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- 最近の人民元と今後の展開(2017年1月号)~トランプ相場の反動と欧州政治に揺れる人民元
2017年01月05日
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- 12月の人民元レート(市場実勢)は米ドルに対して下落、これで10月以降3ヵ月連続の下落である。米国では、2017年以降の利上げペースが加速するとの見方が浮上、これを受けて、米ドルは他通貨に対して全面高の展開となり、人民元も下落した。
- 2017年3月末に向けての人民元(市場実勢)は米ドルに対して弱含みのトレンドが続くと予想している。但し、ここもとの世界情勢を見渡すと、トランプ相場の反動という元高材料と、欧州政治の混乱という元安材料が混在していることから、想定レンジは1米ドル=6.5~7.1元と広めに設定しておきたい。
[ 12月の動き ]
12月の人民元レート(市場実勢)は米ドルに対して下落した。これで10月以降3ヵ月連続の下落である。米国で13-14日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)では1年ぶりに利上げを決定、その後に公表された政策金利見通しでは利上げペースが今後加速することを示唆した。これを受けて、米ドルは他通貨に対して全面高の展開となり、人民元も下落した。なお、12月に公表された景気指標では、中国では持ち直し傾向の継続、米国では緩やかな拡大傾向を確認する結果となった。
市場実勢(スポット・オファー、中国外貨取引センター)の当月高値は1米ドル=6.8814元(12/7)、当月安値は同6.9710元(12/20)、12月末は同6.9470元と前月末比0.7%の元安・ドル高で取引を終えた(図表-1)。他方、基準値は市場実勢とほぼ同様の値動きとなり、当月高値は1米ドル=6.8575元(12/6)、当月安値は同6.9508元(12/16)、12月末は同6.9370元と前月末比0.7%の元安・ドル高となった。なお、日本円が人民元以上に米ドルに対して下落したため、12月末の人民元(対日本円)は100日本円=5.9491元(1元=16.8円)と前月末比2.1%の元高・円安となった(図表-2)。
市場実勢(スポット・オファー、中国外貨取引センター)の当月高値は1米ドル=6.8814元(12/7)、当月安値は同6.9710元(12/20)、12月末は同6.9470元と前月末比0.7%の元安・ドル高で取引を終えた(図表-1)。他方、基準値は市場実勢とほぼ同様の値動きとなり、当月高値は1米ドル=6.8575元(12/6)、当月安値は同6.9508元(12/16)、12月末は同6.9370元と前月末比0.7%の元安・ドル高となった。なお、日本円が人民元以上に米ドルに対して下落したため、12月末の人民元(対日本円)は100日本円=5.9491元(1元=16.8円)と前月末比2.1%の元高・円安となった(図表-2)。
世界通貨の動きを見ると、原油高を受けてロシア(ルーブル)が米ドルに対して前月末比5.8%上昇するなど堅調だったものの、日本円が同2.3%下落、ユーロも同0.6%下落するなど、米国で利上げペースが加速するとの観測を背景に下落した通貨が多かった(図表-3)。なお、前述のとおり人民元は米ドルに対しては下落傾向だが、人民元以上に日本円など他国通貨が米ドルに対して下落する傾向が続いていることから、米ドル以外に対しては上昇傾向となっている(図表-4)。
また、2016年2月以降、中国人民銀行はバスケット構成通貨に対する安定を重視したコントロールを実施、構成通貨の中で米国に次いでシェアの大きい欧州のユーロに対する連動性を強めている。人民元の変動性(ボラティリティ)は依然として相対的に小さいものの、上下変動のタイミングはユーロの動きと一致することが多くなってきた。12月に関してもその傾向は続いていた。
また、2016年2月以降、中国人民銀行はバスケット構成通貨に対する安定を重視したコントロールを実施、構成通貨の中で米国に次いでシェアの大きい欧州のユーロに対する連動性を強めている。人民元の変動性(ボラティリティ)は依然として相対的に小さいものの、上下変動のタイミングはユーロの動きと一致することが多くなってきた。12月に関してもその傾向は続いていた。
[ 今後の展開 ]
さて、2017年3月末に向けての人民元(市場実勢)は米ドルに対して弱含みのトレンドが続くと予想している。但し、ここもとの世界情勢を見渡すと、トランプ相場の反動という元高材料と、欧州政治の混乱という元安材料が混在していることから、想定レンジは1米ドル=6.5~7.1元と広めに設定しておきたい。

一方、2017年の世界を見渡すと、米国のトランプ大統領就任、欧州で相次ぐ選挙など人民元レートに影響しそうなイベントが目白押しである(図表-5)。まず、人民元が戻り高値を試す契機となり得るイベントとしては米国のトランプ大統領就任がある。1月20日にトランプ大統領が誕生した後、2月までには一般教書演説や予算教書の発表がある見込みで、トランプノミクスの具体像が明らかになる。ここもと期待が先行して米ドル全面高になった面があるだけに、その反動にも注意が必要だ。即ち、実質成長率の加速を伴う良い物価上昇(金利上昇)なのか、保護主義的な政策が前面にでて実質成長率が低迷したままでの悪い物価上昇(金利上昇)なのかも確信できぬまま、いずれにせよ金利は上昇するので米ドルは他通貨に対し上昇してきた。従って、トランプノミクスの具体像が明らかになる過程では、期待が剥落して大幅なドル高修正となる可能性があり、その場合は人民元も米ドルに対して急反騰するだろう。
次に、人民元が下値を試す契機となり得るイベントとしては欧州政治がある。極右・ポピュリスト政党が躍進する欧州では、今年各地で選挙が実施される。当面は3月のオランダ総選挙が焦点となりそうで、右派政党がどれだけ支持を得られるかが注目される。結果次第ではユーロに対する信頼感が揺らいで、パリティ(1米ドル=1ユーロ)を割り込む恐れもある。ユーロが米ドルに対して大幅下落すれば、ユーロドルに連動性を強めている人民元も下値を試すことになるだろう。
なお、中国では3月に全国人民代表大会(全人代)が開催される。最大の注目点は2017年の成長率目標である。2016年の成長率目標は「6.5-7.0%」と範囲で示されたが、2017年は「6.5%前後」または「6-7%」への範囲拡大など若干の下方修正があるとの見方が支配的である。但し、この程度の下方修正で納まれば、人民元レートへの影響は限定的だろうと見ている。
(2017年01月05日「経済・金融フラッシュ」)
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