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奥深い大阪の「値切り」文化-ふるさと納税に関する現況調査結果より

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター・ジェロントロジー推進室・サステナビリティ投資推進室兼任 高岡 和佳子
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損得勘定説と似て非なる説が、安く買うことを恥ずかしいと思わないからだという説である(以下、本音重視説)。前述の本では、値段への執着の強さに加え、何事にも建前の他に本音があることを知っていることが、よく値切る理由だと説く。これも、損得勘定説と同様、信憑性が高い。
この他に、大阪の人はコミュニケーション能力が高い、値切る際の会話自体を楽しんでいるのだという説(会話重視説)や、サントリーの精神「やってみなはれ」に代表されるチャレンジ精神を原因とする説(挑戦精神説)もある。
ご存じの通り、近年における価格比較サイトの成功は目覚しく、良質の品を少しでも安く買うことに喜びを感じるのは、大阪の人に限った話ではなさそうだ。つまり、大阪の「値切り」文化の本質を損得勘定説だけで説明するには無理がある。ならば、損得勘定とは無関係の会話重視説が本質か。それとも、損得勘定が実際の「値切り」行動に結びつくか否かを左右する本音重視説や挑戦精神説が本質か。
先日、大阪の「値切り」文化の本質を考える上で役に立つ情報を見つけた。その情報は2016年8月に公表された、各自治体別のふるさと納税に係る控除額等のデータの中にある。返礼品で話題のふるさと納税制度は、実質的には節税の役割を果たす。また、高額納税者ほどメリットが大きい1ため、市区町村別にふるさと納税の利用率は、一人当たり課税対象所得に比例する傾向が強い2。そして、一人当たり課税対象所得が同程度の市区町村で比較すると県民性がはっきりと表れるのだ。ご想像の通り、大阪は他の都道府県と比較して、ふるさと納税の利用率が高い傾向がある(図表1)。
関西出身の筆者にとっても、大阪の「値切り」文化は奥深く、その本質は謎である。大阪の「値切り」文化の本質探求は大阪学の研究者に委ねるが、大阪におけるふるさと納税利用率の高さが、大阪の「値切り」文化の本質探求の一助になると信じている。
1 研究員の眼「ふるさと納税のメリットを受けるのは誰?」(2014年4月8日)参照
2 基礎研レター「利用しているのは誰?」(2016年11月2日)参照
(2016年11月02日「研究員の眼」)
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03-3512-1851
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
高岡 和佳子のレポート
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