2016年11月29日

まちづくりレポート|住宅団地活性化なるか!-広島市戸建住宅団地活性化の取り組み

社会研究部 都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任 塩澤 誠一郎

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4――支援施策の内容と利用実績

1|支援施策の目玉である、“まるごと元気”住宅団地活性化補助事業
70ある支援施策には、住宅団地活性化を牽引する「先導施策」が7つ示されている。そのうち、「“まるごと元気”住宅団地活性化補助」は、7つのメニューから選択・実施する取り組みに対し補助する制度である。(図表12)

メニューの内、「住宅団地活性化プランの作成」と「空き家等を活用した住民間の交流拠点づくり」は、50万円を限度にそれに掛かる経費の全額を補助する。その他のメニューについては、5年間継続して補助する仕組みになっている。これは、地域コミュニティを育むためにある程度継続的に取り組むことが求められることへの配慮で、初年度10万円を限度に全額補助し、翌年度以降、補助率は毎年度5分の1ずつ、限度額は毎年度2万円ずつ引き下げていく。
図表12 先導施策の概要

2|“まるごと元気”住宅団地活性化補助事業利用実績
市は、2015年8~9月に補助金申請の募集を行い、その後10~11月にも2度目の募集を行った。その結果14件の申請を受け付けて、補助額合計は210万4,000円に上った。翌年2月及び6~7月に実施した募集では、継続申請も含めて計26件の申請を受け付け、249万9千円の補助額であった。(図表13)
図表13 “まるごと元気”住宅団地活性化補助金交付事業申請件数
169の団地に対し初年度の申請が14件というのはいかにも少なく感じるが、初年度でかつ年度途中からの募集であったことから、町内会・自治会の方も応募しにくい事情があったようである。また、書き慣れない申請書類を用意するのも敬遠する要因であった。さらには説明会に参加した町内会長が前向きになっても、募集期間中に住民の理解を得て一緒に行動する担い手を確保するのに苦労するといった声も聴かれた。

そこで、市は2月の募集では、町内会・自治会の意向を聞いた上で、担当者が申請書類の作成をサポートするようにした。また町内会・自治会で申請を検討する場に担当者が赴き、担当者から補助制度の内容を説明するようにした。その結果、町内会・自治会の役員等の交代前である2月という時期にもかかわらず、新規の申請が9件に及んだ。これには政策企画課コミュニティ再生担当主査の三原(みはら)正弘(まさひろ)さんも手応えを感じたという。

「今後、先行した団地がモデルケースとなるような具体的な成果を出せば、それを参考に我が団地も取り組もうと、新たな申請が増えていくことが期待できる。そうなれば、団地同士で学び合うことも増えていくと思う」と期待を語ってくれた。

次に紹介する事例はまさにそのような先行事例である。
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社会研究部   都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任

塩澤 誠一郎 (しおざわ せいいちろう)

研究・専門分野
都市・地域計画、土地・住宅政策、文化施設開発

経歴
  • 【職歴】
     1994年 (株)住宅・都市問題研究所入社
     2004年 ニッセイ基礎研究所
     2020年より現職
     ・技術士(建設部門、都市及び地方計画)

    【加入団体等】
     ・我孫子市都市計画審議会委員
     ・日本建築学会
     ・日本都市計画学会

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