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パンデミックリスクの計量-予測モデルの精度を高めるには、どうしたらよいか?

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
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4――保険のストレステストとして用いる際の2つの予測方法
ストレスの想定は、合理的でなければならない。現実感の乏しいストレス想定を用いると、リスク管理が不適切なものとなりかねない。その合理性を確保するため、過去の実績が用いられることが多い。過去の情報を用いることで、同じ事象が発生した場合の影響を知ることができるという利点がある。しかし、パンデミックは、過去に発生したものと同じ性質を持つとは限らない。従って、未曾有のパンデミックに対しては、ストレステストが機能しない場合があるという短所を抱えることとなる。
2|確率論的方法では、ストレステストシナリオの設定が可能
確率論的方法の最大の長所は、異なる結果に対して、それぞれの発生確率を予測できる点だ。これにより、様々な損失額の発生確率を把握し、適切な準備金積立を行うことが可能となる。確率論的モデルは、過去に発生したものに限らず、幅広い事象の分析を可能とする。それゆえ、保険会社が直面する様々なリスクの理解を可能とする。また、この方法では、現在進行中の事象に対しても、今後の推移を予測したり、評価したりすることができる。即ち、シミュレーションにより、現在に類似した事象を想定し、今後の損失額の幅を予測することができる。
確率論的モデルの短所は、計算に膨大な時間を要することや、高機能なコンピューター等の資源が必要となることだ。特に、パンデミックモデルは、疫学、統計学の要素を取り入れた、シミュレーションプログラミング、データベース管理等、高度な専門技能を必要とする。
5――おわりに (私見)
パンデミックについては、まずは、これらのモデルを拡張することから始めるべきと考えられる。これは、決定論的方法であっても、確率論的方法であっても構わないが、使用する方法について、長所、短所を、十分に踏まえておくことが重要となろう。
今後、パンデミックリスクの計量を通じて、ERMの高度化が図られるものと考えられる。引き続き、その動向に、留意が必要と思われる。
(2016年12月13日「保険・年金フォーカス」)
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保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
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