- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 経済 >
- 中国経済 >
- 図表でみる中国経済(国際収支編)~資金流出を分析した上で人民元の行方を探る
2017年01月24日
1――下落が続く中国の通貨(人民元)
中国の通貨(人民元)が下落している。人民元レート(対米ドル)の推移を振り返ると、2005年7月21日に中国人民銀行が1米ドル=8.28元から同8.11元へ約2%切り上げて以降、2014年1月14日に1米ドル=6.0412元(スポット・オファー、中国外貨取引センター)の最高値を付けるまで、約8年半に渡って上昇を続けてきた。しかし、その後は約3年に渡って下落基調が続いており、最高値からの下落率は約12%に達した(図表-1)。
人民元レートが下落基調に転じた背景には資金の流れに変化が生じたことがある。経常収支と金融収支(除く準備資産)の推移を見ると、2013年までは経常収支と金融収支(除く準備資産)がともに黒字基調で、ダブルの資金流入となっていた。しかし、その後は輸出の伸びが鈍り経常収支の黒字が一進一退で推移する中で、2014年には金融収支(除く準備資産)が赤字に転じ、2015年には4856億ドルの大幅赤字を計上し、経常収支の黒字を上回る金融収支(除く準備資産)の赤字となって、資金流出が鮮明となった(図表-2)。
そこで、本稿では資金流出の現状を分析した上で、今後の人民元の行方を探ることとしたい。
人民元レートが下落基調に転じた背景には資金の流れに変化が生じたことがある。経常収支と金融収支(除く準備資産)の推移を見ると、2013年までは経常収支と金融収支(除く準備資産)がともに黒字基調で、ダブルの資金流入となっていた。しかし、その後は輸出の伸びが鈍り経常収支の黒字が一進一退で推移する中で、2014年には金融収支(除く準備資産)が赤字に転じ、2015年には4856億ドルの大幅赤字を計上し、経常収支の黒字を上回る金融収支(除く準備資産)の赤字となって、資金流出が鮮明となった(図表-2)。
そこで、本稿では資金流出の現状を分析した上で、今後の人民元の行方を探ることとしたい。
2――国際収支統計でみる資金流出の現状
1|国際収支の概観
まず、国際収支統計で資金流出入の構造を概観してみよう。モノやサービスなどの海外とのやり取りを集計した経常収支の推移を見ると、2013年は1482億ドル黒字、2014年は2774億ドル黒字、2015年は3306億ドル黒字、2016年(1-9月期)は1727億ドル黒字となっている。増減こそあるものの黒字基調を維持、資金面から考えると資金流入が続いている。
まず、国際収支統計で資金流出入の構造を概観してみよう。モノやサービスなどの海外とのやり取りを集計した経常収支の推移を見ると、2013年は1482億ドル黒字、2014年は2774億ドル黒字、2015年は3306億ドル黒字、2016年(1-9月期)は1727億ドル黒字となっている。増減こそあるものの黒字基調を維持、資金面から考えると資金流入が続いている。
次に、直接投資や証券・貸借・預金などの海外とのやり取りを集計した金融収支(除く準備資産)の推移を見ると、2013年までは概ね資金流入となっていたが、2014年は513億ドルの資金流出、2015年は4856億ドルの資金流出、2016年(1-9月期)も3032億ドルの資金流出と、3年連続の資金流出となっている。また、外貨準備の増減などを反映する金融収支(準備資産)は、2014年までは準備資産を積み増したことなどから資金流出(=準備資産残高は増加)となっていたが、2015年には3429億ドルの資金流入に転じ、2016年(1-9月期)も2941億ドルの資金流入と、2年連続で資金流入となっている。
なお、誤差脱漏は、2013年は629億ドルの資金流出、2014年は1083億ドルの資金流出、2015年は1882億ドルの資金流出、2016年(1-9月期)も1633億ドルの資金流出と、使途不明な資金流出が増加している(図表-3)。
なお、誤差脱漏は、2013年は629億ドルの資金流出、2014年は1083億ドルの資金流出、2015年は1882億ドルの資金流出、2016年(1-9月期)も1633億ドルの資金流出と、使途不明な資金流出が増加している(図表-3)。
2|経常収支の動向
経常収支の内訳をみると、貿易収支は2014年が4350億ドル黒字、2015年が5670億ドル黒字と黒字基調が続いている。2016年(1-9月期)も3669億ドル黒字だが、前年同期比で見ると1割減となっている。一方、サービス収支は2013年が1236億ドル赤字、2014年が1724億ドル赤字、2015年が1824億ドル赤字と徐々に赤字が増える傾向にある。2016年(1-9月期)も1830億ドル赤字で、前年同期比では3割弱の増加である(図表-4)。その背景には中国人の海外旅行が急増したことがあり、2016年(1-9月期)の旅行収支は1684億ドルの赤字となった。こうして、貿易黒字が減り、サービス収支の赤字が増えたことで、経常黒字の増加傾向には陰りが見られるようになってきた。
なお、2016年(1-9月期)の第一次所得収支は67億ドル赤字、第二次所得収支は45億ドル赤字と小幅な赤字に留まっている。
経常収支の内訳をみると、貿易収支は2014年が4350億ドル黒字、2015年が5670億ドル黒字と黒字基調が続いている。2016年(1-9月期)も3669億ドル黒字だが、前年同期比で見ると1割減となっている。一方、サービス収支は2013年が1236億ドル赤字、2014年が1724億ドル赤字、2015年が1824億ドル赤字と徐々に赤字が増える傾向にある。2016年(1-9月期)も1830億ドル赤字で、前年同期比では3割弱の増加である(図表-4)。その背景には中国人の海外旅行が急増したことがあり、2016年(1-9月期)の旅行収支は1684億ドルの赤字となった。こうして、貿易黒字が減り、サービス収支の赤字が増えたことで、経常黒字の増加傾向には陰りが見られるようになってきた。
なお、2016年(1-9月期)の第一次所得収支は67億ドル赤字、第二次所得収支は45億ドル赤字と小幅な赤字に留まっている。
このレポートの関連カテゴリ
三尾 幸吉郎
研究・専門分野
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年04月19日
しぶといドル高圧力、一体いつまで続くのか?~マーケット・カルテ5月号 -
2024年04月19日
年金将来見通しの経済前提は、内閣府3シナリオにゼロ成長を追加-2024年夏に公表される将来見通しへの影響 -
2024年04月19日
パワーカップル世帯の動向-2023年で40万世帯、10年で2倍へ増加、子育て世帯が6割 -
2024年04月19日
消費者物価(全国24年3月)-コアCPIは24年度半ばまで2%台後半の伸びが続く見通し -
2024年04月19日
ふるさと納税のデフォルト使途-ふるさと納税の使途は誰が選択しているのか?
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
【図表でみる中国経済(国際収支編)~資金流出を分析した上で人民元の行方を探る】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
図表でみる中国経済(国際収支編)~資金流出を分析した上で人民元の行方を探るのレポート Topへ