2016年12月22日

一億総活躍社会の「働き方」-「生産性向上」、「長寿化社会」、「共働き社会」の実現に向けて

  土堤内 昭雄

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1―労働生産性向上への対応

1|労働力人口の減少と生産性の向上

国立社会保障・人口問題研究所の『日本の将来推計人口(平成24年1月中位推計)』をみてみよう。2060年の日本の総人口は、2010年と比較して4,132万人減少して8,674万人(67.7%)になる。15歳から64歳の生産年齢人口は、2010年から3,756万人減少して4,418万人(54.0%)だ。2060年に日本が迎える人口減少は、減少する人口の90.9%を生産年齢人口が占めるのだ。その結果、従属人口(15歳未満の年少人口と65歳以上の老年人口の合計)を生産年齢人口で割った従属人口指数は、57から96に上昇し、社会的扶養が大幅に拡大する。
図表1 日本の将来推計人口/図表2 日本の労働生産性の推移 即ち、日本の人口減少は人口構造が相似形で人口が減るのではなく、社会を支える側の人と支えられる側の人の数がほぼ等しくなるというドラスティックな人口構造の変化なのである。日本社会が持続可能であるためには、出生率の上昇により労働力人口になる生産年齢人口の増加が望まれるが、人口構造上からは極めて困難だと言わざるを得ない。

経済成長は就業人口と労働生産性に規定される。労働力人口の減少が不可避であるなら、経済成長を維持するには労働生産性の向上が不可欠だ。『労働生産性の国際比較 2016年版』(日本生産性本部)によると、2015年の日本の労働生産性は「一人当たり74,315ドル(783万円/購買力平価換算)」、「時間当たり42.1ドル(4,439円)」だ。OECD加盟35カ国中22位と20位で、いずれも米国の約6割の水準にとどまっている。日本の名目労働生産性を対米国指数でみると、「一人当たり生産性」、「時間当たり生産性」共に2001年度から6ポイントほど差が拡大している。日本の労働生産性が米国並みに改善されれば、就業人口減少の影響を大幅に緩和することができる。
2|生産性の向上に向けた「働き方」

労働生産性の向上のためには、抜本的な「働き方改革」が必要だ。2016年8月の厚生労働省の懇談会の報告書『「働き方の未来2035」~一人ひとりが輝くために~』には、2035年に向けた「働き方改革」を示す興味深い提言がされている。特に、AI(人工知能)を中心とした技術革新は、労働力人口減少の緩和や生産性の向上に寄与すると同時に、働く時間や場所をはじめとしたさまざまな制約を解消し、すべての人が自由で自律的な働き方ができるようになるチャンスだとしている。

近年、長時間労働により貴重な命が奪われるという痛ましい事件が続いている。わが国は労働時間を延長して「一人当たり」の労働生産性を高めるのではなく、「時間当たり」の労働生産性を向上させる「働き方改革」を実現することで、人口減少時代を乗り越えなくてはならない。
 

2―長寿化社会への対応

2―長寿化社会への対応

1|伸びる寿命と長寿化の課題
図表3 平均寿命と健康寿命の推移/図表4 認知症患者数の将来推計 内閣府の『平成28年版高齢社会白書』によると、2013年の日本人の平均寿命は、男性80.21歳、女性86.61歳だが、健康寿命は男性71.19歳、女性74.21歳だ。両者の差は介護等が必要な期間であり、男性は9.02年、女性は12.4年だ。団塊世代が後期高齢者になる2025年には要介護者の急増が見込まれ、大介護時代が訪れる。

今後も日本人の平均寿命は延伸するとみられ、2060年には男性84.19歳、女性90.93歳に達する長寿化時代になる。一方、2012年に462万人だった認知症患者は、2060年には850万人~1154万人に上ると推計されており、65歳以上高齢者の3~4人にひとりが認知症になる。

また、2013年の65歳以上高齢者の有訴者率(人口千人当たりの「ここ数日、病気やけが等で自覚症状のある者(入院者を除く)」の数)は466で、半数近い人が病気やけが等で何らかの自覚症状を訴えている。超高齢化を迎える日本社会は、「長寿化」を手放しで喜べる状況ではないことがわかる。

同白書によると、公的年金・恩給が総所得のすべてである高齢者世帯は56.7%に上り、貯蓄の主な目的は「病気や介護への備え」が62.3%を占める。また、就労を希望する高齢者の割合は約7割あり、高齢期の健康や家計に対する不安の大きさが窺われる。
2|長寿化社会に向けた「働き方」

長寿化時代の働き方はどうなるのだろうか。これまでのように就学期間が終わって新卒採用され、定年を迎えるまで終身雇用が保障される「働き方」は少なくなるだろう。長寿化により就業期間が50年以上にも及ぶ一方、同じ産業や企業がそれほど長期にわたり存続するとは限らない。また、以前のOA化やICT化が示すように、われわれが持つ職業スキルも生涯にわたり通用するわけではない。職業能力を高めるためには、キャリアをいったん中断することも必要になる。今後、ロボットやAIの普及に伴い、常に職業スキル向上のための自己投資が必要になるだろう。

長寿化社会では誰もが加齢による体力・知力の衰えを経験する。心身ともに加齢状態に則した適切な働き方が必要だ。また、親や配偶者の介護および病気の治療などによるさまざまな制約が生じるため、時間や場所に縛られない柔軟な働き方が求められる。長生きリスクを乗り越えて幸せに生きるには、新たな自己投資による多くの有形・無形の「資産」づくりが必要だ。今、高齢先進国である日本にとって、本当に「長寿化」を喜べる社会を実現できるかどうかが問われている。
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土堤内 昭雄

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