • 労働市場が引き続き強くなり、経済活動は引き続き緩やかなペースで拡大している(表現を微修正)
  • 雇用は引き続き堅調に増加し、失業率は最近の最低水準に近い(失業率に関して”declined”から”stayed near its recent low”に表現変更)
  • 家計消費は緩やかに増加した(変更なし)
  • 設備投資は引き続き軟調となっている(変更なし)
  • インフレ率は、ここ数四半期上昇したが2%の長期的な目標を下回っている(物価が目標を下回っている理由として前回記述があった”partly reflecting earlier declines in energy prices and in prices of non-energy imports.“を今回削除)
  • 市場が織り込むインフレ率は、依然として低位に留まっている(”have moved up considerably “を削除)
  • ほとんどの調査に基づく長期物価見通しは、全般的に変化に乏しい(”in recent months”を削除)
 
(景気見通し)
  • 委員会は、金融政策スタンスの漸進的な調整により、経済活動は緩やかに拡大し、労働市場の状況が更に強くなり、インフレ率は中期的に2%に上昇すると予測する(物価に関して前回挙げていた、”as the transitory effects of past declines in energy and import prices dissipate and the labor market strengthens further”を削除し、物価について独立していた1文を経済活動、労働市場の見通しを記載した文と統合)
  • 経済見通しに対する短期的なリスクは概ねバランスしている(変更なし)
  • 委員会は、引き続きインフレ動向と世界経済および金融情勢を注視する(変更なし)
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

(2017年02月02日「経済・金融フラッシュ」)

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