2017年01月17日

ポスト2020の課題と対応策~魅力ある世界都市へのプロセスと課題 4/4

【ポスト2020、魅力ある世界都市へ 訪日客数4000万人時代への挑戦】

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7.ポスト2020の課題と対応策

■加藤
ありがとうございました。インバウンドにもいろいろな形があるというのが、皆さまのコメントから伺えたかと思います。
  
それでは最後のトピックなのですが、ポスト2020の課題とその対応策ということで、少し時間が押していますので、短めのコメントでお願いできればと思うのですが、まずコールさん、既にいろいろご発言いただいているのですが、日本の社会構造が変化する中で一番大きい課題というのは何だとお考えで、それは克服できるのでしょうか。
 
■コール
これは大変失礼な発言になるかもしれないですが、二つあります。
 
僕は日本が大好きで、いつも思いやっているのですが、やはり赤ちょうちんで聞いても、最悪なことは何かというと、まず決断能力です。決めることに非常に時間がかかります。これは何でもそうだと思います。
 
そしてもう一つは、日本ではやはり縦社会という議論がよくあるのですが、若い人たちがアートのコミュニティーをつくる場合に、これは霞が関などの役所、文科省命令でつくるわけではないでしょう。
 
やはり20~30歳の若いアーティストに、どうぞ遊んでつくってくださいという自由さが日本にはないと思います。
 
■加藤
古い社会ということでしょうかね。これは克服すべきポイントかと思います。
 
それでは吉本さん、成熟した世界都市を目指す上で、オリンピックをきっかけとした文化プログラムの動き等ありましたら教えてください。
 
■吉本
先ほども少し申し上げましたけれど、いろいろな関係者のご努力で文化プログラムの準備は徐々に始まっています。
 
そして私が今、一番期待しているのは、まだ準備中なので詳細は公表できないのですが、東京都が若いアーティストやクリエーターから斬新なアイデアを公募しようと準備を進めているということです。
 
ロンドンの例でもおわかりのように、やはり少し破天荒なアイデアが必要ですが失敗するかもしれない、でも成功したらすごく話題になる。
 
そういうことに懸けるというか、リスクを取るということだと思うのですが、そういうことができるかどうかというのが東京という都市が世界の芸術やクリエイティブな活動の中心になれるかどうかの境目ではないかと思うのです。
 
そして、失敗するかもしれないことに、公共のお金を使うことができるかどうか、それはものすごく高いハードルです。
 
でも、オリンピックだから、一生に一度きり、ロンドンはそう言いましたけれども、オリンピックだからやってみようという実験に懸けるようなチャレンジ精神で素晴らしい文化プログラムを実現できれば、東京の魅力は格段に増します。
 
それが実現できれば、そういうニュースには世界中のクリエーターは非常に敏感ですから、東京に行くとすごく面白いことができるかもしれない思うわけです。
 
霞が関の政策ではなくて、そういうことに世界中のアーティストやクリエーターは反応して、自然に集まってきます。ですから、そういう文化プログラムというのを、ぜひ東京で実現してほしいと思います。
 
■加藤
ありがとうございます。それでは牧野さん、全国でコンサルティングされていると思うのですが、その中で課題と感じていることがありますでしょうか。
 
■牧野
これは東京の課題でもあり、全国の課題でもあるのですが、私がこれから2020年以降の日本で一番必要だと思うのは、チャレンジすることです。
 
チャレンジというのは、先ほども皆さま方から出ていますけれども、日本人というのはどうしても良い意味で遠慮深く、非常にポライトな国民でありますが、裏返して言いますと、チャレンジをだんだんしなくなってきている国民だというのを、東京のみならず地方に行っても非常に感じます。
 
つまり、何となく自分たちだけ良くなれば気持ちいい。この発想に立つ限りは、これからの日本はあまりうまく回らないのではないかと僕は思います。例えば、「東京人」と言ったときに皆さんは何を思うでしょうか。東京の人は何か特徴があるでしょうか。
 
例えば世界から見て日本の人、東京の人はこういう特徴を持っていて楽しくて面白いと思うような国あるいは都市をつくれるようになるといいと思います。
 
別に人口が減ろうが、高齢化になろうが、こうした東京人というものをこれから2020年以降でつくれなければ、オリンピックが単なる宴で終わってしまうのではないか。
 
そうではなくて、社会インフラを作ることも大事ですけれども、私たちのハートをわれわれがビビッドに生きることによって、これを見ている世界中の人たちが東京は何か面白いではないかと思うようになり、東京に来て東京人と一緒に居酒屋に行ったり、文化・芸術を楽しんだりする世界になってくれればいいと思っております。
 
■加藤
レガシーは人に宿るということでしょうか。それでは最後に青山先生、多世代の方々が東京に住んで、または来訪して魅力を感じるための課題を聞かせください。
 
■青山
ちょうど2020年のオリンピック・パラリンピックは、2012年に行われたロンドンと同様に、成熟した国家におけるオリンピックということになります。
 
成熟社会(mature society)とは何かと言うと、一般的にはすぐ少子高齢化とか、経済の低成長ですとか、人口の減少と言うのですが、同時に物理学者のデニス・ガボールは「Mature societyとは、経済が低成長になっても人々が生活の質の向上を諦めない社会である」と面白いことを言いました。
 
確かに成熟社会にはそういう側面があるのだと思います。
 
ですから私たちは、この機会にスポーツや文化、観光を私たち自身が遠慮しないで楽しんでいくことで、観光という今日のテーマで言うと、世界の人が「どれどれ」と言って、「日本人は楽しそうに生活している」と言って見に来ます。そういうふうに私たちは遠慮しないで生活を楽しむことが大切だと思います。
 
■加藤
ありがとうございました。楽しんでいこう、というのも課題ということですね。
 
それでは、そろそろ終わりが近づいてまいりました。
 
オリンピック開催までにはまださまざまなハードルがあって、苦難の道があるというのが日々の報道からもうかがい知れるわけですけれども、本日の皆さんのコメントから、これが一過性のイベントではないことを実感いたしましたし、外国からいらっしゃる方も、働く方も、住んでいる方も、継続して生き生きできる魅力的な世界都市になるヒントを頂けたように思います。
 
それでは、これでパネルを終了したいと思います。皆さま、どうもありがとうございました(拍手)。
 
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(2017年01月17日「その他レポート」)

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