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- 中国経済-静かに進む〝抜本的改革″
2016年07月08日
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■目次
1――2015年の経済概況(GDP)
2――従来の成長モデルの限界
3――新たな成長モデル構築のための構造改革
1|需要面では外需依存から内需主導への構造転換
2|供給面では製造大国から製造強国への構造転換
3|第2次産業から第3次産業への構造転換も
4――構造改革(まとめ)と日本への影響
※本稿は2015年12月18日「Weeklyエコノミストレター」を加筆・修正したものである。
1――2015年の経済概況(GDP)
2――従来の成長モデルの限界
3――新たな成長モデル構築のための構造改革
1|需要面では外需依存から内需主導への構造転換
2|供給面では製造大国から製造強国への構造転換
3|第2次産業から第3次産業への構造転換も
4――構造改革(まとめ)と日本への影響
※本稿は2015年12月18日「Weeklyエコノミストレター」を加筆・修正したものである。
1――2015年の経済概況(GDP)

この「6.9%」という成長率に関しては、もっと低いのでは?との見方もあって議論になっているが、開示された情報が限られる中では推測の域をでないと思われる。確かに言えることは中国経済に構造変化が起きていることで、筆者はそれを“ふたつの二極化”と表現している。
ひとつは第2次産業の伸び鈍化と第3次産業の堅調(伸び横ばい)という二極化である。中国では経済のサービス化が進行中で、3年ほど前から第3次産業の成長率が第2次産業を上回るようになってきているが、2015年にはその傾向がより鮮明になった(図表-2)。第2次産業は人件費の上昇や人民元高の進行で競争力が低下してきており、今後も伸びの鈍化は避けられそうにない。一方、第3次産業にはまだ成長余地が多く残されており、最近でも8%台の高い伸びを維持できている。中国政府の政策スタンスを見ても、第3次産業を第2次産業に代わる新たな経済成長・雇用創出の柱に育てようとしている。
2――従来の成長モデルの限界

従来の成長モデルが限界に達したことはGDP統計を見ても分かる。供給面から見ると、GDP全体に占める第2次産業の比率が諸外国と比べて極めて大きい一方、第3次産業の比率が小さい。第2次産業の中核を成す製造業に焦点を当てると、世界における製造業シェアは23.2%でGDPシェア(12.8%)より10.4ポイントも大きい(図表-5)。米国や欧州ではGDPシェアの方が大きいのと比べると対照的である。製造業シェアの方が大きくても製品を輸出できれば問題はない。日本も製造業シェアの方が1.0ポイント大きく、韓国は1.5ポイント、欧州の中でもドイツは1.6ポイント大きい(図表-6)。しかし、輸出できないようだと、国内では生産設備が過剰となって、設備稼働率が落ちて債務負担が重くのしかかり、雇用不安に陥ることになる。いわゆる過剰設備の問題である。従って、10ポイント超になった過大なギャップを、均衡点に向けていかにソフトランディングさせるのかが、中国の産業政策においては最大の課題となっている。
一方、需要面から見ると、GDP全体に占める投資(総固定資本形成)の比率が諸外国と比べて突出して大きく、2014年は44.0%となった(図表-7)。主要先進国(G7)の約2倍に達しており、経済発展が遅れたインドやインドネシアと比べても10ポイント以上高い。経済発展の初期段階では、先行的に投資を増やす場合が多いため、アジア諸国の中には過去に投資比率の高まりを経験した国が多い。1990年代のタイでは投資比率が4割前後で7年間、マレーシアでも5年間続いたことがあり、韓国でも1990年代に4割には達しなかったものの35%前後が8年間続いた。日本でも高度成長期にあった1970年前後には35%前後が6年間続いていた(図表-8)。
しかし、その後の日本では、高度成長が終わるとともに投資比率も3割前後へ低下、1974年には石油危機も加わってマイナス成長に落ち込み、安定成長に移行した。韓国、タイ、マレーシアでも、アジア通貨危機でマイナス成長に落ち込んだ後、韓国の投資比率は3割前後へ低下、タイ・マレーシアでは2割台へ低下しており、前例をみれば中国の4割超も長続きしそうにない。また、石油危機やアジア通貨危機といった特殊事情があったとはいえ、4ヵ国全てで一時的ながらもマイナス成長に落ち込んだ。これがいわゆる過剰投資の問題である。

かつて日本では両者のギャップが拡大して1991-93年に約4ポイントでピークを付けた。その後このギャップは解消していくが、GDPシェアと製造業シェアがともに低下する結果となった(図表-9)。中国経済の発展段階はまだ低く、ここもと第3次産業が8%前後の高い伸びを維持していることから、悲観し過ぎてもいけないが、経済成長率を押し下げる大きな負のインパクトをもたらすことは間違いない。
(2016年07月08日「ニッセイ基礎研所報」)
三尾 幸吉郎
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