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パンデミックリスクの計量-予測モデルの精度を高めるには、どうしたらよいか?

保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
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1――はじめに
これ以前にも、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)、2009年の新型インフルエンザA(H1N1)など、しばしば、感染症の蔓延に見舞われている。近年、パンデミックの発生リスクは高まっていると言える。各国で、パンデミックの予兆を早期に捉え、感染拡大を防ぐための体制整備が図られている。
パンデミックは、保険会社にも、死亡保障保険の保険金等の支払が増加するという影響をもたらす可能性がある。このため、保険会社は、ERM1の要素として、パンデミックリスクを取り込むべく、調査・研究に努めている。特に、欧米では、その取り組みが、精力的に進められている。本稿では、アメリカの事例を参考に、パンデミックリスクを計量する際の課題等について、述べることとしたい。2
1 Enterprise Risk Managementの略。全社的リスク管理を指す。
2 本稿は、“Quantifying Pandemic Risk”(Society of Actuaries (SOA), The Actuary Feb./Mar. 2015)を参考にしている。
2――パンデミックと、その対策の概要
1|パンデミックでは、感染者や死亡者の数が膨れ上がる
厚生労働省のホームページ上の用語解説3によると、パンデミックとは、「感染症の世界的大流行。特にインフルエンザのパンデミックは、近年これがヒトの世界に存在しなかったためにほとんどのヒトが免疫を持たず、ヒトからヒトへ効率よく感染する能力を得て、世界中で大きな流行を起こすことを指す。」とされている。最近100年間を見ると、前世紀にはインフルエンザによるパンデミックが3つ、HIV/AIDSによるものが1つあった。特に、1918年のスペインインフルエンザでは、全世界で感染者が5億人、死亡者が4,000万人に上った。2009年には、新型インフルエンザA(H1N1)が発生した。
3 インフルエンザ関係の用語解説。アドレスは、http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/pdf/03-03-01.pdf
3――パンデミックリスクの2つの予測方法
1|決定論的方法では、シナリオに追加の想定を組み込むことが必要
一般に、パンデミックのような死亡率や罹患率を悪化させる要素が、保険に与える影響を把握するために、ストレステストの手法が用いられる。アメリカでは、保健福祉省(HHS4)公表のシナリオが用いられている。そこでは、アジアインフルエンザや香港インフルエンザ相当の「穏健(moderate)シナリオ」と、スペインインフルエンザ相当の「猛威(severe)シナリオ」に対して被害想定を行っている。
4 Health and Human Servicesの略。
(2016年12月13日「保険・年金フォーカス」)
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保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
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