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まちづくりレポート|住宅団地活性化なるか!-広島市戸建住宅団地活性化の取り組み

社会研究部 都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任 塩澤 誠一郎
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3――住宅団地活性化の目指す方向と支援施策
広島市は住宅団地を積極的に評価している。住宅団地の多くは法令に基づき一定の基準をクリアした上で整備されたものだ4。それゆえもともと良好な居住環境を有している。区画が整い、一定の道路幅員が確保され、公園・広場が計画的に配置されている。日照や通風に考慮した敷地割で、建物高さや容積率、建坪率が抑えられている5ことから、外構面積が十分確保された緑豊かな低層の街並みが続く。中には独自のルール6を設けて、街並みの維持を図っている団地もある。
市が、2013年8月に実施した団地住民の意識調査では、約56%が生活環境全般に満足しており、60%近くが街並み・景観の美しさに満足しているという結果が示された。また、約61%が団地に住み続けたいとしており、その理由として約55%が、緑や空気など自然環境がよいことを挙げている。(図表9~11)
こうした状況から市は、居住機能として住宅団地の果たすべき役割はきわめて重要だと結論づけた。その上で、冒頭で触れた住宅団地活性化の目指す方向を示した。
4 多くの場合都市計画法の開発許可制度に基づき整備されている。
5 住宅団地の住宅地部分のほとんどは第一種低層住居専用地域に指定されている。
6 19の団地で地区計画を設け、8つの団地で建築協定を定めている。
「住宅団地の活性化に向けて」では、今後30年間を見据えた検討課題と14項目に及ぶ課題解決のための方針が示され、さらに、14項目毎に市の支援施策が盛り込まれている。その数は70に及ぶ(再掲を含む)。その支援内容も、空き家・空き地活用、団地内への住み替え、近居誘導、乗合タクシーの導入、協同労働7、ネットスーパー利用と多岐にわたる。
このようにたくさんの支援施策を揃えたのは、住宅団地の課題は一つの事業を実施すれば全て解決するようなものではなく、必要な取り組みを総合的に実施することが重要になるとの考えからだ。団地住民が地域の状況に応じて、より効果的な施策を選択し、組み合わせて実施することを前提としている。
7 「協同労働」とは、自ら出資して経営に参画し、生きがいを感じながら地域課題の解決に取り組む労働形態。
住宅団地の活性化というと、住宅政策を担う都市整備部局か、地域コミュニティを扱う市民部局が所管だと想起するが、この事業を所管するのは企画総務局企画調整部政策企画課コミュニティ再生担当である。総合対策としての施策展開を図ることから、庁内連携を円滑に運ぶことができる体制をとっている。
また、8つある区のうち住宅団地のある7区に、それぞれ住宅団地活性化担当職員を配置して、住民と直接接する窓口の役割を担わせている。所管する政策企画課には、2名の職員が配属されており、区の担当職員と連携して団地住民と一緒に事業に取り組むようにしている。
支援施策を開始した2015年度当初は、政策企画課の担当者と区の担当者が一緒になって、各区内の会場で住宅団地町内会、自治会向けの説明会を開催し、支援施策を活用した住宅団地活性化に取り組むようピーアールを行った。
4|支援対象
支援対象は、原則住宅団地の町内会・自治会及びそれらが母体となって設立されている地区社会福祉協議会である。広島市には市内全ての住宅団地に町内会・自治会があり、市は町内会・自治会を地域の運営主体として捉えている。
生活の基盤である団地全体が一斉に高齢化するという課題に対し、住民自らが問題意識を持って対策に取り組む必要があることから、支援対象を町内会・自治会として、ここを通じて団地住民に問題意識を共有してもらおうとしているのだ。
(2016年11月29日「基礎研レポート」)

03-3512-1814
- 【職歴】
1994年 (株)住宅・都市問題研究所入社
2004年 ニッセイ基礎研究所
2020年より現職
・技術士(建設部門、都市及び地方計画)
【加入団体等】
・我孫子市都市計画審議会委員
・日本建築学会
・日本都市計画学会
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